平成28年《第4回定例会報告》
都議会公明党を代表して質問します。
「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない」。このあまりにも有名なユネスコ憲章の前文にあるとおり、分断や差別を生まずに利害の相違を乗り越える術(すべ)を、人類は見出していかなければなりません。
国政だけでなく都政においても、公明党は分断や差別と戦い、立場や習慣の違いを越えて、人と人とを結びつけることによって、迫り来る様々な課題を解決する力を生み出して参りたいと思います。
国で言えば、極端な自国優先主義、都政で言えば弱者への優しさを忘れたところは、そうした未曾有の善の力を獲得することはできないものと考えます。
そのうえで、都民が願い、支持する不断の改革の歩みの先頭に立って、都議会公明党は今後とも、生活現場の声や実状を踏まえ提案を重ねるものであります。
小池知事は就任以来、「セーフ シティ」、「ダイバーシティ」、「スマート シティ」の3つの視点を強調され、これらを踏まえ、「2020 年に向けた実行プラン」に対する都民の意見・アイデアが公募されました。
都議会公明党は、この3つの視点を重視し、昨日、小池知事に対し、実行プランに関する政策提言を行ったところであります。
本日はその提言を踏まえて、質問を行います。
まず、多様な都民が元気に活躍できる社会を目指す「ダイバーシティ」の観点から、何点か質問します。
【障害者理解促進・差別解消条例】
はじめに、障害者への差別の解消を目指す都条例の制定についてであります。
公明党は、国連で障害者の社会参加などを求めるための権利条約が採択された2006年以来、一貫して障害者の社会参加を図る法整備の必要性を訴えてまいりました。
その結実として、本年4月より障害者差別解消法が施行されました。東京においても、2020年大会に向け、障害者差別のない共生社会を力強く推進し、貴重なレガシーとして形にしていく必要があると考えます。
知事は先の所信表明で障害者への理解を深め、差別をなくす取り組みを一層促進するための条例案の検討に言及されました。条例の趣旨は、都議会公明党の主張とも合致するものであります。
障害者差別解消法の制定にあたり、公明党が最も重視した点は、障害者団体など当事者の意見を十分に反映させて法整備を進める点であり、障害者の意思決定支援や地域協議会の設置、相談支援体制の整備などを主張し、法律に盛り込んだところであります。
障害者差別解消法では、障害者の求めに応じて合理的配慮を図ることが義務化されています。都はオール都庁での窓口、出先施設等、障害者への合理的配慮を図れるよう体制を整えておくべきです。見解を求めます。
一方で、都で条例化を図る上では、より具体的に、不当な事例に関する勧告や名称の公表などを行う必要があり、より一層、障害者やその家族に不利益が生じないような安心感のある相談環境、公平・公正な調査や評価の仕組み等の点で、最善の努力を払う必要があります。
都における条例制定にあたっては、こうした点を十分に配慮し、障害者の誰もが主役となる社会の実現に向けた条例とすべきと考えます。知事に見解を求めます。
【特別支援教育】
次に、特別支援教育について質問します。
東京都は、この10月、第1回東京都総合教育会議を開催し、小池知事のもとでの教 育施策大綱の骨子を公表したところであります。
都は、この大綱骨子の中で、特別支援教育を重点施策としたほか、同時に、特別支援教育推進計画の第2期の第一次実施計画の骨子も公表しています。計画骨子では、わが党が強く要望してきた、教室不足解消への取り組みなどが具体化されており、評価するものです。
しかし、知的障害特別支援学校への通学を必要とする生徒数は今後も増加が見込まれています。
再び教室が不足するような事態を招かないよう、的確に人口推計を踏まえ、計画を設計すべきです。見解を求めます。
また、障害があっても生き生きと活躍できる社会の構築が大事です。一貫した切れ目のない特別支援によって、就労にも大きな効果が期待されます。
幼児期から小学校や中学校までは、一人一人の個別の支援記録は着実に引き継がれることになっています。しかし、高校進学時に課題があります。
たとえば、知的障害を伴わない発達障害などの場合、特別支援の中学から普通高校に進学するケースがあります。特別支援教育を受けていたことを明らかにしたくないと考える保護者もいて、特別支援教育の内容を記録した支援計画書を高校に渡さない場合があります。必要な支援が途切れてしまうため、対人関係に課題をかかえていることを揶揄され、いじめの原因となってしまうこともあるようです。
保護者の意志を尊重することは大切ですが、必要な支援が途切れる不利益は生徒本人に及びます。保護者の理解を得るため、高等学校への入学相談の充実が必要です。見解を求めます。
また、特別支援学校の卒業後に一般就労する場合には、職種や職場との適合を図り、働きやすいように調整する支援が必要です。わが党の提案で、現在、都は就労後の追跡調査を開始していますが。就労後まもなく離職してしまう原因を分析して、その後の対策に活かすべきです。見解を求めます。
【公私間格差是正】
続いて、高等学校における公私間格差の解消について質問します。
経済的格差が広がる中、親の所得によって子供の教育を選ぶ自由が阻害される不平等の解消を図る必要性が高まっています。
都内の高校生の約6割は私立高校に通っています。この比率は全国的にみても東京だけが抱える特殊なもので、それだけに、東京独自の対策の充実が求められています。
また、生徒一人当たりに支出される都の負担額は、都立高校で約95万6千円であるのに対して、私立高校では約38万3千円と、都立の方が2・5倍ほど多くなっています。
都は、都内高校生の教育環境の多くを私学に委ねている訳であり、その恩恵の分、より手厚く私学世帯に支援するべきです。
すでに、小池知事は高校生に向けた給付型奨学金の創設などを打ち出されています。
都立高校の授業料が年間11万8800円であるのに対し、都内の私立高校の平均授業料は年間44万円と約4倍も高くなっています。現在、都は国の就学支援金に加えて、世帯年収に応じて、都独自の授業料軽減助成金を上乗せ給付していますが、今後、新たに措置を講じることによって、その差額を実質無償化する必要があります。
その点、国の就学支援金制度により、都立高校ではすでに約7割の生徒の授業料が実質的に無償化されています。しかし、私立高校に通う生徒の世帯では、就学支援金を受給してもなお、その差額を支払い、負担となっています。
都議会公明党は、知事が打ち出された給付型奨学金の支給基準を就学支援金の基準と同じく、世帯年収約910万円未満の家庭とすべきと提案するものであります。知事に見解を求めます。
また、私立高校の入学金も大きな負担となっています。現在都内の平均入学金は約25万円に上っていますが、都の無利子の入学支度金貸付事業の貸付額は20万円に止まっています。5万円増額して25万円にすべきと提案します。知事に見解を求めます。
【受験生チャレンジ支援事業】
続いて、わが党が強く推進してきた受験生チャレンジ支援貸付事業について質問します。
教育の力で貧困の拡大を防ぐため、都は、平成20年度、受験の時期に間に合うように本事業をスタートさせました。
とりわけ、受験に合格出来たら、貸し受けた受験料や塾代を返済しなくてもよいという、本制度の根幹とも言える工夫は、平成20年6月の第2回定例会の本会議質問における、わが党の提案に対する答弁の中で、初めて表明されたものであります。
本事業では、貸付を受けた利用者のうちのおよそ99%が見事、合格を果たすなどにより、返済免除を勝ち取っています。経済苦を乗り越え進学にチャレンジする子供達の意欲を後押しするものであり、全国でも比類のない取り組みと言えます。
都議会公明党は、当初3年間の時限措置とされていた本事業の継続を強く求め、実現させたほか、高校受験にも適用の拡大を図り、さらに高校中退者が再チャレンジする際での活用まで実現してきました。昨年は、ひとり親家庭での所得制限の緩和を果たすなど、都と共にその充実を推進してまいりました。
しかし、年々申込者が増えているものの、まだ、本制度の存在すら知らないという保護者が多い現状にあります。加えて、努力次第で返済が免除されるという点に本制度の特色があることが、今一つ、都民に伝わっていない感があります。
都は、様々な手段を講じて、より多くの対象者に対し、合格によって返済が免除されるメリットを知ってもらい、利用が拡大するよう周知に努めるべきです。見解を求めます。
また、受験生チャレンジ支援貸付事業は、生活保護世帯を対象外としています。同様の効果が生活保護制度の中でも得られるという理由でありました。しかし、現在の保護制度では大学受験の費用などがカバーされていません。都はこの点の改善を急ぐべきです。見解を求めます。
【小・中トイレの洋式化】
教育に関連して、学校のトイレの洋式化について質問します。
わが国で、保有率の点で洋式トイレが和式トイレを逆転したのが1977年と言われています。総務省統計局のデータによると、全国の住宅での洋式トイレの保有率は、すでに9割に達しています。
しかし、家庭のトイレで洋式化が進む一方で、公立学校のトイレの洋式化は、全国で未だに50%を切る状況にあります。
一方、先日、文部科学省が発表した「公立小中学校施設のトイレの状況調査」によれば、洋式化は都内においても、区部で57%、市町村部で49%という現状に止まっています。
和式に慣れない小学校新入生に対し、「入学前に和式トイレの練習をしてきてください」という通知を出す学校が現在もあるとのことで、保護者からは困惑の声が寄せられています。
和式トイレを使い慣れていないため、学校にいる間は我慢する傾向もあり、児童・生徒の健康を考えても問題があります。
また、小中学校は、災害時には地域の避難所となる場所です。和式トイレでは膝に負担が掛かります。高齢者などが災害時に使用することを考慮すれば、対策は急務です。
これまで、都議会公明党は、公立小中学校における冷房の整備について、都の予算の投入を図り、推進を図ってきました。トイレの洋式化についても、国や区市町村の負担だけではなく、都の予算を投入して促進すべきと考えます。見解を求めます。
同様の課題は、都立学校にも当てはまります。都内では、高等学校で46%、特別支援学校でも77%という状況です。都立学校のトイレの洋式化をより一層強く推進すべきと考えますが、見解を求めます。
【食品ロスについて】
次に、「スマートシティ」の観点から、食品ロスについて質問します。
国連食糧農業機関によると、地球全体の食料の約3分の1が、無駄に廃棄されていて、昨年9月の国連で採択された「持続可能な開発目標」の中では、2030年までに世界全体の一人あたりの食品廃棄物の量半減と、食品ロスの減少の達成が掲げられています。
日本は、食料の大半を世界から輸入する一方で、年間約642万トンの食品ロスが発生しています。公明党は、昨年12月、食品ロス削減推進プロジェクトチームを立ち上げ、政府に対しても提言を繰り返し行ってきました。
食品流通業界での商習慣の見直し、フードバンク事業の支援、また防災備蓄食品の更新時の食品ロス問題、普及啓発などの取り組みが重要であると考えます。
都は、昨年度より食品ロス削減のモデル事業を展開していますが、今後東京オリンピック・パラリンピックをめざし、一大消費地である東京が世界にモデルを示していくべきと考えます。知事に見解を求めます。
【高齢運転者の事故】
次に、セーフシティの観点から何点か質問します。
まず、頻発する高齢運転者による事故を防ぐための対策についてであります。
高齢運転者が関与する交通事故は、最近、毎日のようにニュースで耳にするところであります。高齢社会の波は、着実に道路交通にも影響を及ぼしており、高齢者が加害者となる交通事故の防止に向けた早急な対策が望まれます。
そうした中、高齢運転者の交通事故を防止する対策として、運転免許更新時に行う講習の重要性が非常に高まっております。
しかし、高齢運転者が自動車教習所に受講申込みをしても、一部の教習所では、すぐに受講できない状況があると聞きます。
警視庁として、高齢者講習を迅速かつ効果的に実施するための対策を急ぎ講じていく必要があると考えますが、現状の課題の改善と今後の充実について、警視総監に見解を求めます。
また、研修の際に行われる認知症検査の基準が、実際の運転操作に見合っていないという指摘もあり、内容の改善が必要です。加えて、認知症の疑いがあるというだけでは、免許の発行を拒めないという現行ルールについても全国的な法規基準の改正が必要とのことであり、早急に見直すべきと申し上げるものであります。
一方、高齢運転者の重大交通事故を防止する有効な対策の一つとなり得るのが「運転免許自主返納の促進」であります。
警視庁として今後、自主返納がしやすい環境を整備すべきと考えますが、警視総監に見解を求めます。
【ゾーン30について】
昨今は、高齢者による運転だけでなく、生活道路における無謀な運転の横行という点でも、交通事故の不安が増しています。
都における交通事故発生件数と負傷者数は、平成12年をピークとして年々減少傾向にある一方で、安全が確保されなければならない通学路においては、依然として児童が巻き込まれる悲惨な事故が後を絶ちません。
都内の交通事故発生状況を道路幅員別にみると、平成17年から27年まで、全体の交通事故死者数は減少しているにもかかわらず、幅員が5・5m未満の狭い生活道路に限って言えば、死者数は増加しています。
そこで、生活道路対策の手段として、警視庁では区域を定めて最高速度30「の交通規制を行う「ゾーン30」を推進しておりますが、これまでの整備効果と、今後の整備方針等について、警視総監に見解を求めます。
【通学路の安全・ビッグデータの活用】
通学路の安全を確保するためには、「ゾーン30」の活用に加えて、都内のどの場所に危険が存在しているのかを、具体的に明らかにしていくことが必要です。
道路の料金所などの通行をスムーズにするため、ETC2・0と呼ばれる機器の車両への取り付けが進んでいますが、その機器を通じて個々の車両の走行情報がビッグデータとして、国土交通省で集積されています。
この情報を活用すれば、都内の各通学路における車両の通行状況、具体的には通行が多い時間帯や、実際のスピード、加速・減速の状況などが明確に分かるようになり、危険な場所の特定が容易になります。
通学路の安全対策を進めるために、国土交通省が集積している車両通行のデータを積極的に活用すべきと考えますが、警視総監の見解を求ます。
【視覚障害者バリアフリー】
次に、視覚障害者の交通安全対策について質問します。
駅のホームドア同様、街なかにおける視覚障害者の交通安全対策を求める声が、わが党にも数多く寄せられています。
2020年パラリンピック大会後も、東京のレガシーとして残せるよう、競技会場周辺だけでなく、都内全域で視覚障害者用の音声付信号機や、横断歩道上に点字ブロックを敷設するエスコートゾーンの設置などの視覚障害者の交通安全対策を計画的、積極的に進めるべきと考えます。警視総監に見解を求めます。
【空き家活用】
次に、「住まい」の課題について何点か質問します。はじめに、空き家活用についてであります。
都内に広がる約82万戸の空き家住戸は、まさに「眠れる資産」であり、その活用は都内の景況を大いに活気づかせます。加えて、困難な都政課題に有望な解決の糸口を提供するものであります。
そこで今回、わが党は小池知事に対し、三点の空き家活用策を提案したいと思います。
まず、急増するインバウンド需要に対応する、宿泊施設としての活用であります。
私の地元である豊島区では、居住支援協議会による検討がきっかけとなり、空き家を宿泊施設に転用する取組みが始まっています。
その実例の一つが、二階建ての空き家を、一階は「ミシンカフェ」、二階は「旅館」としてリノベーションした取り組みです。ミシンカフェではミシンを貸し出し、布地などを持ち寄って活用し合い、地域の絆が育まれています。その二階が旅館になっており、外国人が好む畳敷きの和室を中心に5室10ベッドが整えられています。
今後、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを機に、一挙に外国人訪日客が増加すると予想されています。不足する宿泊施設への対応は、都内の喫緊の課題です。
加えて、観光は、2020年以降も継続した発展が期待できる都内の有望産業です。その成長を支えるために必要なインフラ整備策として、都内の豊富な空き家資産を活用すれば、低廉なコストで速やかに客室増を果たすことが出来るはずであります。取り組みを開始すべきです。見解を求めます。
次いで、高齢者や障害者などの住まいの場としての空き家の有効活用であります。
住み慣れた地域の中で、顔馴染みの安心感を活かしながら「共生」を図ることが、互いの良さを引き出し合う助け合いにつながります。
こうした取り組みを都内で進める上では、まさに、空き家の活用が重要です。
ようやく本年3月、厚生労働省は都道府県等に対し、「共生」を図るガイドラインを示しました。都内でも高齢者、障害者、児童などの「共生」を推進するべきと考えます。
都はこうしたことも踏まえ、区市町村と連携しながら、福祉サービス基盤の整備に空き家の有効活用を図るべきと考えますが、見解を求めます。
一方、空き家対策の推進には、区市町村が主体となった取り組みが不可欠です。
しかし、条例や対策計画の制定や策定に取り組んでいる自治体もあるものの、いまだその取り組みに温度差があります。
東京都においても、この11月に住宅政策審議会から答申が示され、空き家対策の内容が数多く盛り込まれたばかりです。
そこで、都としても、住宅や福祉、観光などの行政の壁を越えた取り組みが都内全域で進められていくことを目指し、空き家活用の促進に向けて、総合対策の立案を急ぐべきと考えます。見解を求めます。
【住宅政策】
かつて、都の行政組織には住宅局があり、国をもリードして、先進的な住宅行政を展開しておりました。ところが、石原知事の時代に、局の編成替えが行われ、都市整備局の中の一つの部署となって以来、独自の予算確保が行えなくなっています。
都議会公明党は、住宅行政に求められる、昨今のニーズの変化を踏まえ、マンション課の創設や環境貢献、局長級ポストの新設などの提案を重ねてきました。
しかし、具体的な進捗を見せていない課題も多く、空き家対策という新たな課題に本格的に挑むためにも、都の住宅行政は抜本的にテコ入れすべき段階を迎えていると言わざるを得ません。そこで、小池知事に提案します。
住まいの安定と充実は、住民福祉の根幹であり、都市の豊かさのバロメーターであります。都は今こそ、新時代に応じて住宅部門をリニューアルし、局を復活させるべきです。知事に見解を求めます。
【都営住宅制度の増戸要望】
本日は、住宅行政の刷新を求める上で、まず、都営住宅を取り上げます。
都営住宅においては、老朽化対策としての建替えの促進に加え、高止まりする入居倍率や高齢化に伴う団地管理業務の負担感への対応など、喫緊の課題を抱えています。
都営住宅の管理戸数の上限を変えない方針を金科玉条とする限り、高齢者に門戸を広げれば若者の入居チャンスが減り、若者に門戸を広げれば高齢者の申し込み倍率は一層上昇するというジレンマに陥ってしまいます。
高齢者向け住戸の必要性は言うまでも無く、東京というメガ・シティの都市機能を維持していくためにも、担い手である若い世代向けに、安価で良質な公共住宅を整備していくことは、極めて重要であります。
今後、建替え時以外での新規建設や建替え時の住戸数の増加に積極的に取り組むことを強く求めておきます。
【都営住宅の共益費】
一方、高齢化を踏まえ、都営住宅での自治会活動を支える取り組みが必要です。
名義人に限ったデータでありますが、都営住宅の名義人のうち、65歳以上が占める比率は65%を超えています。公社住宅での同じ比率が50%を切っていますので、都営住宅での高齢化ぶりが如実に分かります。
都営住宅では、団地の維持管理に必要な共益費の徴収や敷地の草刈り、共用廊下の電球の取替えなどに要する費用が、もともと家賃額の算定基準に組み込まれていません。そのため、自治会を中心に住民が自らの労役で代替し、負担し合っていますが、その多くの部分は自治会役員などで担っているのが現状であります。
しかし、役員も高齢化し、体力が衰え、管理作業を担い続けるのが困難になっています。
都は、わが党の求めなどに応じて、住宅供給公社側でそれらの管理業務を請け負う事業を開始しようとしています。自治会負担の軽減に取り組むことは評価しますが、作業項目ごとに委託費が嵩むため、委託項目を限定せざるを得ないという課題もあります。
特に、問題なのは、もともと家賃算定に組み込まれていないことが原因とはいえ、共益費の徴収について、貸主が入居者から徴収に要する費用を手数料として徴するという考え方それ自体に、違和感を禁じ得ないという点にあります。
もともと、都営住宅は福祉目的もあって設けられた制度であり、そうした手数料の取扱いにおいても、福祉という視座から検討し直し、国との協議が必要であれば積極的に乗り出すべきであります。都独自の改善の余地も含め、知事に見解を求めます。
加えて、若年子育てファミリーの入居を促進させるために設けられた「期限付き入居制度」については、改善を急ぐ必要があります。
一般的に若い世代は自治会活動に馴染みにくい傾向にありますが、その中でも、意欲的に活動に参加し、年配者から頼りにされている事例も少なくありません。しかし、せっかく役員となっても、期限が到来すれば団地から退去しなければなりません。こうした事例が今後も重なれば、初めから自治会活動に参加しない期限付き入居者が一層増えることになってしまいます。
例えば、民生委員制度では、町会自治会の推薦を受けて選考される仕組みとなっています。こうした工夫を参考に、自治会活動の活発化に向けて、期限付きの入居制度の改善に取り組むべきです。知事に見解を求めます。
【オリンピック・パラリンピック】
次に、2020年オリンピック・パラリンピック東京大会について質問します。
【会場見直し】
まず、オリンピック・パラリンピックの会場見直しについて質問します。
11月29日に開かれた都、IOC、組織委員会、国とのいわゆる四者協議では、ボート、カヌー・スプリント会場は、現行の海の森水上競技場で約200億円、また、水泳会場も2万席から1万5千席に規模を縮小する150億円規模の経費縮減案で合意しました。小池知事のIOCバッハ会長との会談で、都がIOCと直接話し合う四者協議の枠組みができ、精力的に検討・交渉を進めた結果と、率直に評価したいと思います。
一方、注目されてきた宮城県の「長沼ボート場」は、ボート、カヌー・スプリント競技の事前キャンプで活用することで決着しました。被災地での競技開催には至りませんでしたが、わが党がこれまで強調してきた「復興五輪」という重要な意義が、都民、国民に再確認されたと思います。なお、都議会公明党はこの間、都外の候補地に挙がっていた長沼及び彩湖の現地視察を行い、党内検討を続けてきました。しかし、肝心の都の調査チームが、長沼ボート場を視察することなく最初の報告書をまとめていた事実が、わが党の質問で明らかになりました。こうした事実は、小池知事の判断をミスリードしかねない危険性をはらんでいると憂慮しております。
今後の焦点は、バレーボール会場の決定ですが、先の四者協議のおけるIOC幹部による一層の経費削減を求める声や、「アジェンダ2020」の精神に則り、経費縮減の可能性を最後まで追求すべきであります。大会にかかる総経費の縮減に向けた知事の見解を求めます。
【パラリンピックについて】
次に、パラリンピックについて質問します。
「パラリンピックの成功なくしてオリンピックの成功なし」。都議会公明党は、一貫してこのことを訴えてきました。
世界で初めて2度目のパラリンピックを開催する東京は、国や大会組織委員会と一体となって、都民・国民に夢と希望を与える見事な成功を勝ち取らなくてはなりません。
そのためには、観客が選手と一体となって熱い声援を送れるよう、大会に向けた気運を醸成していくことが最も重要です。
2020年東京大会の成功は、障害者の社会参加を促進し、持てる能力が最大限に発揮される社会の実現に通じるものでなければなりません。2020年東京大会は、障害のある人もない人も、互いに支え合う社会を実現する契機となるような大会とすべきであり、今こそ、パラリンピックにかける「東京の情熱」を世界に大きく示すべきであります。知事の見解を伺います。
【障害者スポーツの場の確保】
2020東京大会のパラリンピックを成功させるためには、障害者スポーツへの理解促進といった十分な気運醸成と、障害者スポーツ人口の裾野の拡大といった準備が必要です。しかし一方で、パラリンピック競技のアスリートでさえ、練習場所の確保に大変に苦労しているとの声が挙がっています。
その理由は、施設がバリアフリーになっていない、チームメンバーが複数の区市町村にわたっており施設の優先予約ができない、など様々です。
こうした状態を放置したままでは、都内のパラリンピアンが2020東京大会で最高のパフォーマンスを発揮することは困難であります。高まる障害者スポーツ熱にも水を指してしまいかねません。
都は、障害者スポーツ特有の事情も考慮に入れながら、障害のある人が継続してスポ一ツに取り組めるよう、「場の確保」に向け、積極的な支援に取り組んでいくべきと考えます。今後策定するスポーツ推進計画に盛り込むべきです。併せて、都の見解を求めます。
【パラ会場の満席】
パラリンピアンの最高のパフォーマンスは、アスリート本人の限界までの努力に加えて、応援する観客の熱い声援によって、限界を超えた潜在能力が引き出され、思いもよらない結果に結びつき得られるものです。そして、その一体感が、観客の感動をさらに倍増させてくれます。パラリンピックの観客席が満員になれば、試合は大いに盛り上がります。
そのためには先ず、障害者も健常者も共に快適に、パラリンピックを観戦し、応援できる環境を整備することが必要です。
外出を控えがちであった障害者にも快く会場に足を運んでもらえるよう、バリアフリーに配慮した座席やトイレはもちろん、介助者や家族・友人と一体になって楽しみながら観戦経験ができる環境を整えるべきと考えます。
出来る限り多くの観客に、実際に試合会場でパラリンピック競技を楽しんでもらえるよう、様々工夫を講じるべきと考えますが、見解を求めます。
また、2020東京大会は、子どもたちにとって学校の夏休み期間中になりますが、丁度、パラリンピック大会の盛り上がりが頂点となる頃に第二学期が始まります。
またとない東京パラリンピックを、次世代を担う東京や被災地の子供たちに直接会場で観戦してもらえる工夫が必要です。例えば、学校や企業の理解を得ながら、開催期間を「パラ応援ウィーク」と定め、オール都民がそれぞれの都合に応じて観戦に出掛け合うなどのムーブメントを展開し、盛り上げてはどうかと提案します。見解を求めます。
加えて、パラリンピック競技や選手について、事前にパラリンピック教育を推進すべきと考えます。見解を求めます。
【被災地応援ツアーの継続】
東京2020大会に関連して、被災地支援について質問します。
都議会公明党は、招致段階から「復興五輪」の理念を掲げ、様々な施策を提言し、実現に取り組んできました。この意味から、第3回定例会代表質問において、都議会公明党は大会開催都市の知事として、東日本大震災の被災3県を訪問し、各県の知事と胸襟を開いて懇談し、被災地に対して何ができるのか把握してもらいたい旨要望したところです。
小池知事が早速、先月上旬、福島を訪れて県内各地を巡り、県知事や地元の方々と懇談されるなど、率先して被災地支援に取り組んでいることを高く評価します。
震災により生じたさまざまな風評や、時間の経過とともに進む記憶の風化を克服するため、これからも、被災地に向けた都の支援は必要であると考えます。
特に被害が深刻であった福島に対して、都議会公明党は、発災後間もない平成23年から被災地応援ツアーの事業化を図り、旅行者が一人でも多く県内を訪れて観光産業を後押しすることを目指してきました。
福島への観光客の来訪が震災前の水準にあと一息で戻ろうとする平成29年度も、改めて引き続き被災地応援ツアーを実施し、県内の経済と住民生活の回復に寄与する支援に取り組むべきと考えますが、知事の見解を伺います。
【無料Wi‐Fiの拡大続】
2020年の東京大会に向けて、「おもてなし」を充実するための基盤整備が求められています。
国では、観光先進国への新たな国づくりに向けて、2020年の訪日外国人旅行者の目標を4千万人とし、受け入れ環境整備の一つとして、無料公衆無線LANいわゆる無料Wi‐Fiの更なる整備促進を打ち出しています。
都でも、長期ビジョンで2020年の訪都旅行者数目標を千五百万人とし、平成26年に「外国人観光客の受入環境整備方針」を策定しました。この中には、情報通信技術の積極的な活用で、2020年に向けて都立施設等における無料Wi‐Fiサービスの提供のほか、街なかにおけるWi‐Fiアンテナの整備目標を700基程度とすることも盛り込まれております。
ところが、平成27年度からWi‐Fiアンテナ整備の事業がスタートしていますが、公園や文化施設などへの整備は順調なものの、観光案内標識の周辺については、アンテナ設置者と道路管理者などとの間に、調整が必要な課題が様々存在しています。
街なかでのアンテナ設置を進めるには、観光案内標識の他、例えば、誘導サインやバス停などにも拡大するなどの整備が必要です。
そこで、Wi‐Fiアンテナ設置に関する局横断の会議を開くなど、その検討体制をつくるべきです。見解を求めます。
【豊洲市場問題】
最後に、豊洲市場への移転問題について質問します。
都議会公明党は、東京都が豊洲市場の建物の下に盛り土をせず空洞を建設したことが判明した後、直ちに調査チームを設置し、現地調査を含め原因究明に向けた徹底した取り組みを行ってきました。
その結果、10月7日の経済港湾委員会において、都が実施した第一次調査報告書に虚偽の記載があったことが明らかになり、知事の指示により改めて調査報告書が作成されました。
この第二次の調査報告書においては、「何時、何処で、誰が」建物の下に盛り土を行わなかったのが、明らかになりましたが、一番重要な「何のために」という部分が明確になっていません。
都は、建物の地下に空洞を作ると判断した段階で専門家会議が決めた安全対策と異なる手法で工事を実施するのであるなら、本来専門家会議に再度検討してもらう必要があり、議会でも審議をし、その上で環境アセスメントの再審議にかけなければならなかったはずであります。にもかかわらず、「なぜ」そのことをしなかったのか。都議会公明党は、そのもっとも大きな要因は、平成21年2月6日に策定された石原知事決定の「豊洲新市場整備方針」の中で示された、新市場開場平成26年12月にあると考えております。
当時、都は平成28年東京オリンピック招致を目指しており、整備方針策定の6日後に招致に向けた立候補ファイルを提出しております。中央卸売市場の市場長をはじめ担当職員は、平成26年12月開場に向け、極めてタイトなスケジュールの中、工期の延長やあと戻りすることは許されない状況下にあり、仮に専門家会議、技術会議、そして議会審議にフィードバックしたり、環境アセスを見直したりすると、整備スケジュールが間違いなく延び、平成26年12月開場ができなることを強く危惧していたものと考えます。つまり、2016年時点でのオリンピック・パラリンピックを招致という大きなベクトルが作用していたと仮定すると「なぜ」が見えてきます。こういった問題は、市場当局のみで判断できるものではなく、都全体で検討されたのではないかと考えますが、知事に見解を求めます。
最後に、中央卸売市場は、市場の執行体制が刷新され、知事からも豊洲移転に向けたロードマップが示されました。負の循環を断ち切り、問題解決に向けた前向きな取組を進めるために、食の安全・安心を第一に考えるという原点を肝に銘じなければなりません。
失われた都民の信頼を取り戻すには、専門家の客観的な見解に従って事業を進めること、それも含め、安全・安心の確保に向けた様々な取組を都民にわかりやすく伝えること、これを徹底すべきであります。信頼回復に向けた、知事の見解を求め、代表質問を終わります。