都内での物産展開催で被災地に雇用を
東日本大震災被災地の最大の課題は、農業や水産業の壊滅的被害に地元経済の崩壊です。そこで都は、農業団体などと連携し、被災地に収益をもたらし、雇用の創出にもつながる都内での物産展の開催を進めます。
東京での販路拡大へ営業拠点の貸出しを拡充
被災地企業が商品を東京で販売する際に、営業の拠点の確保が重要です。このため都は、現在11の被災地企業に事務用の場所を貸し出している事業を拡充し、来年度は最大で18企業の受け入れを可能にします。
空き店舗活用したアンテナショップに助成
被災地の商品を販売する中小企業やNPO法人が、都内各地に点在する商店街の空き店舗を活用してアンテナショップを出せるように、都は、内装や借り上げなどに必要な経費を助成する取り組みを進めます。
現地ニーズ踏まえ専門職員を中長期派遣
今後の復旧・復興では、まちづくりの専門技術や行政経験を持つ職員の需要が高まっています。そこで都は来年度、現地事務所を通じて被災地の状況を把握し、ニーズに即した専門職員を中長期的に派遣します。
都が先頭に立ちがれき広域処理の促進を
本来、国が音頭をとるべき災害廃棄物(がれき)の広域処理が滞っています。都議会公明党は、都がこれまで岩手県宮古市、宮城県女川町のがれきを受け入れた経緯を踏まえ、「発信力の強い石原知事と都がひと肌もふた肌も脱ぐべき」と主張。これに対し石原知事は「総理大臣がはっきりと各道府県に協力するよう号令をかけるべき」と国の対応を批判。その上で、「都はがれきの受け入れを先頭に立って進めるとともに、これまで培ったノウハウを提供し、広域処理の促進に力を尽くす」と表明しました。
【木造住宅密集地域対策】
地元区の執行体制の強化
首都直下地震の際に火災などの危険性が高い「木造住宅密集地域」への対策として、都は「不燃化10年プロジェクト」を実施します。そこで都は、まちづくりを担う区市町村に対し、事業執行体制の確保について支援します。
新たな消防用水源を整備せよ
狭い道路が多数存在する木造住宅密集地域では、消防水利の整備や地域住民による初期消火体制の強化が重要です。そこで、都議会公明党が消火用水源として、排水栓の活用などを提案したのに対し、都は「多様な消火用水を活用した地域住民の実践的な初期消火訓練をより一層推進する」と答えました。
【景気対策】
海外企業の誘致で日本経済再生に貢献
日本経済再生の鍵として、海外企業を東京に誘致し、アジアや海外の成長活力を取り込むことが求められています。都は今後、ビジネス環境の整備に努めるとともに、外国人家族の生活相談や各種手続きの代行などをワンストップで行う「生活コンシェルジュ」を民間との連携の下に設置します。
【がん対策】
駒込病院で最先端の放射線治療機器が稼働
都議会公明党がこれまで主張してきた、都立駒込病院への最先端の放射線治療機器3台の導入がいよいよ実現しました。代表質問で都議会公明党が機能などをただしたのに対し、都は、1.頭部や頸部のがんにピンポイント照射するサイバーナイフ、2.がんの形状に合わせた照射技術とCTの技術を組み合わせた高精度な照射を行う機器、3.呼吸に応じて揺れ動くがん細胞を追尾して照射する動体追尾機能を装備した機器――の3種類の内容を明らかにしました。これらの機器が全てそろっているのは全国で駒込病院のみで、年度内に全てが稼働を開始します。また、治療には保険が適用されます。都は今後、治療実績などを踏まえ、多摩総合医療センターなど他の都立病院への導入についても研究・検討していきます。
緩和ケアの推進へ医療用麻薬の知識提供
モルヒネなどの医療用麻薬を使い、不必要な痛みを取り除く緩和ケアによって治癒率も生存率も高くなり、中毒になった例もないと報告されています。このため、都は都民に対し、講演会やパンフレットを通じて医療用麻薬の正しい知識を提供します。
【住宅対策】
「あんしん居住制度」の利用促進へ制度改善
高齢者が住み慣れた地域や住宅で暮らせるようサポートする「あんしん居住制度」の利用を促進するため、都は事業主体と協議し、準備金50万円を一括して支払う従来の制度に加え、月払い制度の早期導入をめざします。
※「あんしん居住制度」・・・住み慣れた地域での高齢者の生活を支えるため、財団法人「東京都防災・建築まちづくりセンター」が事業主体となり、持ち家、賃貸を問わず、見守りサービスを実施するほか、亡くなった後の葬儀や残存道具の片付けも行う制度。
【教育について】
留学の成果を周知する取り組みを推進
都は今後、積極的に留学支援を行うこととしています。その上で、多くの都立学校生徒が留学に挑戦できるように、留学体験を発表するフォーラム開催や冊子の作製、ウェブページ開設などを行い、留学の成果を広く還元します。
【障がい者施策】
盲ろう者支援で区市町村との連携強化
視覚と聴覚の両方が不自由な「盲ろう者」のための「東京都盲ろう者支援センター」に、一人でも多くの人をつなげるため、都は、身近な窓口となる区市町村にセンターとの連携を働き掛けるほか、4月には盲ろう者で東大教授の福島智氏による講演会を開催します。
【自転車政策】
条例制定を含めた新たな検討の場を設置へ
都は今後、自転車条例の制定を含めた、さまざまな自転車対策の在り方について、利用者や自転車関連業、バス、タクシー、トラックといった運輸業界など、幅広い関係者による検討と合意形成の場を新たに設けます。
【福祉・保健政策】
外国人看護師と介護福祉士候補への研修支援を
これまで看護師や介護福祉士候補者が千三百人来日しているが合格率が数%と低い点を指摘。首都大学が支援するNPOの国家試験対策学習会参加した場合の合格率が高いことから、これらの実績を活用し、支援を拡大していく予定です。
【震災がれき】
処理工程など収めたDVDを配布
がれき処理に対する住民理解を深めるため、都は被災地の状況から都内での処理工程、放射線測定の様子などを収めたDVDを配布します。
【引きこもり支援】
精神障がい者への訪問活動など支援
都は、引きこもり状態の精神障がい者に対する訪問活動への支援を行うほか、民間と連携した短期宿泊のモデル事業を実施します。
【学校の耐震化】
ガラスなど「非構造部材」の対策実施へ
学校における、ガラスや天井部材などの「非構造部材」耐震化に向け、都は来年度、全都立学校で体育館を優先して総点検を実施します。
【防災対策】
女性の視点を地域防災計画に反映
都は地域防災計画の修正に当たり、検討部会に女性委員を選任するほか、都女性職員などによるワーキンググループも設けます。
〜予算特別委員会より〜
防災、中小企業支援などで論戦リード
東京都議会予算特別委員会で都議会公明党は、喫緊の課題について積極的に提案を行うなど、活発な論戦を展開しました。その主な内容を紹介します。
【被災地支援】
教育旅行見据え、教員を被災地に派遣
――都内の教員を福島県などに派遣し、被災地での防災教育の効果や教育旅行の可能性を探ってはどうか。
教育長:2012年度に指定する「防災教育推進校」の担当教員や区市町村教育委員会の指導主事などを福島県に派遣し、被災地の状況を肌で感じさせるとともに、現地教育委の担当者や教員などとも意見交換も行わせる。
子どもたちのスポーツ交流の内容拡充を
――被災地の子どもたちを東京に招待し、スポーツを通じて都内の子どもたちと交流する事業について、実施回数や内容の拡充を。
スポーツ振興局長:受け入れチームを広く募り、回数や競技種目を増やすなど、11年度を上回る子どもたちを招待する。
【防災対策】
障がい者の「ヘルプカード」普及促進を
――障がい者が災害時に必要とする支援内容などを記載した「ヘルプカード」の普及促進事業について、今後策定する「都帰宅困難者対策条例の実施計画」に具体的に反映させるべき。
総務局長:計画の策定に当たっては、同カードの普及促進も含め、災害時要援護者に配慮した対策を検討する。
木造住宅密集地域での液状化対策進めよ
――都と区が連携して進める「不燃化10年プロジェクト」において、指定された整備地域28カ所のうち、15カ所で液状化の発生が予測されている。不燃化特区の面的整備事業に合わせて液状化対策も推進するべき。
都市整備局長:区から具体的な提案があれば、支援策などについて区と協議していく。
ピロティだけの耐震改修も補助の対象に
――阪神・淡路大震災では、旧耐震基準により建設されたマンションのうち、ピロティがある建物は、ないものより3倍の被害があった。これを踏まえ、まずピロティ部分だけを耐震改修する場合については、補助の対象とするべきだ。
都市整備局長:ピロティ部分の耐震化によって耐震性が確保される場合や、耐震効果の高い箇所からの段階的改修についても補助の対象とする。
【住宅政策】
災害時でも生活継続できる住宅の普及を
――震災に有効なLCP住宅の普及に向けた取り組みについて都の見解は。
※LCP住宅:停電時でも水の供給やエレベーターの運転に必要な最小限の電源を確保することで、生活の継続を可能とする住宅
都市整備局長:公社住宅などでモデルを示し、既存マンションへの普及を図る。また、新規マンションについても、都有地において民間事業者を活用し、開発モデルを示していく。さらに、このような性能を備えた住宅の登録・閲覧制度を導入し、ホームページ上で公表する。
都営住宅の安否確認態勢を強化へ
――孤立死の防止に向けて都は、都営住宅における居住者の安否確認にどう取り組むのか。
都市整備局長:今後、緊急性がある場合、原則として迅速な入室により安否確認に対応する方針で取り組む。住宅供給公社に対しても指示を行い、迅速な安否確認の実施と緊急時の対応マニュアルの見直しを図っていく。住宅の鍵については、緊急時の入室をより容易に行えるよう改善に取り組む。
【雇用対策】
外部人材の活用で高校生の就職支援
――普通科高校生の就職状況が厳しい傾向にある。職業意識を高めるために、各分野で活躍する外部人材を活用してはどうか。
教育長:外部人材の声や姿を生徒に触れさせることで、働くことの意義や喜びを理解してもらい、確かな職業観と技能を持った職業人を育成していく。
若者向け「企業ツアー」の内容充実を
――若者に求人企業や仕事内容の具体的なイメージを持ってもらい、就職につなげるための「企業ツアー」が好評だ。毎回の課題・問題点を改善し、継続的に実施するべき。
産労局長:ツアーは12年度も含め、合計10回程度開催する予定となっている。参加者や訪問先企業の声などを踏まえ、それぞれの回ごとに効果や課題を検証しながら必要な改善措置を講じていく。
【中小企業対策】
自家発電導入の助成率が継続へ
――自家発電設備を導入する都内中小企業に助成を行う事業について、2月に東北電力、東京電力管轄内の事業所も補助対象となったが、単独企業で3分の2、グループで4分の3の助成率が3月末までとなっており、4月以降は助成率が下がってしまう。この数値を今年9月末まで延長するべきだ。
産労局長:前向きに検討する(3月22日付で延長が決定)。
知的財産の保護、相談体制の拡充を
――中小製造業がアジアなどに販路拡大する際、模造品が出回る可能性がある。知的財産の保護のために、都知的財産総合センターにおいて、特許権以外の実用新案、意匠や商標などの権利で対抗できる製品については、権利を取得するよう対応するべき。
産労局長:中小企業が海外で商品を販売する際に、意匠や商標の権利の保護は重要となっているため、出願に要する経費の助成限度額を12年度は30万円から60万円に増額する。
――海外の知的財産に対する知識の面でも人数の面でも、同センターの相談体制の拡充を。
産労局長:来年度、海外における知的財産の保護や活用に関する高度な相談内容に対応できるアドバイザーを増員する。
【新銀行東京】
追加出資は取引先の継続支援に「効果あり」
――都議会公明党は08年当時、新銀行東京が赤字で債務超過の会社5635社に貸し付けなどを行っていることを踏まえ、10万人を超える従業員や家族を路頭に迷わせてはいけないと決断し、400億円の追加出資を認めた。このような取引先は守られたのか。
産労局長:当時の取引先の大半は正常に返済が進み、完済までに至っている。また、多くの企業に対して条件変更などに積極的に応じてきた。その累計は08年度以降直近までの間に、5526件、410億円に及んでおり、その中には現在も取引が続いている企業も含まれている。
再建後の業務提携で400億円の保全、回収を
――再建を果たした段階で業務提携先を探し、400億円を保全、回収するステージに進むべきと考えるが。
知事:銀行が主体的に決めることではあるが、健全な相手との提携に関する協力などは、これからさまざまな形で都としても行っていくし、多角的に援助していく。
【教育】
震災の教訓踏まえ防災教育の充実へ
――東日本大震災の教訓を風化させないため、これまでの各学校における防災教育を一層充実させるべき。
教育長:都教育委は新たな補助教材として、国語、社会、道徳などの各授業で活用できる「3・11を忘れない」を作成した。また、都立学校および区市町村教育委に対して、避難訓練の見直しなど11年度に行った取り組みを継続することの大切さを指導していく。
【少子化対策】
ボランティア活用し出会いの場づくりを
――都ならではの結婚支援について、東京湾埋立地で整備中の「海の森」への植樹など、共同作業を継続して行えるボランティア活動を男女の出会いの場づくりとして活用してはどうか。
知事:仕事はたくさんあるので、いくらでも準備する。
【地域医療】
リハビリテーションの充実求める
――地域におけるリハビリテーション提供体制を充実させるための都の取り組みは。
福祉保健局長:都内12カ所の地域リハビリテーション支援センターで症例発表会の開催、研修、関係機関による地域連絡会を実施しているほか、11年度は介護支援専門員を対象とした研修用のテキストについても、脳卒中をテーマに新たに作成した。来年度は高齢者に多い他の疾患をテーマにテキストを作成する。