平成25年《第4回定例会 代表質問》
都議会公明党を代表して質問します。
四百三十万票もの期待を担って誕生した猪瀬知事に対する突然の疑惑報道に、都民は今、大きな怒りと深い失望を感じています。せっかく勝ち取った2020年のオリンピック・パラリンピック招致の決定にさえ、傷を与えかねません。
年の瀬の厳しい資金繰りに直面する中小・零細企業の経営者の間には、五千万円もの大金を無利子、無担保、無保証、しかも無期限で借り受けたとされる猪瀬知事に対し、激しい怒りが渦巻いております。
都庁の一般職員は、「利害関係者との接触に関する指針」において、低利の賃借さえ禁じられています。しかも、実際に職務上の配慮を施したかどうかも関係ありません。ひとえに、都民の信頼を損ねることを避けるために厳しい自戒措置を設けているのであり、現に平成14年8月には、99万円の無利子賃借で懲戒免職となった職員の例もあります。
知事は、記者会見で「病院も老健施設も都内で徳州会がやっていることは知らなかった」「建設予定があることも知らなかった」と述べられましたが、平成19年から副知事を務め、しかも平成20年11月からは東京都の周産期医療体制整備プロジェクトチームの座長を務めるなど、医療行政に熱心だった当時の猪瀬副知事が、知らなかったではすまされません。ましてや、病院や老健の設置について、都が何かしらの許認可や補助金の権限を有していることは、都政関係者ならば誰もが知る常識であります。
法的な判断の結果を待つまでも無く、道義的、政治的責任は断じて免れません。たとえ、知事の言うとおり、資産報告における不実記載であったとしても、都政のトップ自らが都条例を破ったことだけでも前代未聞の不祥事であり、到底容認できるものではありません。
都議会公明党は、これまでの記者会見や所信表明を聞く限り、質疑の形式が一方通行の本会議では、これ以上の事実は明らかにならないと判断し、まずは総務委員会に移して、一問一答で質していく方針を固めました。
改めて、知事には真実を明らかにすることを求めておきます。
都知事の職は、都民との信頼の上に成り立つものであります。わが党は、本定例会においては、疑いの渦中にある猪瀬知事には、代表質問と一般質問を通し、その他の政策課題についても一切、答弁を求めないことに致します。
猪瀬知事の疑惑に決着が付くまでの間も、都政には停滞が許されません。この問題の推移の如何に関わらず、わが党は、都庁と都議会の関係各位と力を合わせて、迫り来る様々な都政課題に適切に対応し、2020年の東京大会の成功を目指して参ります。その決意を申し上げて、以下本題に入ります。
去る10月16日発生した大島土石流災害は、死者35名、行方不明者4名という、甚大な被害となりました。ここに、ご逝去された方々及びご遺族の皆様に哀悼の意を捧げますとともに、負傷者の皆様に対し心よりお見舞い申し上げます。また、行方不明になっている方々の一刻も早い発見をお祈りいたします。
【公明党の救援・復旧支援活動】
発災直後、わが党の大島町議は被害の大きかった地区に直行。目を疑うような変わり果てた惨状の中、泥だらけになりながら被害状況の把握に奔走しました。
その情報は、すぐさま都議会公明党にも伝えられ、翌日には、わが党の都議会議員、国会議員が相次いで現地入りし、応急給水支援や、住民相談窓口の設置、ガレキの早期受入れなど被災地のニーズに迅速かつ的確・具体的な対応を図るよう都に申し入れ、実現させてまいりました。
【伊豆大島の復旧支援】
私も、被災1か月後の課題を調査する為11月19日都議会公明党調査団の一員として、現地入りしました。土石流によってなぎ倒された流木などガレキの大部分は除去されていましたが、主を失い手つかずとなったままの倒壊家屋や、折れ曲がったビニールハウスなども散見され、改めて、自然の猛威を思い知らされました。
大島町では現在も「災害対策本部」が継続中ですが、今後は「復興対策本部」が設置されます。同対策本部が取り扱う業務は、被災者の生活再建をはじめ、町道などの復旧、観光・農業・漁業など産業の回復、砂防・治山工事の実施などソフト・ハード両面にわたって膨大であり、町役場だけでは到底対応できません。都は大島町復興に向け全力で支援すべきです。見解を求めます。
次に、被災者の心のケアについて質問します。
現地では、災害により家族を失った方や児童・生徒及び団員など救出・救援活動に携わった方々のなかに、心に傷を負った方々も多い、との声も聞きました。都はすでに大島町の要請を受け、保健師や心理職、スクールカウンセラーなどの専門職を通じ、心のケアを行っています。しかし、心の不調や障がいは、時間が経過してから発生するケースもあることから、こうした取り組みを継続し、注意深く見守っていく必要があると考えます。今後の対応について、教育庁及び福祉保健局の見解を求めます。
伊豆大島の風物詩といえる椿まつりは、例年1月下旬から3月下旬まで開かれ、約4万人の観光客が訪れる、同島最大のイベントです。大島町では、自分たちの力で、被災地になった島を盛り上げていく思いから復興に向けたキックオフ行事とするべく、椿まつりを明年1月26日から開催すると決めたそうでありま す。
都は、被災された方々の心を癒すために、芸術文化を活用した支援を行うとともに、椿まつりの積極的なPRをするなど来島者を増やす支援をすべきであります。例えば、都響やヘブンアーティストを派遣するなど、具体的な取組みを検討すべきと考えますが、見解を求めます。
【洪水対策】
次に、豪雨対策について伺います。今回、大島を襲った台風が、もし東京の区部や多摩地域を襲っていれば、さらに甚大な被害が発生したであろうことは、容易に予測されます。
現に、平成17年の集中豪雨では、神田川、妙正寺川、石神井川流域など杉並、中野、北区などで洪水が発生し、住宅など約5800棟(むね)が浸水。また、平成22年には石神井川流域の練馬、板橋、北区などで660棟(むね)が浸水しました。夜間、瞬時に床上高くまで浸水した家屋もあり、被災された多くの住民の皆様が現在でも大雨の度に恐怖を感じておられます。
東京都は、これまで時間50ミリの降雨に対応できるという整備水準を目標に、護岸整備や調節池などを組み合わせ、治水対策を進めてきました。しかし、近年の気候変動などにより、「ゲリラ豪雨」と呼ばれる時間100ミリ以上の局地的な集中降雨が都内で発生するようになりました。今年も豊島区や目黒区で時間100ミリを超える「ゲリラ豪雨」に見舞われました。
このため、都は昨年11月、河川の整備水準の目標を区部は時間75ミリ、多摩地域は65ミリに引き上げましたが、過密化が進み川幅を大きく広げることのできない都心部をはじめ都内において、これらの整備水準を達成するためには調節池の果たす役割が重要になります。調節池の整備には時間がかかることから、一刻も早く具体的な検討を進めていかなければなりません。新たな整備水準の達成に向けた取り組み状況について伺います。
【特定緊急輸送道路】
平成23年3月11日、東京都議会は特定緊急輸送道路に面する旧耐震の一定規模の建物の耐震化を促すため、いわゆる「耐震化条例」を議決しました。阪神・淡路大地震の教訓を踏まえ、首都直下型地震から、都民の生命財産を守るために制定した耐震化条例は、まさに、東日本大震災が発生したその日に成立したのであります。
その後、努力義務期間を経て、昨年4月には診断の完全義務化がスタートしました。すでに、多くの対象建物で耐震診断が実施されていますが、残念ながら、3割弱の特定沿道建築物がいまだに実施されていません。都内での震災被害の拡大を抑制するためには、何としても耐震化条例の制定目的を完遂し、残りの建築物についても、1日も早く耐震化を実現しなくてはなりません。
しかし、耐震診断では、建物調査などに一定の期間を要するため、助成の期限である今年度末までに、診断の完了が間に合わないとの声があがっています。都や関係自治体が総力を挙げて、平成27年度までの耐震化の完了を目指す中、診断実施に前向きになり始めた建物所有者の気持ちを削ぐことのないよう、診断の助成期限を延長すべきと考えますが、都の見解を求めます。
都は、原則として自己負担なしの診断助成を実施しています。しかし、建物構造が複雑である場合などでは、耐震診断に必要な調査項目が通常よりも増えて、結果的に助成金の限度額を超えてしまい、一定の自己負担が生じる場合があると聞いています。ようやく診断に至った後も、耐震改修工事には、より多額の費用を要するため、工事費用の捻出が、所有者にとっての最大の悩みの種です。
そこで、診断から改修に至る耐震化の取組みの全体の中で工夫を凝らし、建物所有者が負担する総費用を少しでも軽減していくことが、耐震化加速の最善策と考えますが、見解を求めます。
【被災地への支援】
次に、東日本大震災の被災地支援について質問します。
わが党は、都による的確な支援策を講じるため、復旧・復興の進展に合わせて被災地を訪問し現場からの政策提言を積み重ねてきました。先月も岩手、宮城、福島3県を視察し、関係者と意見交換してまいりました。
【被災地支援について】
復旧から復興に移りつつある被災自治体では、県外等に避難している住民をいかに早く帰郷させることができるかが課題となっております。県外避難者は、いつごろ帰郷できるのか、仕事があるのか、子どもはどの学校に通わせるのか、など先行きが見通せず、焦燥感を募らせています。
都内には、いまだ8千人を超える方々が不慣れな土地で避難生活を余儀なくされております。一方で、避難者の中には長引く避難生活の中で帰郷をあきらめ、都内で生活していくことを選択する人も出てきているのも事実です。
震災から3年、避難者の思いは個々に異なり、求められる支援策も多岐にわたっております。都は、避難者の生の声を拾い上げ、現状を十分に把握した上で、被災自治体と協議するための連絡機関を設置するなど、被災自治体と十分に連携して避難者支援を進めるべきです。所見を求めます。
次に、地震、津波被害のほかに原発事故とも闘われている福島県支援について、質問します。
第一に、福島県産業の柱の一つである観光への支援策についてであります。まずは、わが党が提案し、都が平成23年から3年連続実施してきた被災地応援ツアーを高く評価をするものであります。
しかしながら、県内への観光客は、未だ震災前の水準の8割に満たないのが実情です。福島県からも「あともう一押しと言う状況のため、是非とも被災地応援ツアーを来年度も継続してもらいたい」と、県知事名での要望書を預かってまいりました。被災地応援ツアー継続に向けての見解を求めます。
第二に、福島県の農水産物への風評被害対策であります。
農産物については、これまでの県独自の取組みに加え、都もわが党の提案を受けて、消費者団体などの被災地研修を実施するなど、その安全性の説明に努め成果を挙げてきております。
しかし、水産物については、いまだ風評被害を払拭する上で効果的な手が打たれていません。消費者に安全であることを確認してもらい、安心感を与えるためにも、水産物を対象とした消費者団体の被災地支援研修会を実施すべきです。都の見解を求めます。
【被災地支援・岩手】
現在、津波で打撃を受けた地域では復興に向けて新しいまちづくりの検討が進められています。とりわけ、奇跡の一本松で知られる岩手県陸前高田市では、先進的な福祉のまちづくりを復興の主眼に据え、防災面も含め高齢者や障害者が安心して暮らすことができる取り組みを推進しています。
東京はオリンピック・パラリンピックで「被災地の復興した姿を世界に示していく」と位置付けています。被災県がパラリンピアンの競技合宿などの誘致に取組めるよう、福祉の先進都市を標榜する東京から、被災地の福祉のまちづくりにノウハウを提供できる機会を設けることが、新たな被災地支援策になると考えますが、所見を求めます。
陸前高田市などでは市外との交流人口を増やすプロジェクトを推進しており、その中で防災研修の受け入れ態勢も整えています。都内の町会・自治会や商店街関係者をはじめ多くの都民が、被災地に足を運び、震災から得た教訓を学ぶことは東京の防災対策をさらに進めていくことにもつながります。
研修の受け入れ態勢のある被災の自治体が、多くの都民の来訪を求めてアピールする場を設けられるよう支援していくべきと考えますが、見解を求めます。
【東京のレガシー】
東京を代表して、積極的に被災地に赴き、復興支援に尽力した団体の一つが、東京都交響楽団、いわゆる都響であります。実は、都響は、1964年の東京オリンピック大会を記念して、「首都東京の音楽大使」として創設された、前回大会のレガシーでもあります。
この都響は、一流の音楽を子ども達、お年寄りやハンディキャップを持つ方々にも届けてきました。
わが党からの要望に応えて被災地の方々にも、積極的に励ましの演奏を届けてくれました。まさに、被災地の心の復興に大きな役割を果たしてきました。
そこで、まず、被災地支援をはじめとする、都響の教育・社会貢献活動への取組について伺います。
また、都響は再来年創設50周年を迎えます。その間、世界一流の指揮者や演奏家たちの競演などを通して、着実にその演奏技術を高めており、いわば我が国を代表するトップレベルのオーケストラの一つであります。
7年後のオリンピック開催を視野に入れると、都響を都の持つ優れた文化資源としてさらに充実させていくとともに、多彩な活動を展開して、その魅力を国内外にアピールしていくことが重要であります。今後の都響の活動について、見解を求めます。
【今回大会での被災地支援】
東京でのオリンピック・パラリンピックの開催は、被災地においても大きな希望となり、復興の姿を全世界に発信していく絶好の機会であります。
しかし、開催都市決定に沸きあがっている一方、被災地においては復興が遅れてしまうのではとの懸念の声も聞かれます。2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催にあたっては、被災地の復興なくして成功はありえないとの強い決意を断じて絶やしてはなりません。その意味でも、被災地の声を大会に反映させていく仕組みづくりが大切であります。
明年2月には大会組織委員会が立ち上がるスケジュールとなっておりますが、その大会組織委員会の中に、被災地の方々の声を具体化する専任の部門を設置すべきと考えます。見解を求めます。
【教育】
次に、教育について伺います。
グローバル化が進む世界にあって、未来を担う子ども達には、伸び伸びと活躍できる力をつけさせていかなければなりません。その第一歩は何といっても語学であり、東京都教育委員会は、様々な取組みを展開しております。
国際社会では、言葉や文化の違いを超えて、人間同士としてつながるコミュニケーション力が必要となります。「言わなくても伝わる」という情緒的な交流ではなく、母国語であれ、外国語であれ、的確に言葉を選び、論理的に伝え合い、理解し合っていく、言語能力が求められます。
そこで、都教育委員会は、現在、国語を中心にすべての教科において、言語能力向上推進事業に取り組んでいます。国際社会で活躍するための必須の能力として、子ども達の言語能力を磨くための取り組みを一層充実する必要があると考えますが、所見を求めます。 教員の資質向上の課題は日本だけはなく、世界の主要国共通の重要課題になっています。
教育大臣レベルの会合はAPECで4年ごとに開催されており、G8の教育大臣フォーラムの議長声明でも「国際経験を通じた能力向上の機会を教員に与えることに特別の優先順位を置く」と記されています。
教員同士が文化や言語の違いを超えて切磋琢磨し合うことは、互いの教育力向上に大きく寄与しますが、実際には教員同士の国際交流は、まだ緒についていません。
教員の海外派遣等の機会をとらえ、都教育委員会が率先して現地の教育委員会や学校との協力関係を構築し、教員同士の交流の促進に取り組むべきです。見解を求めます。
【若年者支援】
次に、少子高齢化対策について質問します。
都議会公明党は、都庁の「構造的福祉プロジェクトチーム」の検討に呼応して、会派内に「少子化対策」と「高齢化社会対策」の二つのプロジェクトチームを設置し、検討を進めております。
まず、少子化対策については、子育て中の家庭への支援はもちろん、経済的理由などから、結婚や出産をためらう若者を支援していくことが、基本的な対策として重要であります。子育て家庭への支援について都は、有識者などで構成する「子供・子育て会議」を立ち上げ、子育て中の都民の意見も聞きながら、新たな計画を策定するとしています。
そこで、もう一方の柱である若年者支援についても、支援の対象となる若年者自身の声を聞くため、同様の会議を立ち上げ、効果的な施策に結び付けるべきです。見解を求めます。
【産後ケアセンターについて】
子育てのスタートとなる、産後ケアの充実もまた、重要な柱です。出産後の女性は、育児の悩みなどから情緒不安になりがちといわれております。
世田谷区と武蔵野大学が運営している世田谷区の産後ケアセンターでは、出産後4か月未満の母子が宿泊や日帰りで滞在し、助産師と保育士が24時間体制で心と体の両面から支援しております。都議会公明党は先月、視察しましたが、充実したケア体制が評判を呼び、予約に十分対応できないほど希望者が増えているとのことで、産後ケアに対する公的支援強化の必要性を改めて痛感しました。
また、出産後速やかに適切な支援につなげるためには、妊娠中から相談支援を始めることも有効です。核家族化の進行や、地域コミュニティーの希薄化が著しい東京においては、特にこうした支援が求められております。
都は、産後ケアの充実を子育て支援策の重要な柱の一つに据え、強力に推進すべきと考えますが、見解を求めます。
【保育所の待機解消・保護者負担軽減】
13時間の延長保育や低年齢児への保育など、大都市特有のニーズに対応するために創設された認証保育所は、都内の待機児童対策として、今や不可欠な存在となっています。
一方、国は、これまで一向に認証保育所の実績を認めようとせず、認可保育制度にこだわり、今年6月には、認可外保育施設に対する認可への移行支援策を打ち出しました。
しかし、東京都が誇る認証保育所は、多様な保育ニーズに柔軟に対応できるよう工夫されており、当然のことながら、認証保育所を進んで選択した保護者のニーズにも、引き続き、応えていかなければなりません。加えて、今回、国が打ち出した認可への移行支援策も、事実上、一部のタイプの認証保育所は対象外とされています。
そこでまず、認証保育所への都民の高い期待を踏まえ、都は今後も認証保育所の独自性を堅持し、その整備を進めていくべきと考えます。見解を求めます。
ひとえに認証保育所の課題は、国の支援がないことに起因する保育料の負担感にあります。その意味で、認証から認可への移行策は負担軽減の一つの選択肢ではありますが、問題は、認証保育所独自の積極的な保育サービスが、認可への移行と同時に提供されなくなってしまう恐れがある点にあります。
国は現在、認可保育所全体に対し、保育時間の延長などを促すための支援策を検討しておりますが、その内容が13時間保育の水準に達するかが危惧されています。
そこで都は、国に対し、認可への移行支援では、現在の認証保育所のサービス水準を維持する支援策を実施するよう求めるべきです。また、もし国の支援策が不十分な場合には、迅速に暫定的な都独自の取組みを講じるべきと考えます。併せて、見解を求めます。
今回、国は待機児童解消加速化プランにおいて、平成29年度末までに約40万人分の保育の受け皿を整備し、待機児童をゼロにする目標を掲げました。大変に素晴らしい内容ですが、それは同時に、今後、新たに大量の保育士が必要になることを意味しております。現状のままでは、全国で約7万4千人、東京だけでも約2万2千人もの保育士が不足する計算になります。しかも今後、認可への移行支援が打ち出されることによって、保育士を10割とする保育施設が増えていけば、保育士の不足はさらに深刻の度を増すことになります。その解決のためには、認証保育所保育士の一層の処遇改善など、多角的に対策を講じる必要があります。
そこで、都が今年度実施している3万人の保育士有資格者を対象とした、処遇や労働環境などの実態把握の現状と、それを踏まえた保育人材の確保策の強化ついて見解を求めます。
【高齢者対策】
次に、高齢者支援についてです。
東京は今後も他県からの人口流入が続くため、高齢化とは無縁と思われがちです。しかし、高度経済成長期の大量の都内移転者が一挙に高齢化していくため、都内でも平成22年からの15年間で、65歳以上人口が約62万人も増加するとの分析もあります。
そこで、都議会公明党のプロジェクトチームの調査・検討の成果を踏まえ、何点か質問します。
【医療を活用した健康増進】
まず、医療を活用した健康増進についてです。都民に対し、生活実態に即した医療的助言が早めに提供されていく取組みが広がれば、要介護状態や重症疾患の発症を防ぐだけでなく健康寿命の増進にもつながります。
しかし、こうした相談窓口は、地域包括支援センターが担う介護系と、在宅療養支援窓口で地区医師会などが担う医療系とに分かれております。別々の建物で別々の専門家によって提供されており、利用者には不便と言わざるを得ません。こうした点において、医療と介護の両面にわたって日常的にケアを展開する訪問看護ステーションの看護師は、健康に役立つ的確なアドバイスをきめ細かく提供することが可能な、身近で貴重な人材です。
都議会公明党が視察した新宿区戸山の「暮らしの保健室」では、保健師の資格を合わせ持つ経験豊かな看護師を中心、に多様な専門家や運営スタッフがボランティア的に支え合っていました。気兼ねなく相談を受け付けてもらえるという雰囲気作りに成功しており、幅広い健康相談に無料で応じています。優秀で意欲のある訪問看護師などを活用し、都民が気兼ねなく相談できる窓口機能を整えていけば、高齢者の健康な生活を支えていくことにつながります。今後、区市町村がこうした取組を推進していく場合には、都はこれを支援する新たな事業展開を検討すべきと考えます。見解を求めます。
また、在宅療養を担う訪問診療や看護の課題の一つは、バックベッドの確保、すなわち、必要な際には速やかに入院できるという保障がなかなか得られにくい点にあります。
わが党が視察した、長野県の佐久総合病院では、「予防は治療に勝る」との視点に立って、50年前から地域の全家庭を対象に訪問の診療・看護に取り組み、今も地域ケア課という訪問専門のセクションを設け、医師と看護師が、病状の急変時にも、いつでも手術や入院が可能な安心感のある取組みを展開しています。
一方、都では、在宅医が訪問看護ステーション等と連携しながら、チームとして24時間の診療体制を確保する取組みや、区市町村が地域の医療機関に病状急変時などに利用できる病床確保の取組みについて支援しています。
この点、東京都保健医療公社が運営する公社病院は、地域との連携を存在意義の一つとして誕生したものであり、民間病院に先立って、むしろ積極的に地域と連携し、バックベッドの確保などの貢献を果たすべきです。見解を求めます。
【都内での特養整備】
次に、特別養護老人ホームの整備について質問します。
都内の各自治体が把握する特養入所申込者数は、平成22年10月時点で約4万人となっています。その一方で、空き家を活用した高齢者支援の取組も未だ容易に進展しておりません。地価が高く、土地の確保が難しい都内での特養整備の最大の課題を解決するには、新たな手法を編み出していかなくてはなりません。
貴重な都内の土地の有効活用を図るためには、従来からの公有地活用に加えて、異なる種類の高齢者向け施設を同一の敷地内や建物内などに併せて建設する複合化が効果的です。
国内のある大都市圏の社会福祉法人は、駅前などの交通利便の良い土地を有効活用した中高層階の複合施設内に、特養や介護老健、デイサービスやショートステイ、小規模多機能、リハビリ病院や高齢者向け賃貸住宅などを組み合わせて展開しています。
こうした試みは、事務所機能の一本化などでコスト削減が進み、結果的に介護の費用負担も減らします。また、好立地であるため、利用者や家族が訪れやすいだけでなく、施設側も優秀な介護人材を獲得しやすいという利点もあります。さらには、同一の建物内の高齢者向け住宅に予め移り住むことにより、慣れた環境の中で施設に入所できます。また、複合施設内の各種の宿泊機能の活用によって、出張や家族旅行などに伴う介護ニーズにも対応できるため、仕事や生活と介護の両立、三立が図りやすいなどのメリットも数多く見受けられます。
都は、複数業種の高齢者施設の連携による機能強化や施設の共有化など、複合化の利点が都内でも生かされるよう、複合型施設の整備を行う区市町村や事業者に対する支援を行うべきと考えます。見解を求めます。
【他地域特養の活用】
用地の確保が困難という都市部の課題を踏まえ行政区域外エリアでの特別養護老人ホームの活用など、都民の選択肢の幅を広げる工夫も大切となります。
たとえば、杉並区では、静岡県南伊豆町にある杉並区の土地を活用して特別養護老人ホームの整備を検討しています。この動きは、国の検討会でも取り上げられ、高齢者本人の意思の尊重を前提としながらも、住民同士のつながりが深い自治体間の取り組みを対象に、規制緩和の方向性が示されました。都も本年9月、国に対し、区市町村が共同して特別養護老人ホームを整備する新たな手法を緊急提言しています。
住民同士のつながりが深い自治体間や、出身地であるふるさとの施設に入所する方法など、協力する自治体同士が、入所調整を互いの介護保険計画に明記し合うなどの新たな手法も活用し、特養整備を促進すべきと考えますが、都の見解を求めます。
【介護と仕事の両立支援】
高齢者支援の最後に、介護と仕事の両立について質問します。
総務省が今年7月に発表した「就業構造基本調査」によると、仕事を持つ6,442万人の4・5%にあたる291万人が、介護をしながら働いています。平成12年に介護保険法が施行された時点での調査では、家族介護者は圧倒的に女性が多く、8割以上を占めており、男性介護者は約1割に過ぎませんでした。
しかし、今回の発表では、男性の家族介護者が全体の3割を超え、200万人に達しています。いわゆる介護退職も10万人を超え、さらに増加傾向にあり、経営にも影響を与えかねません。
今回、都議会公明党が視察した企業では、先駆的に介護との両立に取り組み、人事室内にワークライフバランス課を設置。社内調査で社員の70%が「今後介護に携わる可能性がある」と回答したことを受け、介護と仕事の両立セミナーを開催するなどの取り組みを展開しています。社内調査では、昇進への影響などを恐れて介護を隠す、いわゆる「隠れ介護者」の存在も明らかになり、人事担当者によれば、今後は、人事規定の改善や相談体制の構築に取り組むとのことでありました。
都は、こうした都内企業の情報を積極的に発信し、企業同士で共有し合える仕組みを構築すべきと考えます。所見を求めます。
また、このような民間企業へのサポートに合わせ、都は従業員が少ない企業の現場で、経営者や社員が介護と仕事の両立のために何を必要としているのか実態を調べ、そのニーズに応えた施策作りに取組むべきです。介護と仕事の両立に真に役立つ政策展開に向けた調査をしっかりと行うべきと考えますが、所見を求めます。
さらに、東京都が介護と仕事の両立に向け、中長期的な視点から計画的に取組んでいくことも重要です。
都がこのたび論点整理を公表した「新たな長期ビジョン」では、両立支援の内容は育児と仕事の両立に留まっています。介護と仕事の両立支援の視点も入れるべきと、強く要望しておきます。
【事業評価と課税自主権】
急速に進行する少子高齢化、更には人口減少社会が今後本格化していくことに加え、先進国の中でも最悪といわれている債務残高など、わが国の国家財政は依然として厳しい状況下にあります。
持続可能な社会保障制度の構築と財政健全化を同時に実現するために、国は社会保障と税の一体改革により、平成24年8月に税制抜本改革法を成立させた結果、消費税の増税が決定しました。国民に新たなる負担を求めるのであれば、前民主党政権が実施して失敗した場当たり的な「事業仕分け」ではなく、行政の無駄を徹底的に排除し続けていく仕組みづくりが重要です。
この点、都は全国に先駆けて、全ての会計に、わが党が提唱する複式簿記・発生主義の新公会計制度を導入するとともに、これを活用しながら、財務局内に事業評価組織を創設し、事業評価を着実にすすめた結果、財政再建に成功しました。
そこで、これまでの事業評価による取組の成果と26年度予算編成にむけた更なる取組について見解を求めます。
国は、平成20年度税制改正において、地域間の財政力格差の縮小の観点から、法人事業税の約半分を、消費税を含む税体系の抜本改革が行われるまでの暫定措置として「地方法人特別税」として分離し、国税化しました。
平成24年8月に成立した「税制抜本改革法」において、地方消費税率の引き上げ時期を目途に「抜本的に見直しを行う」ことが明記されています。したがって今回、消費税率の引き上げに合わせて、法律どおりに撤廃し、地方税として早急に復元すべきです。しかし、国は輪をかけて今度は基礎的自治体に影響が大きい「法人住民税」を一部国税化しようとしています。
このことは地方自治体の課税自主権を侵害するだけではなく、地方分権に真っ向から反するものであります。都は毅然たる対応をすべきであることを強く求めておきます。
【契約不調問題】
次に、契約不調問題について質問します。
景気の回復に応じて、都内の工事件数が増加している一方で、技術者の不足や資材単価の上昇から、都が発注する工事入札の中止・不調が相次いでおります。これは、都が発注工事ごとに主任技術者の専任を厳格に求めていることが原因の一つとなっております。
国土交通省は、今年2月、東日本大震災からの復興の円滑化を図るため、被災地3県に限っていた主任技術者の専任配置義務の緩和を被災地以外の地域にも拡大する通達を出しております。
都は、こうした国の動向も受け、不調が増加しつつある現在の入札状況や中小企業からの意見も踏まえ、主任技術者の専任配置義務の緩和をすべきと考えます。所見を求めます。
【中小企業支援】
次に、中小企業の支援について質問します。
昨年12月、多くの国民の皆様の支持を頂き、公明党と自民党の連立政権が誕生しました。そのスピード感ある政策の展開により、日本の経済は長い低迷から抜け出し前進を始めています。その上で、今後も首都東京が国内経済の牽引役を果たしていくためには、都内経済を支えている中小企業が、力を付け発展していくことが何よりも重要であることは言うまでもありません。そのためには、海外市場などに販路を開拓していく努力も必要ですが、同時に、効果の高い設備投資をしっかりと行い、優れた技術やより良い製品を生み出していくことが重要です。
しかし、リーマンショック以降の厳しい経済環境に苦しんできた経営者の方々からは、「先行きの不安がぬぐい切れない」「設備投資はしばらく見合わせたい」という慎重な声もなお聞かれます。日夜地道に努力している中小企業のこうした声に耳を傾け、設備経費などの負担を軽減する支援策を講じるべきと考えますが、見解を求めます。
最後に、中小企業の年末等の資金繰り支援について質問します。
年末を控え、事業者の皆さんは資金繰りに奔走しています。景気が回復基調にあるとはいえ、まだまだ多くの中小企業が苦労をされている状況をしっかりと受け止め、年末に向けて万全の対策を講じるべきです。
わが党としても、先般、「厳しい経済環境と都民の雇用不安への対応を求める緊急申し入れ」を行い、早急な対応を求めたところです。 さらに、わが党がかねてから主張しているとおり、動産を担保として活用した融資制度の導入など、経営基盤の弱い零細事業者の資金調達の選択肢を広げる取組も、積極的に進めるべきです。併せて見解を求め、都議会公明党の代表質問を終わります。