【都市再生・空洞化対策について】
この度の大震災を受け都は、地震対策、非常時の電力の確保、都市間競争に打ち勝つ経済の活性化など、日本再生にも直結する幅広い取り組みを行う必要があります。大規模な取り組みなだけに、都民の共感を得られるコンセプトが重要であります。
都議会公明党は「10年後の東京」で打ち出された「水と緑の回廊」都市を改めて強調すべきと考えます。
かつての江戸の美しい町並みは、元を辿れば、関東台地を流れる河川が織り成す砂州や沼地、入江でした。それを埋め立て、世界に冠たる八百八町に造り上げたのが、中世日本の土木・建築技術であります。
今後は、例えば堅牢な埋め立て地、すなわち人工地盤を広く形成するなど、現代日本の技術を駆使して、新しい東京を築くべきと考えます。建物の高層化を有効に活用すれば、空地の少ない都心部においても、人工地盤の地表に、世界に比類なき、水と緑の公開空地を創出することができます。日本が誇る最先端の技術を活用して、今後の東京の都市づくりを進めることについて石原知事の所見を伺います。
次に、総合特区を活用した東京の経済再生について質問します。
東日本大震災に伴う原発被害と国政の混迷によって、外国資本だけでなく国内企業までもが日本脱出を図り始めています。日本離れを防ぐためには、世界の中から東京を選び取らせる、インセンティブを高めなければなりません。
国はこのたび、大幅な規制緩和に、税制、財政、金融上の支援策を組み合わせた国際戦略総合特区を新設し、12月にも第一回の選定を行う予定です。国内最大の消費力と技術力、世界でも稀な首都密接の港湾と空港に恵まれた東京こそ、総合特区の機を活かして、アジア経済の中心たる地位を高め、日本再生に大きく寄与すべきと考えます。総合特区の活用の効果について、都の見解を求めます。
この総合特区の効果を高めるためには、アジアでも一段と秀でた街並みの再編が必要です。そこで、都は今後、国の新たな「特定都市再生緊急整備地域」制度を活用し、高さや容積率などの既成概念に囚われることのない、斬新な都市構想を練る必要があります。
かつて、霞が関ビルや世界貿易センタービルの建設は、アジアにおける高層建築の夜明けを告げました。今後は、高度防災都市、低炭素・環境先進都市として、アジアの模範となるべきです。
そこで、都心部などについては、都市計画に関して大胆な措置を講じていくとともに、新たな街づくりを進めていくための方針を明確に示すことで都市再生を推進していくべきです。見解を求めます。
次に、産業の空洞化対策について質問します。
金融や観光に重きを置く欧米都市と異なり、東京には、国内有数のものづくり拠点としての役割があります。都内中小企業にとって、産業の空洞化とは取引先が海外に移転することにほかならず、事態は深刻です。産業の空洞化について知事の所見を伺います。
こうした中、都は産業面でのシティ・セールスなどにより、都内中小企業の技術力やビジネス拠点としての東京の魅力を発信するとともに、都内中小企業が国内で将来にわたり事業を継続できるようなサポートにも取り組むべきと考えますが、見解を求めます。
知事が所信表明で触れられたナノレベルの微細加工器などと並び、ロボット産業は、都内の有望な成長産業です。しかし、その具体的な活用の姿が見えないため、本格的な開発や投資が進みません。多摩地域に集積する精密機械産業の技術力を生かし、多摩シリコンバレーの整備を視野に入れ、研究開発を実用化に結びつけるためロボット産業の育成に向けて、中小企業へのサポートを充実させるべきと考えますが、見解を求めます。
【電力・エネルギー対策について】
今夏は、都民や都内事業者は、様々な創意工夫によって節電した結果、7月から8月にかけての最大使用電力の推移は、国が示した15%の削減目標を大幅に超え、20〜30%の削減を達成しました。
今後は、今夏の経験を生かし、省エネ効果の高い節電手法を集約するなどして、電力多消費社会からの転換を図る必要があると考えます。
一方、電力の供給面では、大規模災害への備えを固めるために、多様で自立・分散型のエネルギー源を確保していくことが重要です。しかし小規模な発電設備はCO2排出や発電効率等の面で課題があるとの指摘もあります。
そこで、自立・分散型発電設備の導入に当たっては、環境性能と効率的なエネルギー利用の両立を図る視点から、設置者の立地条件等に適したアドバイスを提供できる体制を整えるべきと考えます。併せて電気事業に対する規制緩和も含め、見解を求めます。
自立・分散型エネルギーの普及拡大を図るためには、再生可能エネルギーの着実な導入促進も必要であります。
都はこれまで、太陽エネルギーの補助制度を導入し、それが国の補助制度の復活へと結びつくなど、着実な成果を上げてきています。
一方、再生可能エネルギーの導入促進策として、長野県飯田市では、初期費用が高いというハードルを乗り越え、太陽光発電をファンドの活用で、初期費用なしの月々19,800円で設置できるようにし、米国では、太陽光発電の大規模共同購入やリース手法の活用による導入を促進しています。また欧州では、大型ショッピングセンターなどの特定建築物の新築等の機に、太陽光発電の設置を義務付け、普及拡大につなげている事例も見られます。
都は、再生可能エネルギーの全量買い取り法の成立を機に、国内外の動向を調査し、工夫を凝らして、再生可能エネルギーの導入拡大を促進すべきです。今後の取組の方向性について、見解を求めます。
また、新たな再生可能エネルギーの開発も重要です。我が党は、昨年の第2回定例会で、波力発電の促進を訴えました。波力発電の面積あたりのエネルギーは、太陽光の20〜30倍です。海外では、波力発電の豊かなポテンシャルに着目した商業規模のプロジェクトが既に開始されています。
都は、平成21年7月、大学や民間事業者に波力発電検討会の設置を呼びかけ、検証が行われました。検討会では、我が国における可能性も示され、波の状況や係留技術の実証事業が伊豆諸島海域で行われ、地元関係者の意見を踏まえ、具体的な海域検討や課題調整等が実施されました。この取組みを本格的に稼動すべきであります。見解を求めます。
【防災対策について】
東日本大震災は、想定されていなかった甚大な被害となり、国と共に都は、防災力の抜本的強化が求められております。都は今後、11月に予定されている都の防災対応指針の策定や地域防災計画の見直しに取り組むことになりますが、都民の安全確保を何よりも重視する視点から、今後の防災力強化について石原知事の認識と決意を伺います。
都がこのほどまとめた東日本大震災の対応と教訓によると、主に地域防災力、住民の避難誘導体制、水防・津波対策、液状化対策等の強化が重要と指摘しております。
このうち地域防災力の向上については、知事は本年の本会議で重ねて「防災隣組」に触れ、住民同士による共助の必要性を強調しております。しかし、高齢化の進展に伴い共助の担い手のいない地域が増えているというのが実態です。
こうした状況下における「防災隣組」の具体化として、比較的若い人のいる事業所、商店、コンビニ等との連携を検討すべきです。町会や自治会と地域内の事業所等が災害協力協定を結び、発災時に倒壊家屋の下敷きになったり負傷した住民を救助する仕組みは極めて有効であります。こうした形態の事業を「防災隣組」の一つのモデルとして都が率先して取り上げ、区市町村の展開につなげていくべきと考えます。見解を求めます。
次に、住民の避難誘導対策について質問します。東京は、都心部に大規模地下街や区部東部にゼロメートル地帯が広がっており、巨大台風や想定を超える津波対策など、ハード対策だけでなく都民の命を守る避難誘導対策が極めて重要であります。そこで、大震災に加え大規模水害も想定し、自治体や学識経験者などを交えた避難誘導対策の検討組織を設置し、総合的に検討すべきと考えます。見解を求めます。
また、避難経路となる道路が寸断される場合などに備えた補完的避難ルートとして河川が考えられます。都内を流れる河川の61か所に設置されている防災船着場の活用に着目すべきです。東京都地域防災計画には震災時の物資の輸送拠点として防災船着場を位置づけておりますが、住民の避難経路としての活用も検討すべきです。防災船着場を避難住民や傷病者の避難誘導ルートとしても活用できるよう明確に位置づけるべきと考えますが、見解を求めます。
次に、災害時におけるユビキタス技術の活用について質問します。
震災時にはターミナル駅周辺など都市の各所で大きな混乱が生じることが改めて問題になっています。特に大都市の地下街は複雑な構造をしており、非常時の避難対策が不可欠です。
都はこれまで、ユビキタス技術の実証実験として観光案内や視覚障害者への移動支援などに取り組んできました。
大阪の梅田周辺では、実写の写真と地図を組み合わせた「パノラマビュー」を作成し、普及しているスマートフォンなどで地下街の店舗やトイレの位置情報を提供したり、目的地までの最短ルートを案内するなど、バリアフリー案内に努めています。
今後、高度防災都市づくりの一環として、災害時の誘導と安全を期すため、映像や音声を取り込んだユビキタス技術の活用を、地下街を含めて検討すべきと考えます。そこで、防災への活用を視野に入れた「東京ユビキタス計画」の今後の取組みについて見解を求めます。
次に、地震・津波対策について質問します。都の水門、排水機場や防潮堤等の多くは、関東大震災級の地震に耐える整備を進めているものの、阪神大震災級の直下地震に耐える強度は、十分とは言えない状況にあります。
また、地震や津波等により東部低地帯の水再生センターやポンプ所等の施設が排水機能を失った場合、区部面積の2割を占める海抜ゼロメートル地帯は、水が滞留しライフラインの復旧を阻むことは明らかであります。
従って、水門、排水機場や防潮堤等のさらなる耐震性の強化、及び東部低地帯の水再生センター、ポンプ所や排水機場等に対する耐水性の一層の強化に取り組むべきと考えますが、都の見解を求めます。
また、先日の読売新聞には、国の一部の水門が、津波の第一波に対して閉鎖が間に合わなかったとの報道がありました。都の水門については、地震発生後速やかに対応したことは承知しておりますが、ゼロメートル地帯において、万が一水門が閉鎖できないと甚大な被害が発生することも考えられます。施設整備に加え、水門の迅速かつ的確な運用、関係機関との連絡体制をより強化すべきであります。見解を求めます。
次に、伊豆諸島の津波対策について質問します。
東日本大震災では、津波によって東北地方に甚大な被害が生じました。東京においても、特に伊豆諸島の島しょ部について、大規模な津波が襲ってきた際の対策を講じておくことが重要であります。今回の「対応と教訓」でも、島しょ部の津波対策について検討されていますが、今後の具体的な取組みについて見解を求めます。
また、三宅島の大久保海岸の海沿いに東京電力の火力発電所があります。この島内唯一の発電所が、津波や高潮によって機能を失うことが懸念されています。三宅島の発電所機能を守るため、早急に津波対策を講ずるべきと考えますが、見解を求めます。
次に、液状化対策について質問します。
国は、液状化の発生を見据えた有効な対策として、道路・下水道等の公共施設と隣接宅地等との一体的な液状化対策を講じる対策の検討に入りました。都では、本年7月に建築物液状化対策検討委員会を設置し、木造住宅などの液状化対策を検討しております。そこで、本検討委員会においても、公共施設と隣接宅地との一体的な液状化対策を新たな検討課題とするべきと考えますが、都の見解を求めます。
【医療について】
初めに、ドクターヘリの拡充についてであります。東日本大震災の翌日、岩手県に全国からドクターヘリが派遣され、一日で49名の救出活動にあたるなど、貢献しました。
公明党は、阪神淡路大震災の教訓を踏まえドクターヘリの導入を強力に推進してきており、現在ではすでに、23道府県で実現しています。東京においては、我が党の推進により東京型ドクターヘリが東京消防庁に7機配備されていますが、首都直下地震などに備えるためには、まだ足りません。
そこで、都は、現在ある他県等との相互応援協定に基づき、他県から参集するドクターヘリによる人命救助を拡充すべきと考えます。
そのための具体策について、見解を求めます。
また緊急の際、学校のグランドや広場など臨時に離着陸できる場所を確保すべきであります。さらに、災害拠点病院のヘリポートでも夜間照明を備えていない施設もあるため、早急に整備すべきであります。それぞれ見解を求めます。
次に、ドクターシップについて質問します。ドクターシップとは、負傷者などを船や港で治療したり、搬送したりする船をいいます。
我が国でも、ドクターシップを新たに建造する動きも見られましたが、平常時の活用などが課題となり、進んでいません。
しかしながら、被災地に向かう船に医療機材を積み、港で降ろした上で治療を行なったり、医療機材を積んだ船を港に停留させて、被災者に治療を行いながら、船を避難所とすることは可能と考えます。
そこで都は、東京港に寄港する旅客船をはじめとする船舶を災害時の医療対策における船舶として活用することを検討すべきと考えます。見解を求めます。
次に、被ばく医療体制について質問します。
我が国の緊急被ばく医療の体制は、原子力施設が立地、隣接する19道府県が指定する初期・二次の被ばく医療機関と、全国2か所の国指定の三次被ばく医療機関により構築されています。国は被ばく医療体制を確保するため、原子力発電施設等緊急時安全対策交付金をこの19道府県に交付していますが、東京都は対象外です。そのため、現在は、都指定の初期・二次の被ばく医療機関はありません。
こうした中でも、都は、現在まで都内病院の協力を得て、東京に避難された方々に対する放射線量検査に努めてきました。本来は、国の緊急被ばく医療体制の対象が原発立地県や隣接県に限定されてきたという危機管理上の不備ではありますが、今後、都民の不安を払しょくするためには、放射能汚染の検査や除染、診療を行える緊急被ばく医療機関を都が指定・整備する必要があると考えます。見解を求めます。
次に、災害拠点病院の機能強化について質問します。今回の災害では被災地の多くの病院で建物、ライフライン等の被害が発生し医療機能に支障をきたしました。病院建物の耐震化や非常時の自家発電の整備は補助金等の活用もあり着実に進んでおりますが、対策の盲点となっているのが災害時の手術や治療等に大量に必要となる医療用の水の確保であります。
都は、災害拠点病院に対し、受水槽の整備、飲料水の備蓄等を促しているとのことですが、いずれも安定した確保策とは言えません。浄水装置を使った災害用井戸の整備や河川水等の利用など、多元的な水の確保策を支援すべきと考えます。都の見解を求めます。
【被災地支援策について】
震災から6か月が過ぎてなお、8万人以上の方が、避難生活を強いられています。
甚大な被害が、復興を目指す被災地と多 くの被災者の前に立ちはだかっているので す。このような時こそ、どこまでも被災者に 寄り添い、被災地の目線から復興対策を迅 速に進めなければなりません。
三宅島の全島避難の際に、コミュニティ ーを大事にしながら、島の地場産業の継続 にも配慮し、スムーズな帰島と島民生活の 支援に取り組んだ都であるからこそ、その 経験を活かし、被災地、被災者が真に必要と する支援を行うべきであります。
そこで、被災地支援及び被災者の生活再建に向けた知事の決意を伺います。
我が党は第2回定例会代表質問において、被災地の子どもたちを東京に招待し、スポーツ観戦や交流試合等、スポーツに接する機会を提供すべきと提案しました。そして今年8月、墨田区と八王子市で野球とサッカーの交流試合が開催されました。
我が党も会場に足を運び子どもたちの声を聞いたところ、久々に思う存分プレーができた喜びを語っていました。夜はホームステイで東京の子どもたちと交流し、受け入れた側の保護者からも「助け合いの心が育まれました」との喜びの声が多数寄せられました。こうした取組みは、今後も会場と種目を増やして行うべきと考えますが、都の見解を求めます。
現在、都内の経済団体が会員企業のもつ遊休機械設備を被災地の希望する中小企業に無償譲渡しようとする取り組みが行われています。現地では、生産を再開できるのであれば、旧式の機械であっても使用したいとの被災地の経営者の声も数多く上がっています。
そうした要望に応えるために、設備の運送等に必要となる費用を公共部門で一定程度まで助成するような思い切った取り組みも必要です。見解を求めます。
次に、食の安全について質問します。
原発事故に伴う放射性物質の拡散と、内部被ばくへの不安から「食の安全・安心」が揺らいでいます。
特に、子どもの健康への影響を懸念する声が高まっています。また、事故に対する国の対応の遅れは、内部被ばくへの不安を招き、子どもの健康や食の安心・安全に深刻な影響を与えています。
とりわけ、いわゆる汚染稲わら肉牛の問題は、消費者の信頼を大きく損ねるものとなりました。加えて、取扱量が全国一多く、その取引価格が全国相場の目安となっている都の中央卸売市場食肉市場では入荷頭数の激減や相場の低迷など被災地などの畜産業者に大きな打撃を与えています。
こうした事態を打開するため、被災地などでは、出荷牛の「全頭検査」に取り組み始めていますが、検査機器の確保や検査体制の確立が大きな課題となっています。畜産業者からは、「首都圏の消費者に一番近く、全国に影響力を持つ都の食肉市場において放射能検査を行ってほしい」と、強い要望が寄せられています。
現在、都の中央卸売市場食肉市場では関係業界が自主的に民間機関に委託して検査を開始しましたが、一頭あたり9,000円程度かかる検査料は、生産者が負担する現状にあります。都は、検査機材や人員を増強するなど、肉牛の「全頭検査」へ向けた体制を早急に整備すべきと考えます。併せて、公的検査の結果を記した「安全証明書」を発行するなど、消費者への「食の安心」に努めるべきであります。見解を求めます。
【住宅政策について】
昨年6月、知事は、東京都住宅政策審議会に対し、社会経済情勢の変化に対応した新たな住宅政策の展開について諮問しました。
都内では、高齢化の進展と非正規雇用の増大によって都営住宅の増設を望む声が上がっており、総管理戸数の弾力的運用を図る必要性が、高まっていると考えます。
このほかにも、介護と医療の連携拠点としての住宅、無縁社会や単身者の増加に対応した家族近居や多子・多人数・多世代同居が可能な住宅、婚姻を望む中低所得単身者向けの住宅のほか、職住の接近化とバリアフリーの進展など、課題が山積しています。
都は、来年度予算の編成に向け、住宅政策の拡充を図ると共に、国際的都市間競争や都民の不安軽減に資する住宅政策の未来像を発信するべきです。
そこで、明年3月を目途とする「住宅マスタープラン」の改定においても、課題解決に的確に対応すべきと考えます。見解を求めます。
さらに、バリアフリーの模範を示すべき都営住宅で、制度上の要因からエレベーターの設置が進まない事例があります。例えばエレベーターに乗らないという理由で設置に反対する声がある場合、今は入居者全員の賛同が得られていないとして設置できません。
都として、全員同意の要件を緩和し、既存の都営住宅へのエレベーターの設置を進めるべきと考えますが、見解を求めます。
【福祉施策について】
まず、高齢者の住まいについて伺います。
通常国会で成立した介護保険法の改正では、「地域包括ケアシステム」の推進が明確に示されました。「地域包括ケアシステム」とは、高齢者が地域で自立した生活ができるよう、
1)介護と医療との連携強化
2)介護サービスの充実強化
3)予防の促進
4)見守り、配食、買い物など生活支援サービスの促進、そして、
5)高齢期になっても住み続けることのできる住まいの整備――という5つの取組みが、包括的かつ継続的に行われる体制のことであります。
都議会公明党は、介護と居住の連携を重視しています。理由は明快で、安心して住み続けられる居住空間があって初めて、先に述べた各種サービス提供の“土台”が整うからであります。
この点、都の「医療・介護連携型高齢者専用賃貸住宅」のモデル事業は、有効な取組みと評価します。しかし、これらの住宅の賃料は、厚生年金受給者で初めて支払いが可能な水準であり、より低所得な高齢者も利用可能な医療・介護付きすまいの供給を促進すべきです。見解を求めます。
次に、社会的養護のもとで生活する児童の支援について質問します。
親が抱える経済的問題や疾病、虐待等の事情により親元で生活することができず、養育家庭や施設で生活する児童が近年増加しています。
都は、こうした児童が家庭的な雰囲気の中で愛情に包まれ、養育が行われる養育家庭制度を推進してきており、我が党としても評価し、積極的に進めることを主張してきました。
しかし、先月、杉並区の養育家庭の母親が、養育していた里子に対する傷害致死の疑いで逮捕されるという極めて残念な事件が起こりました。
今回の事件について、養育家庭の方々はいろいろな不安を感じながらも、引き続き里親としての養育に努力していきたいとの心情を語っております。こうした事件を二度と繰り返さないため、また、養育家庭の努力を支えるためにも、児童相談所の支援と併せて、養育家庭の悩みを的確に把握し、地域で孤立しないよう、支援することが必要です。
この点、都が民間団体などに委託して実施している里親支援機関事業は、養育家庭が気軽に相談できる場として、利用しやすいと聞いています。現在3か所で実施されている本事業を、すべての児童相談所の管轄区域において夜間を含めて実施すべきと考えます。都の見解を求めます。
次に、児童の自立支援について質問します。
施設や養育家庭で育つ子どもの多くは、施設などを出て社会に出た後、経済的にも精神的にも、非常に大きな困難をかかえていると聞いております。
都は、昨年度、全国的にも例のない、施設退所者に対するアンケート調査を実施しました。その結果をみても、施設退所者の雇用形態が不安定な状況や、施設を退所した直後に孤独感、孤立感を感じた、生活費などに困った、などの切実な声が寄せられています。
また、施設退所後の困ったときに親や家族に頼ることができず、施設職員に支えを求めている人が多いことも明らかになりました。社会的養護のもとで育つ子どもが、施設を出た後に確実に自立できるよう、新たな支援策を検討していく必要があると考えます。都の見解を求めます。
次に、障害者施策について質問します。
このたび障害者基本法が改正され、8月に施行されました。その改正法における障害者の定義に発達障害が初めて明記されるとともに、共生社会の実現など目的規定の見直しがなされました。
都は「10年後の東京」の中で、平成19年から10年間で、障害者の一般就労3万人増加の目標を掲げ、平成22年までに約2万人まで達成しています。
今回の法改正を受け、都は目標の3万人に向け、就労の場の拡大について企業等への働きかけをさらに強め、早期に達成すべきです。見解を求めます。
次に、障害者の就労拡大のためには、教育が重要です。都教育委員会は、発達障害児の増加に伴い、全小中学校に特別支援教室を設置し、通級指導ではなく在籍校における教育の充実を目指しています。
しかし、教員の中には、発達障害がどういう障害なのか、教育支援の方法や配慮の内容についても必ずしも理解は広がっていません。これらに関する研究を進め、すべての学校の教員の指導力の向上を図るべきです。また、高校における発達障害のある生徒への配慮や教育の充実と併せて見解を求めます。
ところで、発達障害のある子どもの教育には、デイジー図書などICTの活用が有用とされています。スマートフォンやタブレット端末にも、デイジー図書を再生できる機能が備えられるなど、障害者を支援するICT機器が増えてきています。
また、音声の聞き分けなどで障害を抱える子ども向けに、集音器や周囲の騒音を低減するノイズキャンセリング・ヘッドホンなどは既に、特別支援学校で活用されています。
しかし、現在、小中学校では、こうしたテクノロジーがほとんど活用されていません。
小中学校で障害児教育のためのテクノロジーが活用できるよう研究を推進していくべきです。見解を求めます。
また、入学前後に受けられる様々な配慮や支援は入学選考時にも受けられる様にすべきです。都立高校の入試においては、ICT機器の使用などテクノロジーの活用を可能にするよう検討していくべきです。見解を求めます。
教科書バリアフリー法の制定や著作権法改正で、デイジー版の図書が制作されるようになりました。しかし、その制作はボランティアの力に支えられているのが実情で、認定教科書以外の副教材や子ども向けの書籍は入手しにくいのが現状です。
本が読めないことで、自信をなくしていた読み書きに障害のある子どもが、デイジー図書に出会い、「お母さん、本が読めるよ」と、喜んで読書に挑戦するようになったとの体験も数多く紹介されています。
都立図書館においても、発達障害のある子どもたちが本に親しめるよう、子ども向けのデイジー図書を増やすとともに、地域の図書館と連携して、デイジー図書を利用しやすくしていくべきと考えます。見解を求めます。
【災害・自転車政策について】
警視庁による減災対策と自転車政策について質問します。東京は先の東日本大震災の直後から、度重なる計画停電を経験しました。そうした中、警視庁は非常用電源付信号機を増設したほか、震災後に発生した大渋滞を踏まえ、9月1日には、主要交差点、幹線道路を10分間止める大規模な交通規制訓練をはじめて実施し、マスコミでも大きく取り上げられました。そこで、今回の訓練で判明した課題やその改善策について、現時点での認識を伺います。
次に、都内交通事故件数は、年々減少しているとの報告を受けていますが、自転車が関与する事故の割合は、一向に減っていません。特に今年上半期の全事故件数の実に38%に自転車が関与していると聞いていますが、とりわけ危険なのは、ブレーキ装置のないいわゆるピスト自転車であり、都議会公明党は、これまでも自転車事故の防止策を含めた自転車条例の制定を提案してきましたが、改めて、今後の強化策を伺います。
また先日の道路交通法に基づく、いわゆる標識標示令の一部改正等により、自転車の一方通行規制標識が新設されたとのことですが、本改正の効果と、今後の活用の方針について見解を求めます。
【消防体制の充実策について】
東日本大震災は、地震・津波・原発事故に人災も重なる「複合災害」となりました。こうした中、火災の消火、ヘリによる救助活動、原発事故でのハイパーレスキュー隊の放水活動等において日頃の訓練の成果を遺憾なく発揮されました。今後は首都直下地震に備えた消防の体制を整え、都民の期待に応えるべきです。
人的・物的両面における、東京消防庁の体制強化について、所見を伺います。
被災地では、津波による浸水や瓦礫の堆積などが広範囲だったことから、航空機とバイクが役に立ったと聞いています。災害時に発生する様々な事象に即応性をもって対応するためには、例えば救助隊と航空隊との連携や機動性の高いバイク隊を他の部隊などと相互運用させ、効果的な活動につなげていくべきと考えますが、所見を伺います。
次に、消防団への支援について質問します。
消防団の献身的な日頃の活動に深く敬意を表します。
消防団の震災時の活動拠点は分団本部であり、各種資機材は活動に不可欠です。
そこで、東日本大震災を踏まえた消防団の資機材及び分団本部施設の整備について、まず所見を求めます。
ところで消防団員は、生業の傍ら常に地域の災害対応に心を配っています。こうした消防団員に対して、火災指令や災害の情報などについて、携帯メール等を活用して伝達することは、災害への迅速な対応が図れるとともに、消防団員の負担の軽減につながると考えますが、見解を求めます。
一方、消防団員の退団理由の中には、家庭の事情などによるものがあります。消防団員を継続する意思がありながら、育児、介護などの諸事情により、やむなく一定期間活動できない団員が、一時的に活動を休止できるよう制度を見直すべきと考えますが、見解を求めます。以上述べた点については、多摩の各市町村に対しても、適切な指導がなされるよう要望しておきます。
【外郭団体改革について】
都議会公明党は、これまで都政改革の重要課題である外郭団体改革に一貫して取り組み、監理団体数の半減や役員退職金の全廃を実現するなど、大きな成果をあげてまいりました。こうした流れを受けて都は昨年、監理団体を重要なパートナーとする東京都監理団体活用方針を策定し、その位置づけを明らかにしました。この取り組みについては、一定の評価をするものであります。しかしその一方で、もう一つの外郭団体である報告団体については、位置づけが不明確なままとなっております。都議会公明党は昨年、外郭団体改革推進プロジェクトチームを立ち上げ、公益法人制度改革や指定管理者制度なども視野に入れた検討を行ってまいりました。現在51ある報告団体は、非常に多様であり、時代の変遷とともに事業内容、都施策との関連の度合い等も大きく変わってきており、より一層の透明性を高めていく必要があります。また、名称だけをみても、都の報告団体であること自体に誤解を招きかねないものもあります。加えて現在は、所管局の指導・関与だけで終わらせております。
我が党は外郭団体改革の総仕上げとして、昨年より報告団体改革に取り組んでまいりました。昨年の第3回定例会での我が党の代表質問に対し都は、事業内容や都との関連性などから位置づけを明確にし、類型化に取り組んでいくと答弁しております。
報告団体改革に対する都の検討内容と類型化の結果を明らかにし、また都の関与のあり方についてもさらに見直すべきであります。
以上2点について答弁を求めます。