1970年に世界有数のシンクタンク・ローマクラブがマサチューセッツ工科大学に委託し、とりまとめたリポート「成長の限界」は、「世界人口、工業化、汚染、食糧生産、および資源の使用の現在の成長率が不変のまま続くならば、来るべき100年以内に地球上の成長は限界点に到達するであろう」と警告し、持続可能な地球環境と経済的な安定性を目指すべきと提言しています。
またその20年後、1992年に取りまとめたリポート「成長の限界 限界を超えて」においては、食料生産量、エネルギー消費量、工業生産量を減少させないためには、第一に物資の消費や人口を増大させるような政策や慣行を広範にわたって改めること、第二に原料やエネルギーの利用効率を速やかにかつ、大幅に改善すること、という二つの変化を要求しています。
そして持続可能な社会を実現するには、単なる技術開発ではなく、産業構造システムの構造改革が必要であると結論づけています。これらの課題は、まさに今、日本社会が直面している課題そのものであり、このことを克服しない限り日本の経済成長は見えてこないのであります。そこで、こういった課題を踏まえながら、都政の喫緊の課題について以下質問いたします。
【製造業の空洞化対策について】
日本の製造業の海外移転という潮流は、止まるどころか加速をしています。経済誌の論評では「日本で作った部品を海外で組み立てて納めるというモデルは崩壊した」とまで言われております。製造業が急成長するアジアの諸外国と対等に競争しようとしても労働規制や法人税、さらには電力価格などの障壁が大きく立ちはだかっています。
その上に急激な円高が進み、製造業は何重苦にも陥っています。例えば、電力料金一つとっても、日本の月額基本料は、アジアの新興国の2倍〜4倍の料金を支払わなければならず、このことが、コストに跳ね返り、円高と相まって、価格での競争にどうしても負けてしまうとのことです。従って、製造業は海外に生産拠点を移さないと生き残れないというのが現実であります。
こういった中、ある製造業の会社は、海外に生産拠点を移し、海外で稼いだ資金を日本に還流させ、研究開発やそれに伴う量産試作で国内の雇用を生み出そうと努力をしています。具体的には、研究開発に携わるエンジニアを増やした結果、ほぼ同数の新たな工員が量産試作で必要となるなど、新たな雇用に結びついております。
また、山形県のある繊維製造会社は、付加価値の高い繊維製品を作ることによって、海外での見本市で評価され、今では欧米など世界各国を相手にビジネスが進み、それまでの新卒者がほとんど来ないという環境が一変し、全国の大学から新卒者がこぞって入社するまでになっています。
そもそも、日本の経済成長は、貿易の波及効果で成り立ってきました。製造業が生み出す経済効果や雇用創出力は極めて大きいものがあります。今後日本の製造業は、海外の生産拠点で儲けてその資金を国内に還流させ、研究開発や量産試作で雇用を生み出すとともに、付加価値の高い製品を作って世界で勝負するといった選択を行っていくべきであります。
都は今後、このような選択をして、景気浮揚にも国内雇用の拡大においても貢献しようとする製造業者に対しては、集中的に支援策を講じるべきと考えます。知事の見解を伺います。
【中小企業支援策について】
都内中小企業の業績状況の動向は、3・11震災直後に急激に低下し、その後、改善の兆候が見えたものの、再び低下をしてきています。
都議会公明党は、11月24日に「厳しい経済環境と都民の雇用不安への対応を求める緊急要望」を行いました。
年末もおし迫る中、長引く不況と円高や震災被害の余波に苦しむ都内の中小企業の経営を支えるため、都は、一層資金繰り支援策を拡充させるほか、その利用促進に向けて、相談体制などの取組みを強化すべきであります。見解を求めます。
ある中小企業の経営者は、「経営に行き詰まり、新たな事業展開の発想をもって、東京都中小企業振興公社を訪ねたところ、専門家派遣事業を通じて、中小企業診断士を紹介され、経営課題を克服する方策が見えてきた」と喜んでおられました。
不況に苦しむ中小企業には、資金繰り支援を拡充するほか、こうした経営課題を根本から改善していく道筋を専門家が助言してくれることが、求められています。
都の相談事業では、経営課題の解決までに平均して8回程度の専門家の派遣が必要と聞きます。こうした支援の提供を望む都内の中小企業は、今後、数十ではなく数百にも及ぶものと考えられます。そこで都は、経営相談の専門家派遣事業を大きく拡充すべきであります。見解を求めます。
【雇用就業対策について】
定例会初日の所信表明で知事は、年末に向けて、福祉保健分野での官民連携の新たな緊急雇用を表明しました。
しかし、雇用対策はこうした取組みに加え、非正規労働者の正規雇用化と、新卒者の雇用確保という2つの難問に対し、現場を持つ都の強みを生かして、真正面から対策を講じるべきであります。
まず、非正規労働者の正規雇用化についてであります。
直近の国の労働力調査によれば、昨年の労働者に占める非正規労働者の割合は34・3%で、データ比較が可能な平成14年以降、過去最高となりました。有為な人材を求める都内の中小企業が多くある中で、非正規労働者が増加する理由の一つが、大卒者の「大企業志向」であると言われております。
多くの学生にとって、中小企業への就職は、生涯を通じた賃金不安から、二の足を踏んでいるというのが現実ではないでしょうか。
我が党の主張を受け、都はこれまでも、カウンセリングから仕事探し、就職後のフォローまで、早期に正社員としての就職を希望する人を継続して支援する取り組みを進めてきましたが、問題の根本的な解決にはより一層の取組みが必要です。
これまで都は、求人求職のミスマッチを解消するため、産業労働局を中心に様々な対策に取組んできました。今後は、中小企業で働くことに対する賃金不安、具体的には、住まいや子どもの教育・仕事と育児の両立などを総合的に支援するパッケージを構築することが不可欠と考えます。
そのためには、各局横断の取組みが必要であります。知事の見解を伺います。
新卒者の就職支援も重大な課題です。
新規就職時に非正規だった人が不遇なままで人生を終わることを、欧米では「Bad Start, Bad Finish」と言うそうですが、これを何としても「Good Finish」に転換する施策展開が必要であります。
この秋、公明党青年局が全国規模で実施した「若者雇用実態調査」では、極めて困難な就職活動の実態が浮き彫りになりました。
3人に一人が非正規職と言う実態を、これからの取り組みで転換するためには、まずは、即効性ある支援策として、「新卒特別応援窓口」の大幅な拡充を進めると共に、その窓口において学生の適性を見極め、適所に就職ができるようカウンセリング機能を持たせるべきであります。都の見解を求めます。
【精神障がい者の雇用対策について】
都はこれまで、都独自の東京ジョブコーチ支援事業などを通して、精神障がい者の特性に対応した支援を講じるなど様々な取組みを展開してまいりました。ところが、都の職員採用においては、身体障がい者の正式採用は行われていますが、知的や精神障がい者の採用は行われていませんでした。
そのため、我が党は、知的や精神障がい者の採用を実施するよう提案し、都は、6か月間のチャレンジ雇用を開始しました。しかしながら、障がいを持った人にとっては期間があまりにも短く、長期間働くことを望む強い声があります。都は、長期就労を視野に入れて知的や精神障がい者を採用するべきであります。見解を求めます。
精神障がい者については、過渡的雇用も重要です。我が党は、先日、精神障がい者の自立支援施設を視察しました。その施設では、民間企業と契約を結び、約1年にわたって実習する「過渡的雇用」を実施しています。
これは、精神障がい者にジョブコーチが付き添って働き始め、一緒に働く中で適性を見極めるもので、この施設では過渡的雇用により、昨年度までに42人の内、27人が一般就労を果たしています。
そこで都は、就労支援機関と連携し、過渡的雇用など、本格採用する前の段階にも東京ジョブコーチを活用すべきと考えます。見解を求めます。
一方、東京ジョブコーチは、定期的に研修を受け、スキルアップを図っていますが、その知識・スキル等には相当格差があり、特に身体・知的・精神障がいの三つに対応できる知識・スキルを持っている人は少ないといわれています。そこで、東京ジョブコーチについて、3障がいにバランスよく対応できるようそのスキルの向上を図るべきと考えますが、見解を求めます。
都はこれまで、就労を求める障がい者の立場から取組みを進めてきました。今後は、それに加え、企業経営と障がい者雇用の融合を促進するため、精神保健福祉士やキャリアカウンセラー等の有資格・経験者を企業に派遣するなど、障がい者の採用を検討している企業に対する支援を強化し、障がい者の働きやすい雇用の場の創出を図るべきであります。見解を求めます。
【エネルギー政策について】
東日本大震災は、福島第一原子力発電所など発電施設に甚大な被害をもたらし、国の対応策も迷走した結果、東京都はかつてない電力危機に直面いたしました。電力消費が増える真夏や真冬の節電対策とともに、今後、エネルギーを安定的かつ長期的に確保していくために、抑制と供給の両側面から具体的な取組みをしなければなりません。
その第一は、経済成長と両立する省エネ施策の推進です。国は、公明党の提案を受け、省エネ家電のエコポイント制度を導入し、経済成長と省エネの両立を可能にしました。
他方、都は、かねてから地球温暖化対策として事業所などに新たな省エネ設備の導入を促進してまいりました。
そこでこれまでの都の取り組みを集約し、無理のない賢い省エネ対策や模範となる事例を、各家庭や事業所に周知し、省エネ生活を推進する都民ムーブメントを展開していくべきであります。見解を求めます。
【スマートグリッドの導入について】
第二は、エネルギー需給の最適化に向けた取組みであります。
都議会公明党は、第2回定例会の代表質問で、発電や電力消費の状況を情報技術によって把握し、制御することで効率のよい電気の流れを実現する次世代送電網であるスマートグリッドの導入を早急に検討すべきと求めました。
これを受け、このたび都がオフィスビルなど業務系施設の集積地域である大手町、丸の内、有楽町において、スマートグリッド導入に向けた基礎調査に着手したことは、先駆的な取組みとして評価いたします。
一方、電力消費の約3割を占める家庭においては、電力会社から電力使用のピーク時間に関するデータが提供されないため、節電インセンティブが働きません。
公明党は先日、北九州市のスマートコミュニティ創造事業を視察しました。そこでは集合住宅の家庭におけるスマートメーターを活用した需給コントロールが可能となるなど、快適で利便性の高いまちづくりを目指していました。そこで、都内の住宅の約7割を占める集合住宅においても、スマートな節電を継続できるよう、電力使用量の見える化と需給の最適化を図る取組みを進めるべきと考えますが、都の見解を求めます。
最近、首都圏では、大規模マンションの入居世帯を対象に、スマートメーターを設置するとともに時間帯別料金を導入し、昼間の電力使用量を抑制したユーザーがメリットを得られる「ディマンド・レスポンス・サービス」を開始しております。
そこで、マンション等の新規開発時におけるエネルギーマネジメントの実施と併せて、こうした節電インセンティブが働く仕組みについても、都として導入を誘導すべきと考えますが、見解を求めます。
【火力発電の高効率化について】
第三には、火力発電の高効率化についてであります。
原子力発電の依存度を減少させ、安定的な電力供給を実現するためには、再生可能エネルギーを促進するとともに、当面、環境負荷の少ない高効率な火力発電に転換していくことも重要であります。
都議会公明党は、先月、東京電力の品川・大井火力発電所を視察しました。このうち、品川火力発電所は、都市ガスを使用し、ガスタービンで発電した後の排熱で蒸気を作り、蒸気タービンで再度発電するコンバインドサイクル発電機3基で合計114万kwもの電気を生みだしていました。発電効率は55%を超え、天然ガスを使用した最新の川崎火力発電所では、約59%の発電効率でした。
他方、大井火力発電所は、老朽化し、発電効率も40%と低く、コンバインドサイクル発電へ改良・更新していく必要があります。
安定した都民生活や経済活動の維持強化のためには、地産地消のエネルギー創出が不可欠であります。そのためにも、老朽化した発電所を低炭素で、高効率のコンバインドサイクル発電へリプレースすることを、都が積極的に後押しすべきであります。見解を求めます。
【震災がれき処理について】
被災地に対する都の支援について何点か質問いたします。
被災地の復旧・復興はいまだ道半ばであり、大きな課題となっているのが、震災がれきの広域処理の問題です。
岩手・宮城両県の震災がれきは、両県の一般廃棄物の10年から20年分に相当し、県単独での処理は不可能と言われております。このため、国の責任で県内処理される福島県を除き、両県の分は県外の自治体に委託する広域処理が急務となっております。
こうしたなかで都は、我が党の緊急要請もあって、本年5月、今後3年間で岩手、宮城両県の震災がれき50万トンの受け入れを表明しました。既に受け入れた岩手県宮古市からの1千トンに加えて、さらに宮古市から1万トン、また、都内区市町村の協力のもと宮城県女川町からの10万トンが決まっております。
都の広域処理を着実に実行していくには、都民の十分な理解と協力が不可欠であります。そのためには、がれきを受け入れる際の自治体の選定基準、焼却や埋め立ての体制、放射線の測定と公表など、処理計画の内容を具体的に示すべきであります。
また、放射線への不安を払しょくするには、測定体制や埋め立て状況等を目に見える形で広報すべきであります。併せて都の見解を求めます。
一方、全国では、がれきの放射性物質の安全確認、自治体への情報提供など、後手に回った国の対応のまずさによって二の足を踏む自治体が続出しています。
震災がれきの広域処理を東京から全国に広げていくために、都がこれまで培ったノウハウを積極的に提供し、国に対して多くの自治体が協力しやすい環境を整備するよう求めるべきと考えます。知事の所見を伺います。
【被災地応援ツアーについて】
我が党が被災地を調査した際、被災各県が観光立県であることから「多くの都民が観光に来て欲しい。そのため、東京都が旅行者にインセンティブを与えてもらいたい」と経済団体から強い要請がありました。
そして、このことを知事に緊急要望し、知事は前向きに取り組むことを約束、実現に至ったのが被災地応援ツアーであります。事業規模についても、当初、1泊2,000円の助成で25,000人分であったものを、知事の英断により、1泊3,000円の助成で50,000人分に大きく拡大いたしました。
被災各県の経済団体や観光団体も大変喜んでくださり、8月には福島県の旅館のお女将さんたちが、福島県の副知事と一緒に都庁と都議会に御礼の挨拶に見えました。
この事業の期間は、9月から来年2月までの予定でしたが、大変に好評で大手旅行会社においては、10月末で完売したところも出ています。ただ、福島県については、風評被害もあいまって、いまだ観光産業にとって厳しい状況が続いており、福島県のこうした状況を勘案して、来年度も被災地応援ツアーを継続すべきであると考えます。都の見解を求めます。
【被災者支援策について】
現在、都内では約9000人の避難者が生活しています。このうち福島県からの避難者は7000人を超え、避難生活は長期化する様相を見せています。避難者の孤立化が心配され、それを防ぐ手立てとして、避難者と地域、避難者相互の交流を促進させることが重要であります。
都は区市町村や社会福祉協議会などと連携して、避難者への各種支援や交流事業などを展開していますが、必ずしも避難者が主体者となって交流できる状況になっていません。そこで都庁の展望台や都民広場などに、被災者自らが運営する広域的な交流サロン機能を設け、被災地を支援する特産品の物販機能も持つシンボリックな取り組みを行うべきであります。見解を求めます。
また、被災者の方々は就労も難しく、都内での避難生活は厳しい状況に置かれています。これから本格的な冬に向かいます。このような状況を踏まえ、被災者へのさらなる生活支援を推進すべきと考えますが、見解を求めます。
【女性の視点からの防災対策について】
公明党は、この度、地方自治体の防災担当セクションに対する聞き取り調査「女性の視点からの防災行政総点検」を実施しました。
その中で、半数の地方自治体において、地方防災会議に女性が登用されておらず、防災対策の策定に女性の意見が反映されていない実態が明らかになりました。
今回の震災で、避難所における女性のニーズの把握やプライバシーへの配慮が不十分だったとの報告もあり、女性の特性に配慮した防災対策を講じていくことが必要であります。
また、9月28日に発表された中央防災会議の専門調査会の報告によると、岩手・宮城・福島の3県では、高齢者の犠牲者が、多かったという事態が明らかになっています。
避難生活を送る高齢者の中には、介護支援施設やケアマネージャーらも被災し、まったく介護サービスを受けられなくなった事例もあります。
都は、防災対応指針の策定を受け、地域防災計画の修正に取り組んでいくとしていますが、災害時に援護の必要な人や女性の意見をしっかりと聞き、反映させていくべきであります。都の見解を求めます。
【帰宅困難者対策について】
東日本大震災では、都内で350万人以上の方々が帰宅困難者となりました。もし、首都直下地震が昼間発生した場合、さらに多くの都民が、途絶する交通の影響により、都内に取り残されると想定されています。
こうした人々の安全を確保し、加えてけが人の救出・救護、消火活動の円滑な展開のためにも、膨大な帰宅困難者の発生を抑える必要があります。
そこで、発災時に、様々なメディアを通じて、帰宅しないことを求めるメッセージを迅速に発信し、企業などに協力を要請することが必要であります。この責務を担うのは知事であります。
また、知事は企業による災害支援物資の備蓄を促す条例の制定を表明されておりますが、一斉帰宅の抑制から一時待機施設の確保、物資の備蓄まで、一貫した取組みを条例に盛り込むべきであります。総合的な帰宅困難者対策に取り組む知事の見解を伺います。
都はこれまでも、駅前滞留者対策訓練を実施してきましたが、駅前協議会を立ち上げた初年度までは都が関与するものの、その後は各地域の主体的な取り組みに任せてきました。しかしながら、3・11の大震災当日の混乱を見た場合、都は各地域の取り組みだけに任せず、一斉帰宅の抑制、一時待機施設の開設、鉄道の運行状況の把握など、発災時の具体的な対応を検証するために、実践的な訓練を通じて、実効ある帰宅困難者対策を進めるべきであります。見解を求めます。
【ITS技術の活用について】
災害時における、道路の寸断は、救援活動を遅らせる原因の一つです。そこでITS、インテリジェント・トランスポート・システムの活用について質問します。
ITSとは、最先端の情報通信技術によって、渋滞解消や事故発生の抑制などを目指す、新しい交通システムであります。
今回の東日本大震災では、長年の課題であった、移動中の車両から発信される走行地点情報の統合が、自動車メーカーの壁を超え、世界で初めて実現されました。これにより、被災地内で通行可能な道路情報の迅速な把握が可能となり、救援隊の移動や救援物資の輸送に大いに役立ったと聞いております。
一方、土木学会と電気学会による東日本大震災の調査団は、緊急提言の中で震災当日に東京で発生した大渋滞に言及し、発生のメカニズムの解明を急務の課題と指摘しています。
2013年には、ITS世界会議が東京で開催されます。日常の渋滞緩和に加え、東日本大震災を経験した日本、とりわけ東京のITS技術の進展がもたらしうる災害対策が、世界の注目を集める機会となります。
都は今後、都内の産業界に加え、大学などの研究機関とも連携して、ITS技術の災害時の交通対策における活用を検討すべきと考えます。見解を求めます。
【クラウド化対策について】
尚、東日本大震災により、被災地の市町村では、庁舎にも甚大な被害が及び、戸籍データ等を消失する事態に陥りました。また、昨今では、サイバー攻撃の危険が急激に高まりつつあり、行政の持つ電子情報のセキュリティ強化が改めて求められております。
行政が保有する情報資産を守るためには、都や区市町村のシステムを災害やサイバー攻撃に強い外部のデータセンターに集約する必要性が高まっております。都は、ネットワーク経由でソフトの共同利用やデータの保管などができるクラウド・コンピューティングの活用を都内区市町村と連携し取り組むべきであります。見解を求めます。
【改正障害者基本法】
本年7月、障がい者と健常者の共生をめざす「改正障害者基本法」が成立し、8月に施行されました。これは2009年に公明党がまとめた同法改正の骨子案を基に、政府と与野党が修正協議を重ね、全会一致で成立したものです。
本改正では、国や自治体に、障がいの程度や生活事情に応じた防災・防犯施策を講じることも義務付けられました。これは東日本大震災で、耳が不自由な人が防災無線を聞けずに逃げ遅れるなど、障がい者への情報の伝達がうまくいかなかったことなどを踏まえて盛り込まれたものです。
都議会公明党はこれまで、障がい者が災害や不測の事態に遭遇し助けを求めたいときに、周囲の人が気付き、支援しやすい環境を広域的に整えるよう、再三求めてきました。
障がい者の就労、社会参加が進む中、これまでにも移動中の障がい者の方々が、災害や事故などによる交通ダイヤの乱れなど、普段と異なる事態に遭遇して、パニックになったり、迷子になるなどの事例がありました。
現に3・11東日本大震災の時には、翌朝まで続いたターミナル駅などでの帰宅困難者の列には、障がいを持った人も少なからずおり、本人だけでなくご家族も大変辛い思いをされたとの話も聞いております。
「改正障害者基本法」が施行された今こそ、災害時に障がい者が支援や情報を求めたい場合には、社会全体で支援できるよう、「ヘルプカード」の拡充とともに、支援のためのガイドラインを作成し、広く周知すべきと考えます。見解を求めます。
【災害弱者対策について】
東日本大震災では被災地で聴覚障害者が必要とする手話通訳者が不足しました。都は手話通訳者派遣の支援を行ってきたと聞いていますが、都が被災地になった時には支援を受けねばならず、その態勢を万全にしておかなければなりません。
障害者基本法の改正では、言語としての手話が法律の中に初めて盛り込まれ、意思疎通の手段として手話を選択できる機会の確保と拡充が図られることとされました。法改正も踏まえ、聴覚障がい者に対する災害時の情報バリアフリーの取り組みをさらに推進すべきと考えますが、見解を求めます。
一方、視覚障がい者に対する対応としては音声による案内装置の積極的な活用が有効であります。都議会公明党はこれまで本会議質問で、鉄道・都庁舎・都立公園・スポーツ施設などの公共施設に視覚障がい者用の音声案内装置を整備すべきと主張してまいりました。都営地下鉄や都庁舎への音声案内装置の導入は徐々に進んでいます。
都立公園は、大規模災害時に防災公園として避難場所にも位置付けられていることもあり、音声案内装置は必要であります。視覚障がい者のため、都立公園の「誰でもトイレ」への音声案内装置の整備を早急に推進すべきと考えますが、見解を求めます。
【パーキング・パーミットについて】
近年、障がい者用駐車スペースの整備が進んでいますが、せっかく設置された専用スペースに健常者が駐車してしまうことも多く、本来の利用者が使用できない事例が後を絶ちません。
その対策の一つとして、全国的に広がっているのが、パーキング・パーミットです。
この制度は、身体障がいや難病また高齢で歩行が困難な方、けが人や妊産婦など一時的に歩行が困難な方に対して、共通するパーキング・パーミット、すなわち障害者用駐車場利用証を交付することで、専用駐車枠を利用できる人を明らかにし、駐車スペースを確保する制度です。
都議会公明党は先日、山口国体の後に行われた「全国障害者スポーツ大会」を視察しましたが、競技会場の外でも、障がい者用駐車スペースの適正な利用が守られていました。
都においても、「スポーツ祭東京・2013」に向けて、こうした制度を早期に取入れることで、障がい者支援に関する都民の理解が一層深まるものと考えます。
そこで、すべての人が障がいの有無に関わらず、共生した社会を構築していくため、都内のバリアフリーを一層進めるとともに、パーキング・パーミット制度を導入すべきであります。見解を求めます。
【障がい者スポーツ振興について】
スポーツ祭東京2013は国民体育大会と全国障害者スポーツ大会を初めて一体として開催し、ユニバーサルデザインを意識した今までにない大会運営を目指しています。
障がい者スポーツの振興は、障がい者の社会参加や自立促進を図る上でも大きな効果が期待されています。そのためには、障がいの有無を越えて、だれもが、いつでも、どこでも取り組める競技の普及が必要です。その点、今注目を集めているのが「卓球バレー」であります。「卓球バレー」は、視覚、聴覚、肢体不自由等様々な障がいの方が参加できるスポーツで、1チーム6名で卓球台を取り囲むように座り、金属球の入った音の出るボールを3打以内で返球するゲームです。
全国障害者スポーツ大会・山口大会でもオープン競技として採用され、私も大会前日には、障がい者の選手の皆さんと競技を楽しみ、都が目指す障がい者スポーツのコンセプトに合致する競技であることを実感しました。
都は現在、我が党の要請に応えて障害者スポーツ計画の年度内の作成・公表に向けて取組んでいます。卓球バレーなどのように、障がいの有無や障がいの種別を越えて取り組めるスポーツの普及などを通して、都内の障がい者スポーツの本格的な振興を図るべきと考えます。スポーツ振興局の見解を求めます。
障がい者スポーツの若年層の拡大を図るためには、都立の特別支援学校での普及啓発が大切です。体育活動を充実させるためにも「卓球バレー」のような活動を積極的に取り入れるべきであります。教育庁の見解を求めます。
【特別支援学校への移動支援さくについて】
都立肢体不自由特別支援学校には、医療的ケアを必要とする障がいが重い児童・生徒のために「在宅訪問教育」制度があります。障がいが重い児童・生徒を育てる保護者の中には、教員が自宅を訪問して学習指導を行ってくれることに感謝しながらも、一方でわが子の体調に応じて、学校に通学させてより多くの友達や先生との関わりの中で教育を受けさせたいとの願いもあります。
しかし、保護者が運転免許をもっていない、あるいは福祉タクシーの利用に関する支援において区市町村ごとに隔たりが大きいなどの理由により、そうした願いが叶わない地域差に苦しんでいます。
そこで、まず都教育委員会は、医療的ケアが必要で訪問教育をうけている児童生徒の心身の状況や保護者の通学に関する意向を改めて把握すべきと考えます。また、医療的ケアを必要とする児童・生徒の通学手段の確保については、区市町村や保護者、医療関係者との連携を踏まえた取組みが必要と考えます。併せて教育庁の見解を求めます。
【自転車政策について】
東日本大震災後のガソリン不足等により、自転車を利用する人が増加してきています。
自転車は、誰でも乗れるという利便性の反面、最近では、歩道上や交差点での歩行者に対して自転車が加害者となるケースが顕在化し、高齢者、障がい者などの交通弱者が犠牲になるケースも出てきています。従って、ブレーキのないピスト自転車や夜間に無灯火で車道を逆走するケース、飲酒運転など悪質な法律違反は厳しく取り締まるべきであります。
そのような中、去る10月25日に警察庁より「自転車総合対策」が公表されました。同対策では、自転車の車道走行が徹底されており、都民からは歩道から自転車を全て降ろす大転換が図られ、自転車の歩道走行が厳しく取り締まられるのではないか、との不安の声や、車道上での自転車走行レーンが充分に整備されていない中、自転車が車道を走行することで、自転車と自動車の事故が増えるのではないかとの声が多く寄せられております。
具体的には、保護者が幼児を乗せて自転車を運転する時や車道に駐車車両がある場合、車道の幅員が狭い場合などの走行方法です。原則として自転車は車道を走行すべきとは思いますが、このような場合の走行方法について、警視庁の見解を伺います。
また、自転車が本来の車道を安心して走行できるように車道上の自転車走行レーンを積極的に整備していくべきであります。今後の都道における自転車走行レーン整備への取組みについて、都の見解を求めます。
我が党は自転車の取り締まり強化のみならず、自転車走行空間の整備をはじめ、事故を起こした場合の保険制度など、一貫した自転車条例の制定を求めてきました。最近のこういった状況を鑑みて、条例制定の取組みを一層加速すべきであります。都の見解を求めます。
【公会計制度改革について】
我が党が提唱し、知事が決断をして、都が全国に先駆けて導入した複式簿記・発生主義会計を活用して、平成23年度の予算編成において、210億円もの財源を捻出したことは、国が仕分け人の一方的な主観により事業仕分けを行い、結果的に「絵に描いた餅」になってしまっていることと比較すると、大いに評価されるべきであります。
我が党はこうした成果を広く全国に発信していくことを求めてまいりました。都はこれに応えて、「公会計改革白書」を作成・公表するほか、「公会計制度改革シンポジウム」を開催するなど、全力で普及・拡大に取り組んでいます。特に、大阪府は知事が直接、橋下前知事にアドバイスして、導入を決めたものであり、知事のリーダーシップに敬意を表します。
また、今般、大阪府に続き、愛知県、新潟県が複式簿記・発生主義会計による新公会計制度の本格導入を表明するなど、広がりを見せ始めています。基礎的自治体でも町田市が導入を決め、都も積極的に応援する中、今は会計システム等の最終的な詰めを行う段階と聞いております。
一方、総務省は、全国の自治体に対して「基準モデル」と「改訂モデル」の二つのモデルを示し、財務諸表の作成を要請してきました。現在、全国自治体の約8割が「総務省方式改訂モデル」に基づく財務諸表を作成していますが、そもそもこの「改訂モデル」は、東京都が当初実施していた「機能するバランスシート」に他なりません。「機能するバランスシート」では、時間もかかる上、資産や負債の実在性、網羅性に欠け、精度の高い財務諸表が作成できません。さらに、個別事業ごとの財務諸表を作成することが困難な為、事務事業の評価に結び付けることができないのです。だからこそ、東京都は複式簿記・発生主義会計に移行したのであります。また、「基準モデル」は民間の企業会計から懸け離れたものであり、住民が理解しにくいだけでなく、国際公会計基準に合致しない不十分なものであります。
日本の公会計制度は、世界から孤立する結果になりかねません。やはり、都が導入したような、複式簿記・発生主義会計による新公会計制度を広げていく必要があります。
そこで、今後、他の自治体に対する普及を一層進めるため、新公会計制度の本格導入を決めた自治体に協力を求め、全国への普及拡大に取り組む体制を整備し、国に対し会計基準の統一化をより一層強く迫るべきと考えますが、知事の決意を伺い、私の質問を終わります。