【財政問題について】
石原知事は、過日の所信表明において、5年連続の都税収入減収に危機感を表明しました。確かに平成19年度にはおよそ5兆5千億円に上がった都税収入は、現在では4兆1千億円台に激減しております。しかも日本を取り巻く経済状況は、失われた20年を惜しむどころではなく、現代資本主義は自壊したと指摘する論評まで現れ、経済構造の根源的な転換なくしては、日本経済の再生はあり得ず、財政の好転など望むべくもないという認識が広がっています。
しかもそれは、経済の問題に止まることなく、政治・経済・社会全ての構造転換が不可欠との深刻な認識に発展し、現在の国政への抜き難い不信感、絶望感につながっています。しかし、絶望ばかりしている場合ではありません。
こうした中にあって東京都の平成24年度予算案は、公会計制度の改革、つまり複式簿記・発生主義会計の導入による事業評価によって約220億円の財源を生み出し、更に事業費の精査によって、およそ1160億円の財源を確保するなどの取り組みによって、雇用や中小企業支援、景気対策に密接に連動する投資的経費を8年連続で増加させ、保健と福祉の分野を、額・構成比とも過去最高とするなど、苦心と苦労、努力の跡がうかがえる予算案となっており、評価いたします。
しかし、それにしても問題は、依然として厳しい経済状況が続く今後の財政運営であります。東京は今まさに都市の更新時期に差しかかり、防災、環境、福祉に最大限に配慮した中長期にわたる都市インフラの再整備は待ったなしの課題であり、加えて、加速度を増す高齢化に伴う施設・住宅などの環境整備、都市間競争に打ち勝つための官民あげての大胆な都市再生の積極的な展開も避けて通れません。まして、東日本大震災の被災地への復旧・復興支援は、さらに息の長い取り組みが不可欠であります。
ここで、東京都の抱える全ての課題を挙げて論ずることは不可能ですが、いずれにしろ重要な事は、まず第一に今後の財政の舵取りであります。都政史上初の5年連続の都税収入減収に危機感を表明した石原知事の、今後の財政運営にかける意欲と決意、そして、より根源的な解決策として財政自主権の確立を中心とした本格的な地方分権への取り組みについて、所見を伺います。
【被災地支援策について】
東日本大震災の被災地支援です。「政治に携わる者の一員として、千年に1度の大災害に遭遇した重みを決して忘れてはならない!」これが発災以来の我々の合言葉でした。発災直後から、警視庁、東京消防庁、そして自衛隊の皆様が必死の活動を展開されたことは日本国民全員の賞賛の的となりました。
石原知事も「東京都も出来ることは何でもやる」とばかり、うろたえる国を尻目に支援、救援に当たったことは、これも高く評価に値します。我々、都議会公明党も、被災地から、悲鳴にも似た支援の要請を連日のように受け、総務局の総合防災部を初め関係各局の局長、部長、課長の皆さんと、時にはキツイ言葉のやり取りを交わしながら、一つひとつの支援策の実現に取組んで来ました。
その結果、例えば被災3県への旅行者に対し、一泊3千円、5万泊分の補助の実施や、来年度における福島県への旅行者に対する助成を実現するなど、一定の成果をあげました。
まもなく被災から1年を迎えますが、未だ国は復興庁の本格的な始動も出来ないお粗末な状態にあります。
従って東京都の果たすべき復旧・復興支援の必要性は、いささかも減じておりません。
都議会公明党は昨年の数次にわたる被災地入りに引き続き、2月12・13日の両日、福島、宮城、岩手の被災3県に議員団を派遣し、県や市町、商工団体、被災住民から実情を聞いて参りました。
やはり最大の課題は、水産業、農業の壊滅的被害による地元経済の崩壊、雇用の喪失であります。地元商工会議所などからは、地元産の物産は、何としても確保し、集めるから大規模な被災地物産展を連続して実施してほしいと強く要請されました。
【被災地支援:経済支援について】
都は、昨年12月、東京国際フォーラムで3日間にわたり「被災地復興応援フェスタ」を開催しました。このイベントには岩手、宮城、福島の被災3県の物産展や伝統工芸品の製作実演・販売コーナーなど38の店舗が出店。
3日間の来場者が延べ2万4000人を超える賑わいの中、物産を完売した店舗も多くあり、出店者からは「こうした応援イベントは、大変にありがたい」との声があがっておりました。都は今後も是非このような取組みを大規模に、連続して実施すべきです。
また、同じ物産展でも、小規模なイベントなどの場合、交通費や宿泊費などの費用が収益を上回り赤字になる例が少なくないといいます。
そこで、都は、商工会議所やJAなど民間にも協力を求め、収益があがり、被災地の雇用にもつながるような物産展の実施を考えるべきですが、見解を求めます。
他方、宮古市では、特産品をはじめ現地の産業に精通した県外の企業が、現地の人を雇用しながら市の産業支援センターと連携し、一軒、一軒の店舗や事業所を回りながら、無理のない範囲で物産品を集めては、東京のイベント会場や店舗で販売し、消費者と結び付ける努力を行っておりました。こうした現地の「身の丈に合った」丁寧な支援も重要であり、陸前高田市でも同様の支援が検討されておりました。
このような企業などが、東京で販路拡大をし易くなるよう、先ずは都が、活動拠点を提供するなどの支援策を講じるべきです。
また、都内各地に散在する商店街の空き店舗を活用し、被災地支援のため企業やNPOがアンテナショップなどを出せるよう、新たな仕組みや支援策を考えるべきであります。併せて都の見解を求めます。
【被災地の人的支援について】
被災地では、国の第二次補正などでライフラインの復旧予算が4倍に増えたものの、
専門職員が決定的に不足し、大幅に予算の執行が滞っていると、県庁の主要な幹部から聞きました。同様に復興に関わる各種補助金の申請への対応や、津波で全てを流された地域での土地の権利関係の確定や、区画整理などの専門家も大幅に不足しているそうであります。
都は、これまでも被災地支援のための職員派遣に取り組んできましたが、今後も、現地で必要とされる専門職員の、中長期にわたる支援が不可欠であります。都の継続的で力強い対応を求めたいと思います。見解を伺います。
【被災地のガレキ処理対策について】
次いで、災害廃棄物、いわゆるガレキの処理ですが、被災地では行政関係者を初め、実に数多くの人々からガレキ処理の受入れを開始した東京都に対する、尽々の感謝の言葉が寄せられました。
50万トンのガレキの処理の受け入れ表明は、まさに誇るに足る東京都の英断であります。被災地で最も大量のガレキが集積しているのは石巻市であります。ここには被災3県のガレキ総量の4分の1が集積しており、未だ手付かずの1万数千棟に及ぶ被災家屋の解体が進むと、さらにガレキの総量が増大すると説明を受けました。
従ってまずは、表明した50万トンの処理を迅速に進めることが何よりも肝要であり、宮古、女川に次ぐ処理計画を早急に明らかにすべきであります。見解を求めます。
一方、問題は、国が音頭を取るべき広域処理が全く進まないことであります。ここにも、現政権の当事者能力の欠如が現れておりますが、しかしこれも、放置できません。
公明党は昨年、山口代表を中心に全国各地選出の国会議員およそ20名で、城南島の処理工場を視察し、その現場で山口代表から各国会議員に対して、それぞれの地元においてガレキ処理の受け入れを促すよう強く求めました。
我々公明党も引き続き全国の議員と連携して広域処理の推進に努力してまいりますが、ここは是非とも発信力の強い石原知事と東京都が、ひと肌もふた肌も脱ぐべき局面ではないかと思います。ガレキの処理はただ単なる廃棄物の処理ではなく、心に突き刺さった大厄災のトゲを抜くことにもつながりますと、現地の方から伺いました。知事の見解を伺います。
また、ガレキの輸送には、運搬車両の調達や廃棄物専用のコンテナの確保など、大変な苦労があると聞いていますが、ガレキの処理を本格化させるためには、さらに輸送力を高める必要があります。
現在は、車両と鉄道輸送が主流ですが、大量処理を推進するためには、いずれ船舶の活用も検討すべきと思います。見解を求めます。
【除染対策について】
被災3県のなかでも、特に福島県における除染が重大な課題です。現在、国と福島県が除染の効果を検証するモデル事業を実施していますが、汚染土壌の仮置き場の確保など、課題が尽きません。
都議会公明党はJA福島中央会やJA全農福島の方々とも意見交換してまいりましたが、国の対応が遅れるなかで、JAグループとして独自の除染マップ作成を進める、との話がありました。
広い耕作地でのマップづくりには、多くの人手が必要です。また、マップを作成した後に、それに従って除染を進めるにしても、多くの人手が不可欠であり、県外への数多くの避難者などで、深刻な人手不足に陥っている福島県では、極めて困難な課題となっています。
また、福島県農業総合センターでは果物の樹木の除染講習会も視察してまいりました。高圧洗浄機を使っての作業は非常に手間がかかり、やはり人手が必要であります。
そうした実情を知れば知るほど我々も頭を抱えてしまいましたが、ガレキの処理と同様に、ここは東京都の底力を発揮して、支援の検討に乗り出すべきであります。既に首都大学東京放射線学科の大谷浩樹准教授と研究室の学生たちが、ボランティアで郡山の除染活動を行っている例もあります。除染支援に関する都の見解を伺います。
【木密対策について】
東日本大震災では、津波で甚大な被害が出ましたが、首都直下地震における最大の脅威は、建物の倒壊と二次災害の火災であります。
現在、災害に対して脆弱な木密地域には約150万世帯の都民が居住しています。これは放置できません。しかし木密対策は、30年以上も前からの課題でありながら、一向に解決できていない難題でありました。
そこでこの度、東京都が木密対策10年プロジェクトに着手すると発表したことは高く評価し、期待するところ大でありますが、しかし、問題が無くはありません。つまり、都の不燃化特区制度では、あくまで意欲ある区が主体となり、都はその意欲ある区に対しての支援を行うとしている点であります。
これでは、意欲はあるが財政が厳しい区や、執行体制が困難な区が、「意欲がない」と置き去りにされかねません。木密対策は、地元自治体の意欲の多寡にかかわりなく、必要のあるなしを最優先に判断すべきです。そこまで都が踏み込んでいくことが重要であります。さらに、対策が必要な全ての自治体が行動を起こすためには、従来の不燃・耐震化助成だけでなく、民間の資金力を活用する都市計画上の工夫が必要であります。
例えば、潜在的ポテンシャルを持つ木密地域の未利用容積を、アジアヘッドクォーター特区エリアに移転・売却とする制度を構築すれば、木密地域の整備費用を民間から新たに調達することが可能となります。
所謂、空中権、容積率の移転であります。現実に、東京都は平成14年に、大手町・丸の内・有楽町地区を、容積率の移転可能地域としました。その結果、JR東日本は、東京駅の空中権を民間に譲渡・売却し、駅舎の復元・保存や駅周辺整備費の内、約500億円の資金を調達したという事実があります。
残念ながら従来の耐震助成などは、特に高齢者世帯における本人負担が障害となって普及が進みませんでした。また、木密地域における再開発なども、各地で反対運動にあって進展せず、その後提唱された修復型街づくりも、住民合意形成の困難さ、あるいは、資金の不足、住民の転居先の問題、土地の権利関係の複雑さなど、様々な理由から目立った成果はあがりませんでした。同じことの繰り返しでは意味はありません。
そこで、先ほど述べた容積率の移転、売却による民間資金の活用や、様々な経験を積んで進歩した民間の再開発のノウハウを活用し、一兆円といわれる資金を確保しつつ、大胆な都市経営の手法で木密対策を進め、高度防災都市・東京を実現すべきと考えますが、知事の見解を伺います。
また、木密対策を進めるためには、地元自治体の執行体制の強化が大切であります。そのためには、都は技術的支援や人材育成、マンパワーの提供など、ソフト面で地元自治体への支援を行うべきであると考えますが、都の所見を求めます。
【木造住宅密集地域の火災延焼対策について】
木密地域における初期消火体制の確立も重要であります。
木密地域には、狭隘道路が多数存在しており、こうした地域の消防水利の整備・確保や、地域住民による初期消火体制を強化することは極めて重要であります。
現在、東京消防庁では、水道局と連携して狭隘道路における水道施設である排水栓の消火用水への活用や、住民が使いやすい防火水槽の整備、また、スタンドパイプなどによる消火活動の訓練などをより実践的に実施するなど、地域住民の初期消火活動の効果を高める取組を世田谷区などのモデル地区で検証していると聞きます。
地域住民による初期消火の能力の向上に加えて、細かい路地の奥で新たに排水栓を活用した消火用水が確保できれば、木密地域の消火活動を強化・補充することが可能であります。今後、都内の木密地域において震災時の防災力を総合的に向上させるため、こうした新たな消防水利の整備など進めるべきと考えます。東京消防庁の見解を求めます。
【景気・観光対策について】
現在、日本経済再生のカギとして注目されているのが、東京をアジアのヘッドクォーターへと進化させることであります。
東京が国際戦略総合特区を活用してグローバル企業を誘致し、アジアのヘッドクォーターへと発展して、アジアをはじめ海外の成長活力を日本に取り込むことこそが、日本経済を再生させる大きな原動力になります。
アジアや欧米の企業を東京に誘致するには、
まず都市としての高度な防災性能を確保し、安定したエネルギーを供給する為の自立・分散型システムを導入し、さらに文字通り大胆な都市計画上の規制緩和を行って、国内外のデベロッパーの投資意欲をかき立てる必要があります。
それと同時に、これも大胆に税制・金融面での優遇策を実施し、世界トップレベルのビジネス環境を整備することは、当然の前提であります。そうした前提の上で、ここではアジア、そして世界のヘッドクォーターたる為のソフト面の整備、分かりやすく言えば、海外のビジネスマンが本人だけでなく、その家族と共に安心、快適に生活できる環境の整備を強調したいと思います。
海外では、誘致した企業の社員の教育費負担を軽減したり、彼らの母国語で子育て支援や教育サービスを提供している例もあります。教育に限らず医療、介護の面でも同様であり、更にシンガポールの空港ではホテル、コンベンション施設のほか、スポーツ、ゲーム、カジノなどのアミューズメント施設まで空港と連動して整備され、ビジネスだけでなく家族も共に楽しめる工夫がなされています。
これを可能とするものこそ特区制度であり、特定都市再生緊急整備地域であります。都市の国際間競争に勝ち残るためにも、こうしたハード・ソフト両面での多様な取り組みが必要であると考えますが、都の見解を求めます。
また、特区の活用は、東京の中小企業の活性化につながるものでなければなりません。海外に優秀な日本の製品を売り込んでいくためには、誘致した企業が持つ海外販売網と東京の中小企業のものづくりを連動させることが重要です。
多くの外国企業には、日本でつくる商品のプロトタイプは、間違いなく海外で高い評価を受けるとの認識があるといいます。特区制度の活用を通して、中小企業の海外販路の拡大を図るなどの活性策を具体的に展開すべきであります。都の見解を求めます。
同様に、景気対策としてアジアのヘッドクォーター構想と共に重要なのが、観光産業を活性化であります。都は国に先駆けて観光を成長産業として捉え、平成13年に「観光産業振興プラン」を策定。以来、積極的な外国人旅行者誘致の取組を展開し、東京への外国人旅行者数を10年間で2倍以上に増加させました。
しかし、昨年の東日本大震災以来、歴史的な円高なども重なって、観光客が減少しています。この状況を打開し、新たな観光需要を掘り起こす為には、外国人の目線で新たな魅力的な観光ルートの開発が不可欠であります。
そこで都は、2020年オリンピック、パラリンピック東京招致を視野に入れ、外国人旅行者のニーズを的確に把握するとともに、外国人の目から見て魅力的な東京の観光資源を発掘し、積極的に世界に向けて発信していくなど、外国人の視点を重視した戦略的な旅行者の誘致策を展開すべきと考えます。見解を求めます。
【高齢者施策について】
次に、高齢者を地域で支える仕組みづくりについて質問します。
現在、第5期東京都高齢者保健福祉計画の策定が進められていますが、先般とりまとめられた「中間のまとめ」では、「在宅療養の推進」及び「認知症対策の総合的推進」の2点が、今後の重点事項として掲げられています。言うまでもなく、高齢者の多くは、医療や介護が必要になっても、住み慣れた地域での生活を望んでいます。
こうした在宅高齢者の療養生活を地域で支えるためには、医療機関、介護支援専門員いわゆるケアマネジャー、介護サービス事業者等が連携して、一体的なサービス提供を行うことが必要不可欠であります。
しかしながら、高齢者が安心して在宅療養ができる医療と介護の連携は、未だ不十分です。多忙な医療機関に対して、なかなか気軽に相談できないというケアマネジャーの悩みは、いまだ改善されていません。
従って、医師、看護師、介護職員等が互いの専門分野を理解しあい、意思疎通を図るなど、高齢者を中心とした「顔の見える関係」を構築するための具体的な取組みを進めていくことが大切です。
そこで都は改めて、在宅療養の推進のため各専門分野間のコミュニケーションの核となる人材の育成を強化すべきと考えますが、見解を求めます。
一方、現在約33万人に上ると推計される認知症患者の、医療と介護の両面にわたる支援の体制づくりが急務であります。
認知症では、物忘れなど認知機能の低下や徘徊だけでなく、肺炎など多様な症状への対応も必要であり、かかりつけ医やケアマネジャーなどの様々な“支え手”が密接に情報を共有する仕組みを構築しなければなりません。
都は、高齢者保健福祉計画の「中間のまとめ」において、「認知症疾患医療センター」を、各二次保健医療圏ごとに1か所整備し、地域の医療機関では対応が困難な認知症についての専門診断や、身体合併症を持つ患者の入院受け入れなどのほか、地域における医療・介護連携の推進役とすると定めています。
そこで都は、ますます増大する認知症高齢者の地域生活を支える仕組みづくりを推進するとともに、現在、医学総合研究所で行っているアルツハイマー病DNAワクチン療法の実用化など、認知症の予防や治療法の開発を加速すべきと考えます。見解を求めます。
【外国人介護士の活用について】
次に、介護人材の確保と外国人介護士の活用について質問します。
高齢化社会の進展で、介護や見守りの必要性が一層増加するのに対して、高齢者を支える労働可能人口は長期的に減少する傾向にあります。加えて福祉・介護サービス分野では離職率が高く、厚労省は平成37年には70万人以上の介護職不足が発生すると試算しています。
都は、平成20年度から23年度までの4年間で、8400人の介護人材を育成・確保していくことを目標に掲げ、そのために都福祉人材センターによる就労支援など、様々な取り組みを行っています。さらに都は、国に対して、介護施設で働く人材の定着・確保には施設経営の安定が重要であるとし、さらに介護従事者の処遇改善に直結する介護報酬の地域加算の見直しなどの提案を行い、今回の介護報酬改定に盛り込まれました。
そこで都は、今般の介護報酬改定の効果について検証するとともに、安定的に介護サービスを提供するための人材確保に向けて更に取組みを強化すべきと考えます。見解を求めます。
次に、去る1月29日、インドネシアとのEPAに基づく外国人介護福祉士候補95名が、3年間の実務経験を経てはじめて国家試験に挑戦しました。日本人でも合格率は50%といわれており、国は当初は1回限りとしていた受験の機会を2回に広げたものの、不合格なら強制帰国という理不尽な姿勢を改めておりません。
受験者は母国において大学や専門学校を卒業し、看護師や介護士資格を持っており、過去に受け入れを実現した介護施設では「明るくて親身に接してくれる」「勤勉」などと、評判も極めて良好であります。
グローバル化が進む中にあって、このような優秀な外国人の獲得に日本が消極的な姿勢を続けていては、今後、国際的に優秀な人材は全て他の国に奪われていくことになりかねません。これは大幅な人口減少社会を迎える日本にとって大きな打撃となります。
さらに良質で多様な外国の人材を迎え入れる体制を整え、アジアの将来を担う優秀な人材を育成し、受け入れていくことも国際都市東京の重要な役割であります。
すでに首都大学東京では、EPAで来日した看護師候補者に対する支援にも取り組み、一定の成果をあげていると聞いております。
そこで、かつて東京が待機児童解消のために規制緩和を行って認証保育所を全国に先駆けて設立したように、EPAに基づく看護師・介護福祉士候補者に対しても、都として大胆かつ先駆的な支援を行うべきと考えます。見解を求めます。
【がん対策について】
現在の日本は、2人に1人が「がん」になり、3人に1人が「がん」で亡くなるという、まさにがん大国であり、がんは最早、国民病であると言っても過言ではありません。
都は、平成20年3月に、がん対策推進計画を策定し、今日まで、がん診療連携拠点病院や認定病院の整備、がん検診受診率の向上をはじめ、早期からの緩和ケアの実施、がん登録の拡大などに取組んできました。その結果、現在では、都内に、34か所の拠点病院・認定病院が整備され、最新の放射線治療や化学療法が行われるようになっています。
その上でさらに、都はいよいよ本年7月から地域がん登録を開始すると聞いています。 がんの予防・検診・治療から、緩和ケア・がん登録に至るまでの一貫した流れを構築し、都が総合的ながん対策に取り組んできたことを評価し、一連の対策のさらなる推進を求めたいと思います。
そこで質問の第一は、地域がん登録についてであります。がん登録とは、個人情報を保護しながら、発生したがんの種類、進行度の他、治療方法とその結果などを詳しく登録・分析して、がん対策に活用する仕組みであります。
がん登録の推進により、がん治療の基本的データが充実していけば、がんのタイプや進行度に応じた治療法や治療の予後の対策など、より有効ながん対策を整えていくことが可能となります。地域がん登録の基礎となるデータは、各医療機関からの患者情報であり、地域がん登録を推進するためには、医療機関の協力が欠かせません。
しかし、医療機関は、退院後のがん患者の状況調査を行う際、照会先の区市町村から住民票の照会を拒否されたり、照会費用を請求されたりするなど、情報収集に苦労しています。
また、都単独のがん登録では、他県の医療機関を利用する都民や、都内の医療機関を利用する他県の患者がデータから漏れてしまうという課題があります。
そこで都は今後、地域がん登録を推進していく上で、このような課題を解決するため具体的な対策を講ずるべきと考えます。
また、都道府県を超えた患者情報を収集するため、全国統一のがん登録制度の構築を目指すべきであり、そのため都は、国に対して法制化を強く訴えるべきと考えますが、見解を求めます。
さらに、地域がん登録を進めるには、各医療機関において、医師だけでなく登録票への記載など実務を担う職員の確保・育成が不可欠であります。見解を求めます。
続いて、放射線治療の普及についてであります。先日、我が党は、都立駒込病院を視察し、我が党の提案により新たに導入された放射線治療機器を視察し、国内で最高レベルの治療環境が整ったことを実感しました。
問題は、患者の医療費の負担です。例えば、効果的ながん治療として重粒子線治療や陽子線治療がありますが、保険が適用されないため治療費は300万円前後にも上ります。そこで、駒込病院に新たに導入された放射線治療機器の機能と効果を明らかにするとともに、費用についても保険適用が可能かどうか答弁をいただきたいと思います。併せて、この最先端の放射線治療機器を多摩総合医療センターなどの他の都立病院にも導入すべきでありますが、見解を伺います。
早期発見は最も効果のあるがん対策であり、従って、がん検診の受診率向上が何より重要な課題です。
公明党は受診率向上に向け突破口を開こうと、乳がん・子宮頸がん検診の無料クーポン券の配布や、子宮頸がん予防ワクチンの公費助成を全力で推進してきました。
こうした取り組みの結果、子宮がん、乳がんの受診率は着実に上昇し、効果が明確に示されています。
都は、がん対策推進計画に基づき、平成24年度末までにがん検診受診率50%達成を目指していますが、目標達成に向けさらなる積極的な取り組みが必要であります。
個人への意識啓発と併せ、検診事業の実施主体である区市町村や企業に対し、受診率向上を促すためのさらなる支援策を検討すべきです。見解を求めます。
この項の最後に、緩和ケアについて質問します。日本においては歴史的にモルヒネに代表される医療用麻薬に対する忌避感が強く、緩和ケアが遅れたと言われています。しかし、がん治療の現場からは、不必要な苦痛、痛みを取り除く緩和ケアを行うことによって、治癒率も生存率も高くなるとの報告があります。
また、緩和ケアでモルヒネを使用して中毒になった例はないとも聞いています。従って、緩和ケアが、がん治療の効果を拡大する可能性は極めて高いと考えられます。そこで都は、医療用麻薬を有効に活用するよう医療機関に協力を求めるとともに、患者や家族、都民に周知を図るべきであります。緩和ケアにおける医療用麻薬の普及啓発について、具体的な対策を伺います。
【住宅政策について】
次に、この三月にマスタープランの改訂を予定する都の住宅政策について質問します。
都は、これまで都営住宅の総管理戸数を抑制してきた理由の一つに、都内における民間賃貸住宅の増大を挙げてきました。
しかし、都議会公明党の「住宅政策プロジェクト・チーム」の調査によると、平成20年時点で、家賃3万円未満の都内の民間賃貸住宅は10万戸を超えるものと推定されます。
これは何を意味するかと言えば、これらの低廉な家賃の民間住宅のほとんどが、居住空間が狭いか、あるいは老朽化や、バリアフリー、安全性、快適性などの点で問題があるということであります。現に私も、エレベーターのない民間賃貸住宅に居住する高齢者が、錆びついた急な階段を、日々、買い物や通院に這うようにして昇り降りする光景を目にすることがあります。
さらに家賃7万円未満の都内の民間賃貸住宅は、約84万戸と推定されます。7万円の家賃とは都営住宅の収入上限、すなわち、政令で定める方法で算定した月収が15万8千円未満の世帯にとって、支払い可能な家賃の上限とされる額です。民間住宅で7万円の家賃といえば、おそらく3DKの住宅に住むことは不可能であり、子ども2人の標準世帯の住宅としては全く不適切です。
つまり、都内において民間住宅の供給が需要を上回っていると言っても、その実態は、劣悪な賃貸住宅が依然として数多く存在し、全ての都民に快適で安定した住居を保障するという状況には未だ程遠いということであります。
居住の安定こそが、全ての行政サービスの基盤であり、ベースであると我々は考えています。かつて、国や自治体の住宅政策においては、低廉な家賃の住宅を供給するだけではなく、良質な公共住宅を供給することによって、民間の賃貸住宅の水準を向上させることも大きな政策目的としていたはずであります。
改めて、都の住宅政策の中で公共住宅の良質な水準を維持し、併せて、民間賃貸住宅の実態把握に努め、その水準の向上に努めるべきと考えますが、都の見解を求めます。
一方、この数年の毎回の都営住宅の募集では、世帯向けで約5万件、単身者向けとポイント募集では、それぞれ1万数千件ずつの申込みがあります。抽選倍率は30倍から50倍と高い一方で、当選後に収入面で失格する事例は殆どありません。
つまり、申込者の大半が、都営住宅に入居できる資格を有し、現にその必要性にも迫られながら、入居できない状態が何年も続いているということであります。
高齢化や単身世帯化が進み、同時に、景気後退や雇用形態の変化による低所得化が深刻になっています。住宅セーフティネットとしての都営住宅の必要性は高まる一方で、少なくても今後の十数年間は、同様の状況が続くと考えられます。
その意味で、老朽化した都営住宅の建替えに際しては、従前戸数の確保を図るとともに、新規募集を行うための増戸も必要に応じて行うべきです。都は、当面の間、都民福祉に果たす都営住宅の役割を重視して、その柔軟な運用を図るべきと考えますが、見解を求めます。
都はこれまで、廉価な費用で入居できる賃貸住宅の供給など、住まいに関する高齢者の負担を軽減するため、様々な施策を講じてきました。民間住宅における「あんしん居住制度」もその一つであります。
しかしこの制度の利用は、10年間で492件と伸び悩んでいます。その理由の一つは、入居時に支払う本人死亡時のための準備金50万円にあります。これは入居者の万一の場合に備え、葬儀費用や遺品の整理費用に当てるためのいわば保証金のようなものですが、この負担が利用を阻む原因であり、見直しが必要です。
利用を促進するためには、金額を低く抑え、同時に割賦払い制を導入する必要があります。高齢者の居住の安定のため、早急に検討すべきと思いますが、見解を求めます。
住宅関係の質問の最後に、住宅政策に取り組む体制整備について伺います。
今回の改訂素案では、民間賃貸住宅の空き家活用策としての、ルームシェア用のリフォーム助成や、大都市特有の課題であるマンション問題に関しても、様々な取組みを打ち出しています。
これらの制度は、我が党が求めてきたものであり、高く評価しますが、これらを実効性のある施策に高めていくためには相当の困難が伴います。
従って重要なことは、都単独で取り組むのではなく、区市町村にも協力を呼び掛け、分かりやすく役割分担を説明して、協働で施策の構築と展開に取り組む体制を整えるべきであると考えます。見解を求めます。
いずれにしても今後は、都の住宅政策部門の強化が不可欠であります。改めて、近い将来の住宅局の復活など、体制の強化を求めたいと思いますが、見解を伺います。
【教育問題について】
続いて教育問題。都立高校生の中には、世界に目を向けて、広範な学習に意欲を持っている生徒がいる一方、いじめや不登校から立ち上がり、ぎりぎりの思いで通学している生徒など、様々な子どもたちが存在します。
高校時代は、人生の中で感受性の豊かな時期にあたります。この時期に経験したことは、その後の長い人生の中で大きな意味を持ち、それだけに、この時期の教育は重要であります。
そこでまず、都の次世代のリーダー育成について質問します。
一般的に、若者たちが内向き指向にあると指摘されている中で、都が積極的に留学支援を行い、長期的な人材輩出を心がけていくと表明したことは、高く評価します。そこで、その支援策の具体的な内容を明らかにすべきであります。
また同時に、多くの生徒が世界に目を向け、留学の意義を自覚することも大事です。
そのためには、高校生や都民に留学の成果を分かりやすく、具体的に伝えるためのフォーラムの開催や、海外留学経験をまとめた冊子を発行するなど、その魅力と効用をアピールする必要があると思います。所見を伺います。
【チャレンジスクールの進路未決定者】
次に、チャレンジスクールの進路未決定の生徒への対応について質問します。
都教育委員会は、生徒の多様なニーズに応え、魅力ある学校づくりを進めるため、平成9年に「都立高校改革推進計画」を策定し、これまで総合学科高校やエンカレッジスクールの設置などを推進してきました。
その中でも、我が党がその必要性を強調してきた、不登校や中途退学の生徒等を主に受け入れるチャレンジスクールは、入学者選抜の応募倍率が毎年高倍率になるなど、特に高い評価を得ていますが、一方で、進路が決まらないまま卒業する生徒が多く存在していると聞いています。
先日、都教育委員会は、新たな「都立高校改革推進計画」を策定しましたが、チャレンジスクールの生徒に対し、学ぶことや働くことの意義を理解させ、卒業後の進路につなげていく教育が必要であると考えますが、見解を伺います。
【盲ろう者支援対策について】
次に、盲ろう者支援について質問いたします。我が党が長年要望し、知事の英断で実現した「東京都盲ろう者支援センター」は、2009年5月の開設から、今年で3年を迎えます。利用者も年々増加傾向となっており、センターの役割の重要性が窺がえます。
都内にはおよそ2,300人の盲ろう者の方がおられると聞いておりますが、一方で都の通訳・介助者派遣事業に利用登録している人は、わずか100人程度であり、音もなく光もない中で、一歩も外にも出られず、孤立した生活をおくる盲ろう者が少なくないのが実態です。以前、相談を受けた事例では、後天的に視覚と聴覚を失い、金融機関での職も失い、親ともコミュニケーションがとれず、長年、部屋に閉じこもったままというケースがありました。一人でも多くの人を支援センターに繋げるには、身近な窓口となる区市町村の対応が最も重要です。
荒川区では、区の職員と盲ろう者支援センターの職員がペアを組んで対象者を個別訪問し、生活相談を受けたり、生活状況を把握する事業を開始しています。このような支援の手が必要な人に届くよう区市町村との連携を強化すべきと考えますが、見解を求めます。
一方、アメリカには、盲ろう者のためのリハビリセンターとして、国立の「ヘレンケラー・ナショナルセンター」があり、対象者に応じた訓練が受けられます。自らも盲ろう者である東京大学先端科学技術研究センターの福島智教授は、長期に渡ってアメリカに滞在し、このヘレン・ケラー・センターに通い、アメリカにおける盲ろう者支援の取り組みについて調査・研究されたと聞いております。
その研究成果なども伺いながら、盲ろう者支援に一貫して取り組んできた我が党として、国に対し「日本版ヘレン・ケラー・センター」の設置を強く働きかけたいと決意しております。国に先行して取り組みを開始している都としても、国にナショナルセンターの設置を強く求めるべきと考えますが、見解を伺います。
【自転車政策について】
先般、都は、我が党の提案を受けて設置された自転車総合政策検討委員会の報告書を公表しました。行政はもとより、自転車利用者や民間事業者の責任を明確にし、関係機関相互の連携体制を整備するなど、社会全体で自転車対策を推進するとの基本的な考えは、我が党の主張に沿ったものです。
特に利用者の責任を明確にするための防犯登録データの改善や、エリア内での走行空間のネットワーク化に向けた調整の仕組みを打ち出したことを評価します。防犯登録制度は、盗難被害の回復を目的として、「自転車法」で設けられた制度ではありますが、自転車の適正な管理や安全な利用について、利用者の責任と自覚が求められている中にあっては、同制度を活用し、車両の所有者としての責任を問うべきであると考えます。
そこで都は、国に先駆けて、自転車の所有関係を明確に反映できるよう制度の改善を行うべきです。 見解を伺います。
また、自転車走行空間の整備に当たっては、バス、タクシー、トラック業界など多様な業界の合意と協力が不可欠です。これらの関係者や自転車利用者、また、保険業界なども加わった新たな検討の仕組みを構築すべきです。
さらに、今回の報告書を単なる理念の宣言に終わらせず、実効性ある施策につなげいて行かなくてはなりません。そのためにも、我が党が一貫して主張してきた「東京都自転車条例」の制定が必要と考えます。併せて都の見解を伺います。
【暴力団排除条例について】
最後に、暴力団排除条例について質問いたします。
昨年10月、東京都が暴力団排除条例を施行したことにより、47都道府県すべてにこの条例が適用されることになりました。この条例は、企業や一般市民に暴力団と付き合わない、利益を提供しないということを強く求めています。そこで当初から危惧されていたことは、追い詰められた暴力団関係者からの報復行為です。
報道によると、昨年11月には、暴力団と関係を断とうとした企業経営者が射殺される事件が発生。また、本年1月にも、建設会社の社長が銃撃される事件が起き、昨年から今年にかけて同様の事件が28件に上っているそうです。しかも犯人逮捕は2件のみで、証拠の乏しさが事件の解決の障害になっているといいます。
暴力団排除条例の成否は、暴力団との関係を本気で断とうとする企業や一般市民を警察力で安全に守り抜けるかどうかにかかっています。暴力団排除条例の本来の目的を達成するために、企業、一般市民の徹底した保護対策を実行すべきであります。警視総監の見解を伺い、私の代表質問を終わります。