今回の改正案は、第一回定例会に提出された改正案とその本質は全く変わっておらず、中高生が自分で考え、判断する力を培う前に、大人が知らないところでその判断能力の形成を妨げる恐れのある図書類に触れないようにするための改正です。
改正案は、強姦など刑罰法規に触れる性行為や近親相姦など著しく社会規範に反する性行為を不当に賛美・誇張して描いた漫画やアニメなどを業界関係者や保護者の代表、学識経験者などで構成される青少年健全育成審議会が指定したものを書店の一般書棚から「成人コーナー」へ区分陳列することを義務付けたものです。
したがって、漫画家、作家、出版業界が懸念されている漫画やアニメなどの発表の場をなくしたり、出版できなくしたりするものでは全くありません。このような仕組みは、長野県を除く全ての道府県の条例に規定されており、岐阜県の同種条例に係る最高裁の判決は、憲法21条第1項の「言論、出版等の表現の自由」に違反するものでないと判示しています。
また、このような漫画やアニメなどの区分陳列への取組みを進めるに当たっては、従来と同様、出版業界の自主的な取組みが重要であることは理解できます。しかしながら、現行基準に基づいて、平成16年度以降現在まで不健全指定された図書類の約51%は、自主規制団体に属さない、いわゆるアウトサイダーの出版社より発行されたものであります。
このようなアウトサイダーの出版社については、積極的な自主的取組みが期待できないことから、出版業界の主張する規制団体による自主規制だけでは、十分でありません。
定例会の代表質問で共産党は、「日本PTA全国協議会が実施したアンケートでも、父母が望んでいるのは自主規制が第一で、有害図書等の範囲を現状より拡大するのは最下位でした」と主張しました。
しかし、青少年治安対策本部長の答弁で「ご指摘のアンケートは、全国のPTAとしての図書類に関する取組みのあり方についての設問であって、そもそも東京都の条例改正について尋ねたものでありません」と一刀両断されました。共産党は、あいかわず、本質の議論を行わず、議論のすり替えばかり行っており、本末転倒としか言いようがありません。
青少年治安対策本部長は、さらに、「今回の条例改正については、都内の多くのPTA関係団体から条例成立に向けた要望をいただいています」と答弁しました。
私は、こうした観点から将来を担う子どもたちの健全な育成の為に、本条例の改正案に賛成しました。ただ、漫画家や出版業界からは、度重なる「表現の自由を侵害する」「創作活動を萎縮させる」といった声が寄せられたため、こうした声を尊重し、本条例の改正案に「規定の適用に当たっての慎重な運用と青少年健全育成審議会の諮問に当たっては、検討時間を確保すること」の付帯決議を付けることを公明党、自民党で合意し、その後、民主党の賛同をいただいたものであります。