石原都政の四期目のスタートにあたり、都政の喫緊の諸課題及び東日本大震災後の東京の都市力強化に向けた取り組みについて質問致します。
はじめに東日本大震災の犠牲となられました方々に、心から哀悼の意を表するものであります。震災後、都議会公明党は被災各県に調査団を派遣してまいりましたが、被災者の皆様に対する支援、被災地の復興支援のために、今後とも全力で取り組んでまいりますことを固くお誓いするものであります。
特に、都民生活を支えて下さっているのは福島県をはじめ地方の発電所であり、地方の食料、地方の水、サプライチェーンなど地方の技術であります。京都大学の中西寛教授の言葉を借りれば「今回の災害では、東京が復活して地方を救うのではなく、地方が復活して東京が救われる」のであります。
未曾有の巨大地震、大津波、原子力発電所事故の中で、日本人の忍耐強さや礼儀正しさ、必死に他人を助けようとする姿は、海外から賞賛されました。また自衛隊や警察、消防の取り組みに対する被災者からの尊敬と感謝の声も大きく、加えて多くの若者が被災地で復旧事業やボランティア活動に取り組む姿も、大いに評価されております。
しかし本来、国民の先頭に立つべき政府の大失態は、目を覆うばかりであります。3カ月が経過した今なお災害破損物の処理は遅々として進まず、政府・とりわけ菅首相の初動の振る舞いが、原発事故の深刻さを招いたことは否めない事実であります。フランス・ルモンド紙には「下らない政府の下で国民はよく頑張っている」などと書かれ、政治の無策が招いた人災との批判は日増しに強まっております。
一昨年来、誤った政治主導なるものが国に蔓延しておりますが、今こそ真の「政治主導」の発揮が望まれております。震災発生直後から強力なリーダーシップで、迅速な被災地支援を進めて来た石原都知事の所見を伺います。
大震災・原発事故という国難に見舞われた今日、多くの学者等が改めて注目しているのが、英国の歴史家アーノルド・トインビー博士の「挑戦と応戦」の理論であります。
これは「挑戦」、すなわち自然環境の激変や戦争などの試練や困難に対して、いかに「応戦」するかで、文明は成長もし、滅びもするという歴史の法則を指しております。
トインビー博士の唱える歴史の法則に従うならば、試練を乗り越えてこそ、未来はあります。今回の大地震・大津波による甚大な被害、原発事故によるエネルギー不足に対して、我々がいかに「応戦」するか、その道筋を示し導くことが政治に求められております。
とりわけ東京は、自然を征服することで豊かさを求めてきた現代文明の象徴とも言うべき巨大都市であり、膨大なエネルギーを飲み込むことで成り立っております。大震災を機に逆境に立たされた東京が、最初に文明転換の道を開き、まさにリード役となるべきであります。石原都知事の所見を伺います。
【地域経済の復興支援】
今回の大震災によって東北地方、とりわけ福島県は、大地震・巨大津波に加えて、原発事故・風評被害という四重の被害となり、地域経済もかつてない大打撃を被っております。
都議会公明党は先月、福島の経済団体の代表と現地で意見交換をしました。福島県は、風評被害により中通り・会津方面まで大きな影響を受けており、経済団体からは「地域経済への波及効果や即効性のある支援を」との強い要望が寄せられました。
特に、地域経済の活性化に即効性が期待できる観光の復興に熱い期待を寄せておりました。観光客が大幅に落ち込み、秋以降はさらに減少すると心配されております。被災地の地域経済活性化のために、被災地を訪れる観光客へ助成するなどインセンティブを与える施策を実施すべきと考えますが、答弁を求めます。
また、東京から多くの観光客が被災地に来てもらう取り組みとして、プレミアム付きの地域振興券を東京で発行し、被災地の宿泊施設や商業施設で使ってもらうというユニークなアイデアも出されました。地方財政法上も問題はないことを確認致しております、今後、被災地で使える東京発行のプレミアム付き地域振興券についても検討を進めるよう強く要望致しておきます。
【職員派遣】
都は震災発生直後より、警視庁、東京消防庁をはじめ、医療支援、技術支援、教職員派遣などの人員支援に全力で取り組んで参りました。
都からの幅広い分野にわたる職員派遣は、発災後の応急対策に懸命に取り組む被災自治体にとって、なくてはならない存在になっております。そこでまず、発災から今日までの都の職員派遣の実績と成果を明らかにして頂きたいと思います。
震災から3カ月が経過し、今後は、応急対策から本格的な復興に取り組んでいかなければなりません。それに伴い、職員派遣も、短期・応急的な派遣から、被災した自治体の行政機能の回復に向けた長期の復興支援が必要になってきます。
首都東京の持つ総合力を活かして、被災地の行政ニーズを的確・迅速につかむとともに、被災自治体からの支援要請を待つだけではなく、東京にできることを主体的に発信して、被災自治体の行政機能再建を強力にバックアップしていくべきであります。今後の都の職員派遣のあり方について見解を求めます。
また、教育支援についてですが、都教育委員会は、国が被災県にいまだ有効な支援策を講じていない中、5月連休明けには、宮城県の学校に68名の教員を年度末まで派遣することを発表しました。この実績を踏まえ、子どもたちの傷ついた心のケアのために、養護教諭の派遣に更に力を入れるべきであります。現職養護教諭を派遣すると、その後の補充が困難であるならば、退職養護教諭で補充し、現職養護教諭を現地に派遣すべきと考えます。教育庁の見解を求めます。
【文化・スポーツ支援】
医療や衣食住の支援だけでなく、被災された方々に対するメンタル面での支援も重要であります。特に、文化・芸術・スポーツを通して次代を担う子どもたちに、夢や希望を持たせる支援が重要であります。
まず文化交流についてでありますが、地元からの要請を受け、東京都交響楽団が郡山市でコンサートを開催し、招待された避難者は、大変に喜んでおられました。
また、東京に避難している子どもたちを劇団四季が「ユタと不思議な仲間たち」の興行に招待し、子どもたちが大変に感動していた様子が報道されておりました。
こうした実例を踏まえ、東京都交響楽団のアンサンブルによる連続公演の実施、都が公認しているヘブンアーティストの活用、都の文化事業に参加している劇団等の公演など、現地のニーズに応じ様々な取組を積極的に行うべきであります。所見を求めます。
次に、スポーツによる支援についてであります。被災地では、体育館や校庭が避難所などとして利用されているケースも多く、子どもたちが、特に野球やサッカーのような広い場所を必要とするスポーツをすることが難しい状況にあります。
一方、避難所になっていた東京武道館や味の素スタジアムでは、Jリーグ観戦やサッカー教室などに招待された子どもたちが、プロ選手の技術やスピードを目の当たりにし、目を輝かせ、喜んでいたと伺いました。
被災地で不自由な生活を強いられている子どもたちを是非とも東京に招待し、スポーツ観戦や交流試合等、スポーツに接する機会を提供すべきと考えます。所見を求めます。
【衛星による災害情報の把握】
今回の大震災では、被災状況の把握に時間がかかったために、初動の人命救助、救援、復旧が遅れてしまったと指摘されております。
首都直下地震が発生した場合、東京都が持っているDISと呼ばれる災害情報システムを用いて、地域の詳細かつ正確な情報収集を行なうと同時に、高解像度衛星による画像と地理情報システム(GIS)を併用すれば、東京都全域における被災情報を瞬時に取得することが可能となります。
人工衛星の活用は、広域の観測をはじめ、夜間や悪天候でも観測できるというメリットがあります。さらに、浸水・冠水域や、液状化エリアの特定、道路状況や地殻変動、海上漂流物分布の把握等の利用や、広範囲を繰り返し観測できることから、復旧・復興の進捗状況の把握まで可能となります。今後、JAXA(宇宙航空研究開発機構)は数年内に2機の災害観測衛星を打ち上げる予定であり、他国の人工衛星との協力関係の構築により、迅速な被災状況の収集が可能となります。
災害対策における人工衛星の活用を検討すべきと考えますが、所見を求めます。
【情報・通信】
先の大震災発生時には、首都圏においても固定電話や携帯電話・メール等が機能不全に陥り、行政間や交通事業者との情報交換、更には家族間の安否確認などが不可能となり、対策の遅れや不安の増大で、混乱に拍車を招く原因となりました。
都は、どんな状況下にあっても相互通信手段を失わないために、無線機によるバックアップ体制を多重的に確保し、都庁各局や出先機関、各区市町村や避難所、さらには主要駅などにも配備すべきであります。
また、都や区市町村と災害時の「応援協定」を交わしている協力団体等との通信体制も構築しておくべきであります。併せて見解を求めます。
次に家族間の安否確認についてですが、通信事業者による「災害伝言サービス」は、ほとんど利用ができませんでした。都は、国や通信事業者に対し、安否確認サービスの技術開発と機能の拡充を求めるべきであります。見解を求めます。
次いで、防災行政無線の整備についてであります。
甚大な被害を受けた宮城県南三陸町では、若い女性職員が「高台へ避難するよう」に、防災行政無線で命をかけて繰り返し呼びかけたことにより、多くの住民の命が救われました。一方、他の地域では、屋外スピーカーからの避難情報が聞こえなかったとの証言もあり、改めて防災行政無線のあり方が問われております。
都議会公明党が先日、被害状況を調査した茨城県大洗町では、津波から避難する高台がほとんど無いにもかかわらず、人的被害は最小限に留まりました。その要因の一つに、屋外スピーカーに加え、住民・全世帯に配備された防災行政無線の受信機で同時に情報を得て、迅速に避難することができたとのことでした。
都内各地では、以前からこの防災行政無線の屋外スピーカーの音声が「聞こえない」「聞き取りづらい」といった声が多く寄せられております。都として、災害時に重要な役割を担う防災行政無線の実態を早急に調査した上で、課題を検証するとともに、住民への情報伝達について区市町村が実情に合わせて拡充することができるよう、支援すべきであります。見解を求めます。
【帰宅困難者対策】
国の中央防災会議は、首都直下地震発生時の帰宅困難者を約390万人と試算しており、都内各所で大規模な火災が発生し、避難者と帰宅困難者が交錯することによって、大量の圧死者が出る恐れがあるとしております。
東日本大震災が発生した3月11日は、首都圏の交通機関が途絶し、幹線道路は徒歩で帰宅する人々で溢れ、都内の帰宅困難者数は約300万人に達しました。企業や事業者が帰宅困難者を積極的に受け入れた事例も見られましたが、ターミナル駅に滞留した人々を駅構内から退去を求めた鉄道事業者が出るなど、関係者の意思が統一されず、日頃の訓練や話し合いの成果を活かせなかったのが現実であります。
こうした事態を繰り返さないためには、東京で大震災が発生した場合、まずは帰宅困難な都民に対し、職場や身近な大規模施設などに留まるよう、明確なメッセージを発信することが大切であります。さらに、ターミナル駅に滞留する人々に対しては、統一した避難・誘導が実施される体制を構築するべきであり、都と区市との連携も不可欠であります。今後、帰宅困難者対策、駅前滞留者対策を進めるためには、責任ある立場の人が強いリーダーシップを発揮することが大切であります。知事の所見を伺います。
また、今後の帰宅困難者対策においては、訓練の内容を実際の災害発生時に役立つものにしていく必要があります。特に夜間や悪天候下も視野に入れて取り組むべきであります。見解を求めます。
次に、人々が「帰宅しなくても安心できる」環境を整えるためには、災害時にあっても、都民に正確な情報が速やかに伝わることが大切であります。
災害情報を伝える手段として、テレビ、ラジオの他、駅や街頭の大型画面、コンビニなどにある液晶モニターの活用やインターネットなど様々な媒体があります。しかし、こうした媒体は、大規模停電時には全く機能しなくなる恐れがあります。そこで、帰宅困難者の避難誘導にかかる重要な情報を発する拠点施設においては、停電時も含めた対策を検討すべきであります。見解を求めます。
さらに、帰宅困難者の受け入れについては、これまでの受け入れ施設に加えて、映画館、ホテル、劇場、駅ビル、オフィスビルなどを対象に、受け入れ先の拡大を図るべきです。また、備蓄品については、食糧、寝具、簡易トイレ機能などに加え、炊き出しのためのLPガスなどの燃料を配置すべきであります。民間施設での受け入れと備蓄品について、見解を求めます。
さらには、公立・私立を問わず、幼稚園、保育園、学校等の対策も重要であります。交通遮断を招く大震災が発生した場合には、都内の各保育・教育機関の共通の取り組みとして、親が迎えに行けるようになるまで、子どもたちを一定期間預かり続ける必要もあります。都は、関係機関に強く働きかけ必要な支援策を検討すべきであります。それぞれ関係各局の見解を求めます。
【長周期地震動】
ご存知のとおり長周期地震動とは、揺れの周期が2秒から20秒程度の地震動のことで、特に高さ60mを超える超高層ビルや免震建築物への影響が大きいと考えられることから、その対策が求められております。国は昨年12月、「超高層建築物等における長周期地震動への対策試案」を示しましたが、未だ検討中と聞いており、早急に対策をまとめるべきであります。
都内有数の超高層ビルである都庁舎は、災害時には防災拠点となることから、その機能を確保するために、本年5月20日、「都庁第一本庁舎・第二本庁舎における長周期地震動対策への取組」について発表しました。都内の超高層ビルは約1000棟、全国の約2500棟の多くが東京に集中していることから、都庁舎の補強対策の情報を民間建築物にも活用できるよう、積極的に提供していくべきであります。また、都として対策試案の対象となる民間建築物の所有者に対して、参考となる補強方法の事例などを提供していくべきであります。民間建築物における長期地震動対策についての見解を求めます。
長周期地震動は、超高層ビルだけではなく、石油コンビナートのタンクにも被害を及ぼします。実際、十勝沖地震では、浮屋根式タンクで内容物が揺れ動くスロッシング現象が起き、火災が発生しました。
早稲田大学理工学術院の研究によると、こうした石油タンクは東京湾内に600基あまりあり、東海・東南海地震が発生した場合は、64基から貯蔵している原油等が流出するという調査結果を発表しております。
東京湾内には大小の船舶が多数航行しており、原油やガソリンなどの危険物が大量に海上流出すれば、航行停止を余儀なくされてしまい、災害時救援物資、人員輸送の機能を果たせなくなってしまいます。海上からの消火活動も不能となる恐れがあります。また東京湾内の12の火力発電所に燃料の供給ができず電力供給力も大幅に低下してしまいます。
都は早急に、神奈川・千葉両県と連携し、石油タンクの耐震補強、長周期地震動対策を万全にする必要があります。見解を求めます。
【東京湾の津波・高潮対策鍵】
都は、関東大震災の再来を想定した津波の被害想定を平成3年に行っており、津波の高さは1m20?程度、首都直下型地震については、中央防災会議が50?未満との想定を行っております。しかしながら、今回の大震災では、震源から400kmも離れた東京湾の晴海で、1.5mの津波が観測されました。およそ300年前に起きた元禄地震では、品川沖に約2mの津波が記録されております。
東日本大震災を踏まえ、都は現在の被害想定の再検証を行うとともに、これまでの津波・高潮対策を抜本的に見直す必要があると考えます。見解を求めます。
次に、東京港の水門、防潮堤の耐震対策についてであります。東京港の臨海部には都市機能が集積しており、いざという時に、浸水被害を食い止める水門や防潮堤等の海岸保全施設の整備が極めて重要であります。しかし建設後45年を経過している水門もあり、直下型の地震に万全を期すことが求められております。耐震対策の一層の推進が急務であります。見解を求めます。
さらに、東日本大震災を教訓に、地震・津波水害対策のあり方を検討するために設置された「地震・津波に伴う水害対策技術検証委員会」について質問致します。
先日、第一回目の会合が開かれ、首都直下地震等に備え、地震・津波・高潮に対し、防潮堤や水門など都内の防災施設の弱点を洗い出すことなどが確認されたと聞いております。今後の「技術検証委員会」の目的、具体的な取組み内容・スケジュールについて見解を求めます。
【液状化対策】
東日本大震災では、地盤の液状化現象による被害が、青森から東京湾沿岸にまで至り、広範囲に深い爪痕を残すなど、世界でも最大最悪の規模となりました。
都議会公明党は、都内の被害実態を把握するため、区部東部地域の被災現場の状況をいち早く調査致しました。その結果、都の予測図では「液状化の発生が少ない」とされている地域の一部で液状化が発生していたことや、家のローンと修繕費等の二重負担に苦悩する住民の方など、事態の重大性を再認識するとともに、東京湾沿岸の埋立地の液状化に対する脆弱性を改めて喚起させられました。
今後、首都直下地震や東海・東南海・南海地震の連動する巨大地震が懸念される中、液状化に強い都市づくりが急務であり、都の液状化対策の見直しは喫緊の課題であります。
そこで、三点質問致します。
はじめに、液状化予測図見直しについてであります。都は「東京緊急対策2011」において、平成24年度までの2年間で液状化予測図の見直しを行うとしております。予測図は、地域の液状化ハザードマップとして活用されるとともに、今後の地域防災計画の修正や、ライフラインを始めとする公共施設等の液状化対策を見直す上での基礎となることから、年度内に、その概要を関係部署へ情報提供すべきであります。見解を求めます。
次に、都民の安心確保と液状化対策の推進であります。予測図によって液状化の恐れのある地域と判定された住民は、そのまま住み続けるためには、どのような液状化対策を講じれば良いのか、日々不安を抱えて生活することになります。木造住宅における液状化対策に取り組み、液状化を診断できる技術者の育成や、アドバイザーの派遣、都民を対象とした液状化相談窓口の設置などについて検討すべきであります。見解を求めます。
第三に、液状化等の被害を受けた世帯に対する支援であります。東日本大震災で液状化被害に見舞われた都内の住宅は、被災者生活再建支援法の被災規模に関する要件に該当しないため、被災者は支援金の給付を受けられません。また、住宅の半壊被害を受けた世帯については、そもそも法の支援の対象となっておりません。
今回の液状化被害は広域にわたっており、地域による現在の指定要件は理不尽であります。都は、国に被災者生活再建支援法の適用要件の緩和、対象世帯の拡大を直ちに要求するべきであります。
また、国が制度を改めるまでの間、地元自治体と連携し、被災世帯に対する支援を行うべきであります。見解を求めます。
【木造住宅密集地域の整備促進】
石原知事は、災害に強いまちづくりに向け、木造住宅密集地域対策に本格的に取り組むことを表明されました。これまで都は、整備地域、重点整備地域を指定し、対策を進めてきましたが、権利関係の複雑さや、居住者の高齢化に伴う建替え意欲の減退などにより、このままでは課題解決には、相当の年数が必要となります。
木造住宅密集地域の課題解決を図るためには、建替え意欲を向上させていくことが何より重要であります。そのためには、都自らが住民に対し、迫り来る直下型地震の危険性を明らかに示し、住民自らの危機意識を喚起することが重要であります。見解を求めます。
また、「緊急対策2011」に木造住宅密集地域の整備促進に向けて、都自らが地区を指定しモデル事業を行うとしております。
都が区市と連携しながら、直接取組むことは、災害に強い東京のまちづくりに向けて大きな成果が上がることが期待されます。地区の指定にあたっては、今まで取り組んできたものの、なかなか進んでこなかった地域や、今後のまちづくりにあってインセンティブがより高まる地域を指定すべきであります。見解を求めます。また、指定地区については、今年度の早い時期に決定することを強く要望致しておきます。
【都の放射線対策】
福島第一原発事故による原子力災害が長期化する中で、政府からの誠実な説明が無い中、ドイツ気象庁による放射性物質拡散予測がインターネット上で公表されたり、IAEA報告書の中で、3月中にメルトスルー(炉心貫通)していたことが今頃明らかにされるなど、「国は正確な情報を公開していないのではないか」との不安と怒りの声が高まっております。
そもそも、昨年の「事業仕分け」でパフォーマンスを優先し「放射線モニタリング調査」の予算を削減した政府・民主党に、期待すること自体無理なことであります。
都議会公明党は過日、都の健康安全研究センターを視察致しました。そこで、水素爆発後の3月21日から22日にかけて、降下物中のセシウム137が一平方メートルあたり5300ベクレルも都内で検出されていた事実を確認してまいりました。
この数値は昭和32年に文科省が調査開始以来、核実験などが頻繁に行われていた時期や、チェルノブイリ原発事故発生の時期など、過去最も高かった数値と比較しても、5倍以上の高い数値であります。降下物測定値は従来から、月単位の積算量が文科省によって公表されておりますが、今後、3月分の月間測定値が文科省によって発表されると、いたずらに都民を不安に陥れかねません。
健康影響に対して客観的なデータに基づいて説明すべきであります。見解を求めます。
都は、わが党の要望を受けて、去る6月8日に「都内における空間放射線量の測定」を拡充すると発表し、都内100カ所の放射線量の測定を行いました。
しかし、なおPTA保護者からは、学校のプール清掃や水泳の授業、さらには校庭への影響について不安や質問が多く寄せられております。
都は、こうした不安に応えるために、引き続き測定を行うとともに、学校や公園などの土壌や、プールの水を含めたより綿密な都独自の放射線量のモニタリングを行うべきであります。
放射線量測定や放射線の人体への影響について、高度な知見を有する首都大学東京も活用すべきであります。また、首都大学東京は放射能対策に、今こそ積極的に協力していくべきと考えます。都の所見を求めます。
都内では、新宿区内のモニタリングポストの他、国の委託を受けた大学が、文京区・目黒区・港区・府中市・八王子市で測定を行っております。都は今後2カ所増設するとしておりますが、増設箇所については、これまで測定の行われていない区部東部地域と多摩北部地域にこそ設置すべきであります。見解を求めます。
さらに、放射線のリスクの程度や対処の仕方など、都民向けの放射線セミナーの開催やホームページの活用、更には学校での普及も積極的に進めるべきと考えます。また、「内部被曝から子どもを守る」との観点から、学校給食の安全確保の取組みが重要であります。併せて見解を求めます。
都内の下水道施設でも、下水汚泥や焼却灰から放射性物質が確認されております。
焼却灰は施設外へ飛散しないよう管理をし、搬出にあたっては飛散防止の措置を講じ、埋め立て処分をしているとのことですが、過日、誤った報道もあり、必ずしも都民に正確な情報が伝わっているとは言えません。
下水道局は、施設周辺の放射線量の測定頻度を高めるべきであり、ホームページなどで都民向けにわかりやすく公表すべきです。
また、汚泥の測定や取り扱いについても、首都大学東京などとも連携し、取組みを進めるべきであります。都の見解を求めます。
【電力対策】
東日本大震災による原発事故に伴う電力危機は、電力に過度に依存した社会の脆弱性を明らかにしました。これまで都は、電力の需要面に着目した対策に重点を置き、省エネや節電の取り組みを進めておりましたが、今後は、電力の需給両面からのエネルギー政策へと転換していく必要があります。
今こそ、これまでの取り組みのノウハウを生かし、企業・家庭など全ての15%節電を成し遂げ、電源についても原発、化石燃料発電に依存するだけではなく、防災の観点からも、分散型電源と再生可能エネルギーへの転換を図るべきであります。
国では、再生可能エネルギーの全量固定価格買い取り制度が議論されており、これが成立すると再生可能エネルギーの普及が大きく前進すると思われます。
都は、太陽光や風力、小水力、バイオマスなど、再生可能エネルギーを活用した分散型電源を、スマートグリッドで結ぶ都市を目指すべきであります。
申し上げるまでもなくスマートグリッドは、それぞれの発電や電力消費の状況を情報技術の駆使によって把握し、それを制御することで、効率の良い電気の流れを実現する仕組みであります。これにより発電量が安定しないという再生可能エネルギーの課題が是正され、大量普及が可能となるわけであります。
こうした次世代送電網であるスマ―トグリッドの導入を早急に検討すべきであります。所見を求めます。
また、風力発電のような、都内だけでは風が弱いために、普及が困難なエネルギー源の導入拡大については、より広域で検討するなど、これまでにない取り組みが必要であると考えますが、再生可能エネルギーの普及拡大についての見解を求めます。
また、省エネルギー対策について、効果的に節電を行うことのできる新たな技術の開発も求められております。画期的な省エネルギー技術が東京から生まれるよう、都内の企業、大学、公設の試験機関等による技術開発を積極的に推進していくべきであります。見解を求めます。
家庭の省エネルギーについても積極的な工夫が必要であります。できるだけ自然の力を利用するパッシブ利用も効果があるとされ、こうした考え方や行動を速やかに広く啓発していくために、一般家庭向けの省エネフェアなどを活用して普及強化すべきであります。見解を求めます。
【中小企業対策】
今回の大震災によって、都内の中小企業も大きな被害を受けました。自社施設の被害とともに、サプライチェーンの寸断、計画停電の影響による生産の減少や、イベントの自粛による売上の減少、更には放射能の風評被害による輸出の低迷などで、資金繰りや雇用の維持に大変に苦しんでおられます。この前例のない危機に対して都は、早急に支援を講じる必要があります。
先ず、経営基盤の安定のためには、資金繰りの支援が欠かせません。
都は、震災後ただちに、「災害復旧資金融資」などを実施し、さらに、国の「東日本大震災復興緊急保障制度」に対応し「災害緊急融資」を新たに5月23日より実施しました。しかしながら、各緊急融資については期限があるため、長期にわたる事業再生に向けた支援が必要であります。
そこで、財務や販売、事業戦略などの専門家によるサポートを行い、事業の抜本的な見直しに向けた取組みが円滑に進む体制整備を図るべきであります。また、新たな融資制度については金融機関や区市町村と連携を図り、迅速化を図るなど、円滑な融資に努めるべきであります。併せて見解を求めます。
次に、電力不足に対する対応であります。首都圏の電力供給を支える原子力発電所の被害により、計画停電が実施され、多くの中小企業が影響を受けました。今後も電力需要の状況によっては、再び計画停電が実施されることが考えられます。
そこで、安定的に事業を継続していくためには、自家発電設備を導入し電力を確保していくことも効果的であります。中小企業にとっては、そのノウハウや価格など、多くの課題を抱えております。都として、自家発電設備の設置に対して支援するとともに、助成を行っていくべきであります。見解を求めます。
次に、イベントの開催ですが、震災後中止となったイベントが多く、イベント自粛に対する早急な対策が必要であります。東京の地域経済の復興に向けた機運を高めていくには、都内の様々な商店街のイベントに対し、支援を行っていくべきであります。見解を求めます。
【災害破損物】
今回の震災で岩手・宮城・福島の3県で2500万トンという膨大な災害破損物が発生しました。一方で、被災自治体では廃棄物処理施設の損壊により、その処理が滞っているのが実情であります。
国は、全国の自治体に受入処理の協力を求めていますが、未だ具体的な受入れは始まっておりません。
都は都内自治体や民間と共同で、災害破損物を受け入れるという、都独自の計画を打ち出しておりますが、災害破損物の撤去を早急に開始できるよう、今回のスキームを被災各県・市に周知するとともに、都内自治体・民間と連携し、受け入れ体制を整えるべきと考えますが、見解を求めます。
また、今回の災害破損物の中には、木質廃棄物も大量にあります。これらを木質チップ化し、バイオマス燃料に活用するなどして、リサイクルすべきであります。見解を求めます。
【震災時における警察機能の確保】
今回の大震災では、岩手、宮城、福島の3県の警察関連施設などが、大きな被害を受けました。浸水により使用できなくなった警察署や交番・駐在所、警察車両などが数多く損傷し、警察機能が大幅に低下しました。
一方、東京においても公共交通機関がストップし、交通渋滞や帰宅困難者の課題が浮き彫りになり、さらには停電による都市機能の混乱も発生しました。
首都機能を有する東京にあっては、こうした場合、どこよりも早く都民の安全・安心を回復することが重要であり、その第一要件はやはり警察機能の確保であります。
立地的に液状化や、津波・高潮を受ける恐れのある警察施設の安全対策、また警察活動の拠点となる交番や各種警察施設の電源確保策について、見解を伺います。
【オリンピック招致】
2020年オリンピックの東京への招致について申し上げます。
昭和39年に開催された東京オリンピックは、第2次世界大戦で敗戦した日本が、再び国際社会に復帰するシンボル的な意味を有していました。競技においては、東洋の魔女とまで呼ばれた日本バレーボール女子チームや、マラソンの円谷幸吉選手など、多くの選手が日本中に夢と希望を与えてくれました。
日本経済においても、競技施設やホテルの建設だけでなく、東海道新幹線や首都高速・名神高速道路などのインフラが整備され、カラーテレビの購入が飛躍的に増加するなど「オリンピック景気」といわれる好景気をもたらしました。
技術面では、競技に電子時計を採用し、オリンピック史上はじめて計測と順位に関してノートラブルを実現、世界的な信頼を勝ち取ることに成功しました。
3月11日に発生した東日本大震災は、東北、関東の被災地に甚大な被害をもたらしただけでなく、日本全体の景気経済をも悪化させております。東京が被災各県の皆さんと手を携え、被災地に、そして子どもたちをはじめ、多くの人々に夢と希望を与え、日本を再生させていくシンボルとしてオリンピック・パラリンピックを位置づけていくことが重要であります。
そのためには、まず結論ありきではなく、都民をはじめとした幅広い世論の喚起を促し、さらにスポーツ界や経済界、そして被災各県の招致に向けた機運を高める努力をしていくべきであると強く申し述べ、私の質問を終わります。