こちらでは都議会定例会の報告等をいたします。

平成22年《第3回定例会の報告》



市場の移転・再整備問題に関する討論

都議会公明党を代表して、東京都中央卸売市場築地市場の移転・再整備に関する特別委員会の継続審査に、反対する立場から討論を行います。

今回の現在地再整備案の検討については、長期にわたる整備期間や業界・住民の合意が困難という大きな問題のほかに、施設使用料、財源、そして施設計画と物流効率という3つの極めて重大な問題があり、現在地再整備の各案の実現は困難であることが明らかになりました。

我が党としては、結論が明白である以上、特別委員会を継続する必要性は全くないものと考えます。

現在地再整備案の実現が困難である理由の第一は、豊洲新市場と比較して、施設使用料の大幅な上昇が避けられず、業界にとって、負担が耐えられないものになるということです。

特別委員会の調査報告書によれば、豊洲新市場と比較して、施設使用料は1・3倍から1・6倍という水準が示されました。さらに、現行と比較した場合には、2倍程度にもなります。このほか、業界負担には、参考人が指摘したとおり、施設使用料以外にも、ローリングや仮移転に伴う費用が重なります。

私たち都議会は、参考人招致において業界団体が強く訴えていた、「このような使用料負担には、経営上、とても耐えられない」という意見を重く受け止めなければなりません。

続いて、第二の問題は、新市場の整備費の財源問題です。改めて申し上げるまでもなく、豊洲新市場であれ、現在地再整備であれ、その整備には財源の確保が不可欠であります。

築地市場跡地の売却収入が見込めない現在地再整備案では、巨額の財源不足が生じ、さらに、その補てん財源は確保できません。

また、過去の例から言っても、現在地再整備工事では、工期の延長による工事費の増加は避けられず、こうしたリスクを考慮しない計画は、あまりにも無責任です。工期の延長を余儀なくされ財源がなくなり、中断せざるを得なくなった場合、都民、市場関係者への影響は計り知れません。

第三の問題は、重層化による物流効率に様々な欠陥がある施設計画になっていることです。とりわけ最大の問題は、いずれの案でも、青果の売り場が物流効率の悪い上層階に配置されていることです。業界団体の代表者からも、激しい憤りと不満が表明されています。限られた築地の敷地では、売り場の重層化が避けられないことから、業界の理解を得られる施設整備は困難です。

さらに、東京ドーム2・5個分の広さがある巨大建築物であるため、火災発生時の避難に問題があり、災害時における人の生命に係わる課題があることも見逃せません。

このように、現在地再整備案は、施設計画と物流効率の観点からも、極めて問題が多いと指摘せざるを得ません。

以上、報告書で明らかになった問題点に加え、20年以上の長期にわたる整備期間の問題や、仮移転先の晴海の住民合意、そして、何より業界が現在地再整備の方向で合意できる見通しが全く立たない状況では、現在地再整備の実現可能性は、全くないものと判断せざるを得ません。

これまで長期間にわたり、議会として現在地再整備の可能性について、精力的に検討してまいりました。この間、業界参考人からも、「何故、過去の教訓が生かされないのか!早急に結論を出してほしい!」との厳しい声も上がっています。

さらに、意向調査についても一言申し上げますが、そもそも、青果を上層階にすることを含め、現在地再整備案を検討するにあたって、民主党からは、電話一本の相談もないと業界代表の方は怒りを表明しておりました。業界が反発するのは当然であります。

こうした声を無視し、意向調査で業界に責任を押し付けようとする行為は容認できません!

私たち議会が、今まさに果たすべき責任は、小委員会の報告を、最終報告と認識し、さらに、現在地再整備案が解決不可能な課題を抱えていることを直視し、首都圏3,300万人の食を支えるのにふさわしい豊洲新市場を早期に整備するため、22年度予算の全てを速やかに執行することであります。

ところが民主党は、予算について、1,281億円の内、用地取得費1,260億円を除く、準備行為である21億円のみを執行すべきと主張しています。

このことは、予算執行の原則を全く理解していない主張です。

豊洲移転か、現在地再整備かの「方針」が決定されていない段階で、豊洲新市場予算を執行すること自体、理屈が通りません。そもそも、平成22年度の豊洲新市場の整備予算は、平成26年度中の開場に向けた一体のものであり、一括して取り扱うべきものであります。それを、用地は認めず、それ以外を執行せよとする主張は、到底理解できません。

さらに、特別委員会の継続審査についてであります。これまで、特別委員会及び小委員会は、休日にも審議を行うなど精力的に調査・検討を行ってまいりました。付帯決議に基づき、公明党、自民党も協力して、議会として報告書をまとめあげたものであります。それを、何をいつまでにどうやって検討するのかも全く明らかにせずに、ただ、継続審査だと主張することは、我々のこれまでの検討をないがしろにするだけでなく、単なる先送りに過ぎず、議会としての責任放棄であります。

このように、現在地再整備についての議論は尽くされたのであります。また、移転整備について論じるのであれば、豊洲新市場移転という方針をしっかりと定めた上で、本来議論すべきである常任委員会に戻して議論することが当然の道筋です。

議会としては、一定期間と区切って予算が執行できるよう、精一杯取り組んでまいりました。民主党も予算に賛成して、特別委員会において付帯決議に基づき十分に検討してきたのです。

今ここで結論を出すことが議会の責任であり、会派の都合で政争の具にすれば、困るのは現場であり、業界、都民であります。民主党は「強引な移転に反対」と主張してきましたが、わが党から見れば、期限までに結論を出す責任を果たせなかった民主党の姿勢こそが、「強引な引き延ばし」であり、無責任極まりないといわざるを得ません。都議会公明党として、特別委員会の継続審議には反対であることを申し上げて、討論といたします。



〜代表質問から〜

東京都は平成21年度の都税収入が前年度比で1兆円減少するなど、都財政は厳しい状況に直面しましたが、十年来に及ぶ行財政改革の努力により培ってきた財政対応力を存分に活用し、都民サービスに支障を生じさせることなく、大幅な税収減に対応することができました。
それを可能とした重要な要素の一つが、わが党の提案を受け知事のリーダーシップの下、全国に先駆けて導入した本格的な複式簿記・発生主義会計でありあります。制度導入をきっかけに、いわゆる隠れ借金の解消に向けた取り組みが急速に進んだ一方、減価償却の導入により設備更新など将来の財政需要の増加に備えた基金の積立も充実しました。
このように、財政運営に新公会計制度を活用した都が成果を上げる一方で、国をはじめ、全国自治体での公会計制度改革の遅れは好対照をなしております。
知事は本会議冒頭で11月に「公会計改革白書」を公表すると表明されました。そこで、この新たなツールとしての白書を活用しながら、たとえば、新公会計制度を主要テーマとした大都市を擁する都道府県サミットを開催するなど、角度をつけたアプローチを積極的に行っていく必要があると考えます。知事の決意を伺います。
さて、ただ今申し上げたとおり、都は、新公会計制度を活用した堅実な財政運営を進めてきましたが、昨今の景気低迷のなか、都財政を取り巻く環境は非常に厳しく、当面、大きな好転を期待できない状況にあります。一方、医療・介護・環境などの行政需要は、質量ともに拡大・多様化してきており、これらを実際に担っていく都の役割は一層重要となっております。
今後、都が期待されている役割を着実に果たしていくためには、税財源の更なる拡充が欠かせません。にもかかわらず、国は、こうした本質的な地方税財源についての議論を置き去りにしています。
ましてや、法人事業税の暫定措置については、撤廃に向けた議論すら行っておらず、このような国の姿勢を見過ごすことはできません。
地方税の原則を歪め、地方分権改革に逆行する暫定措置の即時撤廃を引き続き強く訴えていく必要があると考えますが、見解を求めます。

【戦略的・国際競争力の向上】
東京の国際競争力の向上に向けた、取り組みについて質問します。
東京は、世界でも類を見ない公共交通網の利便性、また、世界有数の安全かつ清潔な都市空間であるなど、海外の諸都市より優れた特性を数多く備えています。
その上で、今後、国際都市・東京として発展させていくために、絶好のチャンスとなるのが、来月21日に迫った「羽田空港の国際化」と、先月、国から選定された、京浜港「国際コンテナ戦略港湾」であり、その拠点が「臨海副都心」であります。
 臨海副都心は、24時間離着陸が可能となり、世界中から年間1千万人が渡航する羽田空港から直線距離にして、わずか6キロメートルです。地下共同溝が張り巡らされ、情報通信機能も世界最先端の技術が配備されており、海外の本社機能を十分に集積できる未来都市であります。
そこで先ず、臨海副都心に海外からの本社機能や投資を集積させ、新たな国際ビジネスチャンスの拠点となるよう、思い切った税制優遇などの施策を講じ、「経済特区」として政策誘導を図るべきであります。見解を求めます。
 臨海副都心を国際ビジネスチャンスの拠点とするためには、羽田空港と直結させる交通インフラの整備が不可欠です。モノレールの改良・延伸など課題が山積しています。羽田空港跡地の地下に既設されている東海道貨物支線をりんかい線と結び、旅客用路線として羽田から臨海副都心への移動時間を短縮させるなど、公共交通アクセスの利便性を高めるべきであります。見解を求めます。
 また、東京港にコンテナを飛躍的に集積させ、ハブポートとして物流の活性化を図るためには、京浜港「国際コンテナ戦略港湾」に選定されたチャンスを最大限に活用し、利用者にメリットのある港湾整備とインフラ整備を加速させるべきであります。さらには、税制面の優遇措置や港湾利用料の引き下げなど、東京港の大きな魅力を発信し、利用者にインセンティブを与えることができるよう、国に強く支援を求めるべきであります。併せて見解を求めます。
 このように、国際都市・東京を実現するためには、羽田空港や東京港を含めた臨海エリアについて、その潜在能力を最大限に引き出すべく、東京の国際競争力の強化に向けた都市戦略を進めるべきと考えますが、知事の所見を伺います。

【浸水対策】
この夏、都内を集中豪雨が襲い、河川の溢水による住宅や事業所が浸水する被害や下水道から雨水が溢れ出す内水氾濫など、各所で甚大な被害が発生しました。
都議会公明党は、現場にかけつけ災害状況を確認するとともに、翌日には都知事に対し、時間50mmはるかに上回る局地的集中豪雨に対応できる河川整備の促進や、都民の生命・財産を守る万全の体制を、強く求めました。
現在都は、時間50mmの降雨量を基準に河川の整備を進めていますが、100mmを超える集中豪雨には、対応できておりません。
早期にこれらの降雨に対応できるよう対策を進めるべきです。今後の中小河川整備の取組について、都の見解を求めます。
住宅などが密集する都心部で、河川の整備水準を引き上げるには、一時的に河川の水を貯める調節池の活用が有効であり、東京都技術会議は6月28日の最終報告で、複数の調節池を連結する広域調節池の構想を提言しています。
そこで、環七の地下に、石神井川の調節池を新たに整備し、南側にある神田川・環七調節池と、北側に建設中の白子川の地下調節池を連結すれば、各河川で対応力が大幅に向上します。今後の河川整備を進める上で、広域調節池は効果的な方策と考えますが、都の見解を求めます。
浸水対策では、下水道から水があふれる内水氾濫対策も急がなければなりません。特に、地下利用が高度に進む都心部では、地下街への浸水は、地下鉄などの交通機能の麻痺や、人命にかかわる深刻な事態を招きます。
大規模な地下街を有する地区やくぼ地など、浸水による危険性の高い地区は、優先的に集中豪雨対策を実施すべきです。都の見解を求めます。

【耐震化】
都はわが党のたび重なる主張もあって、首都直下地震や東海地震などの発生に備え、防災上の重要な建物や都市インフラをはじめ、木造住宅、マンション、緊急輸送道路沿道の建築物等の耐震化に取り組んできました。
しかし、いずれも耐震診断や改修が所有者の意思に委ねられている点や多額の費用負担などの点で、なかなか進んでいないのが現状です。巨大地震発生の切迫性が指摘される中で、一刻も早く、震災時における人的被害を極力抑え、都市機能を確保するための大胆な対策を講ずるべきであります。
耐震化の状況を踏まえ、今後の建築物の耐震化施策の方向性について、知事の所見を伺います。
次に、具体的な耐震促進策についてです。まず、救急医療機関についてであります。これまで、東京都指定二次救急医療機関の耐震化の遅れが課題となっておりましたが、一部を除いて耐震化された病院も含めると、今年8月の時点でようやく8割の状況となりました。
残りの2割の救急医療機関は、耐震化のための資金、移転建て替えや増改築に伴う用地の確保、工事期間中の来院・入院患者対策など、多くの課題に直面していると聞いております。耐震化を進めるために、改めて、病院ごとの課題について実態を調査し、対応を講じるべきと考えますが、見解を求めます。
昨年度、国の補正予算で設けられた「医療施設耐震化緊急整備事業」には、都内29病院が応募しましたが、国の採択は5病院にとどまりました。今回の経済対策にも「病院等の耐震化対策臨時特例交付金」が盛り込まれましたが、単年度限りであり、昨年度の1222億円に対して、学校分も含め571億円と聞いており、半分にも満たない金額です。そこで、救急医療機関の耐震化を促進するために、国に対して本予算化を提案要求すべきです。また、国の状況にかかわらず今年度拡充した都の支援策は継続し、耐震化を促進すべきです。
併せて見解を求めます。
次に、学校の耐震化について質問します。公立小中学校の耐震化について都は、平成24年度末までに耐震化の完了を目標にしており、今年4月1日現在で88・4%まで到達しました。しかし、区市町村で耐震化率の格差が生じているほか、多摩地域を中心に耐震化の遅れが目立ち、現状では平成24年度末までに100%耐震化の達成が危ぶまれる状況になっております。
平成22年度の国の公立学校施設整備費当初予算では、耐震化等のために全国の公立学校で必要な経費を大幅に下回る予算となり、世論の強い批判を受け、あわてて予備費を充当するという腰の定まらない対応となりました。これでは、自治体は安心して耐震計画をつくることができません。
また、耐震対策として国は、地震防災対策特別措置法の特例措置により、倒壊の危険性の高い建物については国庫補助率を嵩上げしておりますが、この特例措置が平成22年度末で終了となります。そこで、都は国に対し、公立学校施設の耐震化予算の安定的かつ十分な確保や、補助率の嵩上げ特例措置の延長を要望すべきと考えますが、見解を求めます。
また、私立学校、私立幼稚園の耐震化についても、公立学校と同様に支援策を強化すべきです。見解を求めます。

【応急給水】
切迫する首都直下型地震が発生すれば都市インフラは大きな被害を受けます。中でも水道施設の被害は大きく、一部地域では、断水率は最大で約80%にも達する、と予測されています。
都の計画では、住民への給水は、都が応急給水拠点を整備し、自治体が応急給水拠点で被災住民に水を配布することになっています。しかし実際には、水を配布する自治体の職員自身が被災してしまい、給水拠点に参集できないという事態も生じかねません。このため区市町では、町会・自治会と協力し、震災時に不足するマンパワーを補う方策を模索しています。
そこで都が、応急給水拠点で行われる活動計画を把握し、震災時の応急給水対策が十分に機能するよう取り組んでいくべきと考えます。見解を求めます。

【り災証明】
首都直下地震の場合、応急対策が一段落したあとは、都市や産業の復興とともに、住宅の再建など、都民の生活復興をスムーズに進めることが課題になります。その際の支援制度として、被災者生活再建支援法に基づく支援金の支給や応急仮設住宅への入居、固定資産税の減免などの公的支援のほか、住宅ローンの支払い猶予など民間でも支援メニューが用意されると考えられます。
被災者がそれらの援助を受けるためには、原則として区市町村が発行する「り災証明」により、被災者であることや被災の程度を証明することが必要になります。
3年前の新潟県中越沖地震に見舞われた柏崎市では、電子地図を活用した事務の軽減や円滑化に取り組み、従来は手作業で行っていた被害調査と住民登録データや家屋データの照合作業を大幅に効率化し、円滑な発行に効果を上げたと聞いています。
都は震災復興マニュアルにより「り災証明」の発行手順を定めていますが、数百万棟にも及ぶ住宅被害さえ予想される首都直下地震が発生した場合、区市町村が円滑に「り災証明」を発行できるようにする新たな取組が急務と考えます。都の見解を求めます。

【認知行動療法】
うつ病、自殺、児童虐件や高齢者の孤独死などの問題について質問します。公明党は、こうした課題解決に取組む観点から「新しい福祉」を提案し、課題解決に力を入れているところであります。
そこで先ず、精神疾患の治療に有効とされる認知行動療法について質問いたします。
認知行動療法は、精神疾患患者の「考え方」に注目し、対話を通してサポートする精神療法のひとつで、薬物療法との併用で効果が高まることがわかっています。本年4月からは、公明党の推進もあり、認知療法・認知行動療法が、新たに医療保険の対象になりました。併せて国においては、認知行動療法を普及するため、今年度から、医師等に対する専門研修が開始されました。
そこで、東京都においても、診療を希望する方がスムーズに受診できるように、医療保険の適用の有無も含め実施医療機関の情報を把握し提供するなど認知行動療法の普及を進めていくべきであります。見解を求めます。
また、保険適用が始まったものの対象が限定的であり、都は国に対し、保険適用範囲の拡大を要望すべきであります。見解を求めます。
先日、都議会公明党は、都立中部精神保健福祉センターを視察いたしました。同センターでは、認知行動療法を積極的に活用し、うつ病により失職・求職中の患者を対象にした通所訓練や、若年者向け薬物療法乱用防止プログラムなどを実施しています。このうち復職を目指す「うつ病リターンワークコース」では、2005年度から5年間で、利用者335人に対し、約9割の300人が復職を果たしており、かつ目すべき成果であります。
こうした精神保健福祉センターで取り組んできた認知行動療法に関するノウハウを、都内の医療・福祉の関係者に広く普及すべきであります。見解を求めます。
更に、都立病院においても、認知療法、認知行動療法を先駆的に取り入れていく必要があると考えます。見解を求めます。

【単身高齢者支援】
足立区に端を発した高齢者の所在不明問題は全国的な広がりを見せていますが、「単身急増社会の衝撃」の著者・藤森克彦氏によれば、単身世帯は人口集中地区に居住する傾向がみられ、2005年の都道府県別の男性の単身世帯比率は、すべての年齢階層で東京都がトップであり、女性も20代から60代までは東京都がトップであります。
大都市に暮らす住民にとって、「孤独死」はもはや他人事でなく、現在と将来にわたり、誰にでも起こり得る現実であります。
そこでまず、大都市の社会的病理ともいえる「孤独死」の現状について、知事の認識を伺います。
ところで、国や自治体だけでは十分に対処できない、貧困や地域医療、要介護などの社会的課題に対し、近年その効力が注目されてきているのが、地域住民のネットワーク活動や相互信頼、自発的な協力関係等の“地域の共同資源”、すなわち、ソーシャル・キャピタルによる解決であります。内閣府が2002年度に実施した都道府県ごとの調査によれば、ソーシャル・キャピタルが豊かな地域ほど、失業率や犯罪率が低く、出生率も高く、平均寿命も長いことが分かっています。
今回の高齢者の所在不明問題は、大都市東京において、このソーシャル・キャピタルが低下していることを象徴した事件とも言えます。こうした新たな課題に適切に対応するために、都は、現場を抱える区市町村の意見や要望を改めて把握し、支援を講じていくべきです。見解を求めます。
一方で、高齢者の見守りに当たっての課題は、個人情報保護法令との調整であります。例えば災害時に、高齢者や障害者らの避難を円滑にするため、全国の自治体では、要援護者名簿の作成が進められていますが、総務省の調べでは、対象者のほぼ全員の名簿を作成した自治体は33%に留まっています。
その原因として、都民・自治体双方の個人情報保護法令に対する誤解や、そこから生じる過剰反応があると指摘されています。
都は、都民、自治体双方に正しい理解が促進されるよう積極的な取組みを行っていくべきであります。見解を求めます。

【児童虐待】
今年の猛暑の中、大阪市の幼い姉弟が母親に置き去りにされ、何も食べるものがない部屋で寄り添うように亡くなりました。悲惨な児童虐待から、かけがえのない子どもたちの命を、何としても守らなければなりません。
 平成20年には改正児童虐待防止法が施行され、児童相談所の家庭への立ち入り調査の権限が強化されました。
 しかし、一方で、次から次へと発生する虐待事案に真正面から向かい合い、対応する児童福祉司の確保は不十分な状態です。
一人の児童福祉司が、人口約7万人もの区域を担当している東京では、虐待相談対応件数は、平成12年には1806件であったのが、昨年度は3339件と、2倍に迫っています。
そこで、人口集中都市・東京において、虐待から子どもの命を守るためには、「児童福祉司」の思い切った増員や専門性の向上に早急に取り組み、児童相談所の体制強化を図るべきであります。見解を求めます。
 また一方では、児童虐待を未然に防止していくことが重要であります。
 各区市町村が設置している「子ども家庭支援センター」では、虐待を未然に防止する対策や児童相談所との連携などの取組が行われています。しかし、「子ども家庭支援センター」が、十分にその機能と役割を果たしていない地域もあります。
そこで先ず、子ども家庭支援センターと児童相談所の連携を強化し、日常的な情報交換ができる仕組みを一層充実すべきであります。見解を求めます。
また、子ども家庭支援センターに配置されている「虐待対策ワーカー」の専門性を向上させるため、児童相談所において、オンザジョブトレーニングなどによって、区市町村職員が実践の中で児童福祉司任用資格と能力を得られるよう育成支援すべきであります。加えて、こうした専門性の高い「虐待対策ワーカー」を各支援センターに複数人配置していけるよう働きかけていくべきであります。併せて見解を求めます。
 そして、児童虐待にこれまで以上に即座に対応することができるよう、児童相談所の配置の見直しの検討も含め、区市町村との連携を深めていくべきであります。
見解を求めます。

【ウイルス HTLV−1】
次に、重い白血病や脊髄症を引き起こすウイルス「HTLV−1」の都民への啓発や感染予防対策について質問します。
HTLV−1は「ヒトT細胞白血病ウイルス1型」の略称です。かつては九州地方を中心に感染者が集中していましたが、人の交流が進むとともに、全国に感染者が拡散しています。その数は108万人に上ると推定され、B型・C型肝炎に匹敵するとも言われています。
最大の感染経路は母乳を介した母子感染で、感染予防を進めるために妊婦健診での抗体検査が必要と指摘されてきました。
公明党は党難病対策プロジェクトチームを中心に、繰り返しこのウイルスの総合対策を主張してまいりました。都議会公明党も九州の患者団体と意見交換し、平成20年第3回定例会本会議で取り上げました。
今年3月には厚生労働省の補助金を受けた研究班が、全国に感染者が拡散している現状を踏まえ、全国で妊婦に抗体検査をすべきとして、従来の国の方針転換を促す報告書をまとめました。
こうした中で今月8日、国は全妊婦の抗体検査を全国一律、公費負担で行う意向を示しました。
しかし、HTLV−1については医療関係者でさえ十分に理解されているとは言えない状況があります。都として、医療や母子保健関係者などに理解を深めてもらう研修会などを早急に行っていくべきでありますが、見解を求めます。
また、都民にとっても、十分な情報がないまま抗体検査が実施されると、不安を招きかねません。そこで母子健康手帳を渡す際に、このウイルスの情報も提供できるよう区市町村に働きかけるべきであります。また、全妊婦の抗体検査が行われる場合、感染者とされた人に対する相談やカウンセリング体制を整備していくことが重要です。併せて都の見解を求めます。

【動物愛護施策】
 今月20日から26日は動物愛護週間でした。今年のテーマは「ふやさないのも愛」です。
都では25年前には5万頭が致死処分されていた犬や猫を、現在は約10分の1の約6千頭まで減少させることができました。動物愛護精神あふれる都民ボランティアや地域の皆様、行政の協同作業の結果であり、長年取り組んでこられた関係者の皆様に敬意を表するものです。
致死処分の約6千頭の内訳を見ますと約9割が猫であり、新しい飼い主に譲渡もできずに致死処分されている実態があります。
こうした不幸な猫を増やさないためには、不妊・去勢手術を徹底するべきです。
区市町村の実施している「飼い主のいない猫対策」に対して、都は「包括補助事業」により支援をしていますが、具体的な施策を行っていない区市町村も多く存在します。
都は、飼い主のいない猫対策について、包括補助の活用を含め強く区市町村に働きかけるべきと考えます。
併せて、都は猫対策にとって重要な役割を担う「動物愛護推進員」の積極的な活用のために、シンボルマークを公募するなど、その存在や役割を広く都民に周知していくべきと考えますが、都の見解を求めます。
また、犬に関してはここ10年間で登録された犬のうち約3割弱の犬が狂犬病予防接種を受けていないという実態があります。
狂犬病予防接種は本来飼い主が責任を持って実施すべき義務ですが、この義務履行を実施させるためにも、まずは飼い主による犬の登録を徹底させることが重要です。
そこで、犬を販売する際に、「登録証」を発行し、購入者情報を区市町村に通知連絡するなど、「犬登録東京モデル」を構築すべきと考えます。
都は、東京都獣医師会、区市町村及び動物取扱業者などと連携協議し、犬の登録率及び狂犬病予防注射接種率の向上をめざすべきであります。都の見解を求めます。

【小中学校冷房化】
次いで、教育環境の充実、なかんずく小中学校の冷房化について質問します。
9月中旬まで35℃を超える猛暑日が毎日続いた本年、冷房設備のない教室は蒸し風呂状態となり、生徒は学習意欲を持続させることができず、本当につらい日々となりました。 文部科学省の基準では、生徒が学習に集中できる教室の温度は、夏季で25〜28℃とされており、この夏はこの適正温度をはるかに超える異常な夏となりました。
このような中、小中学校の普通教室冷房化の実態は、23区ではすでに95%が冷房化し、来年度は100%達成されるのに対し、多摩地域を含む市町村では、17・6%と大きな格差が生じております。
この格差の最大の原因は、財源の問題であります。特別区の場合、都区財調の算定において、小中学校の冷房化予算を基準財政需要額に算入しているのに対し、多摩の各市町村の場合、自主財源で賄わなければならず、とりわけ財政力の厳しい市町村は、小中学校の冷房設備の設置に予算が回らないのが現状です。
本来、小中学校の施設整備は、基礎的自治体である市町村の責務でありますが、小中学校校舎等の耐震化や校庭の芝生化など知事の英断により、都が積極的に支援をしている事業もあります。子ども達の教育環境を整備し学習効率を上げるためにも、多摩地域の小中学校普通教室の冷房化に向けて、実態調査を行い、その上で財政支援策を検討すべきと考えますが、見解を求めます。

【教育】
第2回定例会での公明党が主張した発達障害児への支援、教室不足への対応、職業学科の設置等が盛り込まれた特別支援教育推進計画の第3次実施計画案が7月8日に出されました。これを受け、2点質問いたします。
すべての小中学校に特別支援教室を設置するためには、巡回指導をする教員の確保が課題となります。また、教員の高度な専門性も不可欠と考えます。見解を求めます。
次に、知的障害特別支援学校高等部における職業教育の充実についてですが、
都は、軽度知的障害の子供たちへの職業教育の更なる充実策として、高等部単独校を中心に職業学科を順次併設するとしました。さらに、障害が軽度だけでなく中度の生徒の職業能力の開発や就労につなげる取組も本格的に行っていくべきであります。見解を求めます。

【都営住宅の建て替え】
次に、都営住宅の建て替え促進について質問します。
首都・東京の魅力と活力の向上には、都心部、周辺区、多摩などの地域特性に応じた都市機能の充実が必要です。その意味で、都内各地に点在する大規模都営住宅の建て替えが果たす役割は大きいと言えます。
とりわけ、江東区の辰巳一丁目団地は、敷地面積13・9ha、3,326戸と、昭和40年代に建設された都営住宅としては最大規模で、地元からは、建替えの早期実現と共に、駅前でのにぎわいの創出、新たな商業エリアの形成、人口の急増に応じた住民サービス施設の拡充を期待する声が広がっています。
そこで、高層階化になどにより地域要望に応える模範的な建替え事業を早期に実施すべきと考えます。また、建替えの完了には、15年前後の年月が必要なことから、従前居住者の居住の安定の確保、既存建物の適切な維持・管理も大切です。併せて、見解を求めます。
また、辰巳一丁目団地のように昭和40年代に建設された都営住宅は約10万戸と多く、次々と建て替えの時期を迎えます。
大規模団地の建て替え事業をさらに加速化させていかないと、使用可能な耐用年数を超えてしまいます。区市がまちづくり上の具体的な構想を早期に立案できるよう、建て替え事業の前倒し提示に取組み、加速化を図るべきと考えます。見解を求めます。

【島しょ支援】
第一に、島しょ地域の医療用画像電送システムによる診療支援事業についてであります。現在都は、都立広尾病院と八丈、大島、小笠原など11か所の診療所等の間に、画像電送システムを設置しています。わが党は、機器を更新して島民が安心して受診できるよう訴えてきましたが、本年10月から、機能が充実されると聞いています。そこで、画像電送システムの機能充実と、その導入効果について説明を求めます。
第二に、白内障の手術についてであります。八丈島は、現在高齢化率が33%で、2020年には43%になると予想されています。高齢化に伴い白内障の高齢者が増えています。しかし、八丈島では手術ができないため、島民は本土に付き添い人と共に行くために多大な費用負担を強いられています。
そこで、八丈島でも白内障の手術ができるよう都として支援すべきと考えます。見解を求めます。
第三に、島の重要な観光資源である、スダジイの木が枯れる問題についてであります。
これは、カシノナガキクイムシという害虫によって引き起こされるもので、三宅島では約130本、御蔵島では約200本、八丈島では約10万本の被害が発生しております。
都として早急に対策を講ずべきであります。見解を求めます。
また、三宅島のオートバイレースについては、本年三宅島ならではの地形を利用して、はじめてオフロードのバイクレースを実施致します。都は、今回のバイクレースを年一回のレースに終わらせるのではなく、オフロードバイクの愛好者が通年で島を訪れるように工夫するなど、三宅島の観光振興策の拡充につなげるべきであります。今回のレースの内容とバイクを活用した観光振興について、都の見解を求めます。

【外郭団体改革】
わが党は、外郭団体、とりわけ監理団体改革について、全力で取組んでまいりました。その結果、団体数の半減、役員退職金の全廃、都派遣職員の大幅削減、包括外部監査の導入などを進め、大きな成果を得てきたところであります。
また、先般、党内に外郭団体改革推進PTを立ち上げ、監理団体に限らず報告団体も含めた更なる外郭団体改革に取組んでいるところであります。都はこれと時を同じくして「監理団体活用方針」を発表しました。監理団体を取り巻く環境は、指定管理者制度における特命選定による活用や、公益法人制度改革における公益目的事業の基準の見直しなど、大きな変化を来しております。こうした変化を踏まえ、今後の監理団体の活用とさらなる改革への取組について見解を求めます。
次に、外郭団体改革のもう一つの柱である報告団体について質問します。
報告団体についても、都からの出資など、都民の税金が投入されていること自体は、監理団体と同様であります。現在、報告団体は51団体ありますが、中には都の報告団体として位置付けられていること自体に、疑問を持たざるを得ない団体もあります。
都は報告団体についても早急に精査を行い、広範な都民から理解の得られるようその位置づけを明確にすべきと考えます。
見解を求めます。

【築地市場】
築地市場の移転再整備については、市場関係者から、ただでさえ厳しい状況にある経営に影響を与えない、負担の少ない計画となるよう要望されています。
しかし、民主党提案の現在地再整備案については、仮移転のための仮設と本設の2つの施設の建設が必要となることなどから、施設建設費が増大してしまうという問題点があります。
市場関係者にとっては、施設建設費が使用料の算定に直結しており、経営に大きな影響を及ぼします。
特別委員会で視察を行った大阪の市場でも、使用料が跳ね上がり、事業者の経営を圧迫していることが明らかとなっています。
民主党提案の現在地再整備案でも、使用料の水準が豊洲新市場の約1・3倍から1・6倍にもなると試算されています。しかし、この試算では、多層化構造に伴う増加分を加味していないため、使用料がさらに上昇し、事業者の負担が増大すると想定されますが、都の見解を求めます。
ところで、使用料の算定のベースとなる今回の現在地再整備案の施設建設費は、最大で、約1800億円となっています。この額は、過去に現在地再整備の施設建設費として、都が試算した3400億円とは、一見すると相当な開きがあり、実際に、一部新聞等では、過去の試算額の半額で現在地再整備ができるとの報道がなされたために、都民や市場関係者にとまどいをきたしております。
今回の現在地再整備案の施設建設費と、過去に都が試算した建設費では、なぜ、このような大きな乖離があるのか、都の見解を求めます。
民主党提案の現在地再整備案は、工期の長期化、使用料の上昇、売り場の多層化が避けられず、仮移転先の住民合意など、解決の見通しがつかない問題も抱えています。都議会公明党は、この問題に一刻も早く結論を出し、新市場の建設準備に早期に着手すべきであることを強く申し上げ、次の質問に移ります。

【駐車規制緩和】
第一回定例会において運送・配送事業者等の切実な声を受けて、駐車規制の見直しを求めたところ、「規制緩和の要望があり、荷さばき等の需要が多く緩和の必要性の高い40区間について、詳細に調査を行っている」と答弁があり、今回、その内の10路線について荷さばきに配慮した規制緩和がなされたことは評価するものであります。
その上で、30路線の進捗状況と更なる規制緩和について、警視庁の見解を求めます。
18年6月に施行され、21年4月から都内全域に拡大された民間委託駐車監視員制度も4年経過し、都民の違法駐車に対する規範意識も高まってきていると思われます。この制度導入による違反件数の状況と、今後の取組みについて、警視庁の見解を求めます。
関連して、近年特に多くなっている自転車事故について質問します。
自転車と人、自転車と車、自転車同士の事故が最近増えてきております。こういった自転車に起因する事故を防ぐために、今後は、民間の力も活用しながら自転車利用者に対するルール、マナーの遵守を働きかけていくべきであります。自転車事故撲滅に向けた取組状況について警視庁の見解を求めます。

【消防法令違反】
昨年11月発生した高円寺の居酒屋での火災について、類似火災を発生させないよう防火管理や出火防止対策の指導、火災原因を踏まえた防火安全対策を検討すべきと本会議で提案をしました。
その後、東京消防庁は、緊急の立ち入り検査や原因調査を行い、法令違反の指摘や再三の指導にも関わらず安全対策を取らなかったり防火管理の重要性を意に介さないといった関係者も少なからずいる実態も分かりました。
東京消防庁は、これらの調査結果を踏まえ、都民自身が危険を回避するとの視点から違反情報に関する公表制度を創設することを決めたところであります。
そこで、この公表制度の導入により、消防庁として防火策を強化していくべきであります。広報の仕方を含め、東京消防庁の具体的な取組みを求めます。

【スポーツ振興】
 去る7月16日、都にスポーツ振興局が新設されました。スポーツに関する所管部署を一元化した組織の設置は全国でもはじめてであり、その役割と使命は誠に重要であると考えます。
 このような中、都では「東京スポーツ奨励賞」が創設され、先日第1回の表彰式が行われました。若きアスリートの活躍に知事も大いに期待されていると思います。スポーツ振興に対する知事の熱い思いと決意を伺います。
 平成25年開催の国民体育大会と全国障害者スポーツ大会を「スポーツ祭東京2013」として開催することは、健常者と障害者が垣根を取り払い、一つのスポーツの祭典を創るという新しい試みであります。全国で初となるこの祭典の取り組みについて見解を求めます。
 都は「スポーツ都市東京」を目指し策定したスポーツ振興基本計画の中で「都民のだれもが、いつでも、どこでも、いつまでも、スポーツを楽しむことのできる社会」を基本理念としていますが、障害者スポーツの振興をはじめ、この理念を目に見える形としていくことこそ、スポーツ振興局が中心となって取り組む課題であります。見解を求めます。

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